身体が重くて、頭もズキズキと痛い。

ゆっくりと重い瞼を開けると、真っ白な天井が目に入った。





「…実彩子ちゃん、実彩子ちゃん?」


 


視界の端に、心配そうに瞳を揺らす真司郎を捉える。

長くて、懐かしい夢を見ていた気がした。





「実彩子ちゃん、水でも飲む?
入れてこっか?」


「…浦田様は?」



「…もう、帰りはったよ」



「そう…失礼なことしちゃったな」



「…ごめん、実彩子ちゃん、俺…っ」




「真司郎は…知ってたんだね?
隆弘が…隆弘が、生きてたってこと…」





項垂れる真司郎を見て、疑問が確信に変わる。

飲み込み難い現実が、私を襲う。
 



5年前…



あの事件で死んだと聞かされていた、

最初で最後の…私の、最愛の人。





「…去年かな、秀太から急に連絡あって。

秀太の勤めてるゲーム会社、アメリカでもCM流してるらしくてな。

ほんで、その…」


 
「そのCMに…隆弘が、出てたの?」
 

 
「…歌っててん」




私が知っているべきだった知らない真実が、ぽつり、ぽつりと真司郎の口から紡がれる。




俺やって、最初は信じてなかったんやけど…秀太が色々調べとって。

あの事件の後も、にっしーが生きとった、ってこと…



……っ!
 
実彩子ちゃん…」




行ったり来たりしていた真司郎の動きが急に止まる。

突然、引き寄せられて息が止まるほど抱き締められた。





「ごめん、ごめんな、実彩子ちゃん!こんな風に知るくらいやったら、俺がちゃんと言っとけば…!」



「何、どしたの急に…?」



「だって…


泣いてる…」



「えっ…?」




そう言われて初めて、自分の頬に温かい液体が伝っているのを知った。





「…あれ、本当だ、何でだろね?
嬉しいのにね?生きてくれてて…嬉しいの、本当に…良かった…





けど…







けど、私は…
隆弘が、一番辛いときに隣にいれなかった。隆弘を…支えることが出来なかった。


側に居れなかったんだよ…」






「ちゃうねん、ちゃうねん実彩子ちゃん…ごめんな、俺が…」







あの時に枯れたはずの涙が、再び流れ落ちる。

私は、真司郎の胸の中で5年ぶりに泣き崩れた。