ゴロゴロゴロッ_____
「えっ、雷…?」
「うわ、めっちゃ降ってきたで!今日は晴れるって言うてたのに…」
もしかしたら浦田様濡れてるかもな…
よし、バスタオル準備しとこう。
ピンポーンッ____
「あ、もういらっしゃった?真司郎ちょっと出といて!」
急いでバスタオルを取って出迎えに行く。
そこにはスーツを着た長身の男性が立っていた。
「浦田です。急に押しかけてしまい申し訳ありません」
「いえ、急な雨でしたが…」
そう言いながら、彼が全く濡れていないことに気付く。
「あ、雨具は携行しているので…お心遣いありがとうございます」
綺麗に微笑む浦田様。
…隙がなくて、頭が切れそうな感じ。
一体なんの依頼だろう?
応接室にお通しして、
“なんか心配だから俺も聞く!”と言って引かない真司郎と共に、依頼主の言葉を待つ。
「宇野実彩子さん」
「は、はい…」
「私の依頼は…簡単に申しますと、貴女にある男を警護して頂きたいのです」
「警護…?」
「ちょっと待ってや。うちはボディーガードじゃなくて探偵やねんけど?」
「真司郎!」
確かに私だってびっくりしてるけど、お客様に向かってなんて言葉遣い…
「浦田様、申し訳ございません。
ですが、警護というのは…うちでは少し無理があるかと…」
「無理は承知の上です。もちろん、それなりの報酬はご用意してます」
「いやいや。お金の話やなくて、職業がちゃうって言うてるんです」
「一千万」
えっ…?
「一千万で如何でしょうか」
その額に、さっきまで掴みかかりそうな勢いだった真司郎がゴクリと息を呑むのが聞こえた。
「貴女方にとっても、悪くはない話だと思うのですが…」
…うちは決して裕福とは言えない。
真司郎は成績が優秀だから、返済不要の奨学金を頂いて大学に通っている。
でも正直に言うと、家賃と生活費だけでキツキツの状態。
ボディーガードをして一千万もらえるなんて、すごく美味しい話だけど…
この男は一体、何を考えているの?