どうしよう、
ここはファンのふりをするべき?
でも、そしたら後の調査がしにくくなるし…
「俺ん家、来る?」
「…えっ?」
日高光啓という人は、彼女も入れない仕事部屋に、初対面のストーカーを招くのですか?
…おそらく、何か企んでいるのだろう。
この人はとても、賢い人だ。
身体能力も只者じゃない。
でも…私が上手く動けば、これはチャンスにもなり得る。
「俺のこと、知りたいんでしょ?」
はい、浮気してるかどうかが知りたいです。
…なんて言えないから、
「…はい、教えて頂きたいです」
そう言うしか、ないじゃない。
ニヤリと笑うターゲットは、元来た道を歩いて行く。
やっぱり私、撒かれてたのね…
落ち込むのは帰ってからにしよう。
ICレコーダーの位置を確認して、気を引き締める。
「そんな後ろじゃなくて隣、歩いてよ」
あ…いけない。
これは尾行じゃないんだった。
気付かれないように短く溜息をついて、早足で彼の隣に立った。