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働きアリのブログ

働いても働いても遊べません

非常に個人的な好みで申し訳ないのだが、「女性の高い声」というのが苦手だ。

思春期の頃、インプットされたお○カキャラ=「高い声」は苦手意識を生む、充分かつ重要な要素であった。


小学校の高学年の頃から、私はつとめて声を抑えて、低い声で話すこととした。
もちろん、ほかの女性の声が高いからといって、それを否定することはないが、ただ、苦手意識からか、アニ声を聞くと頭痛がしてくる性質である。



夕方の地下鉄。
まだ6時30分頃だった。
混雑して身動きできない車両でその声はした。


ぅぅーーん。でぇもぉ


思いっきりのアニ声だった。脳天から突き抜けて出しているんじゃないかと思えた。


今、乗り込んできたのだ。そのアニ声の主は。


「あたしぃ色々、考えたんだけどぉ」

悩んでいるんだろうが、声はバカにしたような頓狂なハイトーン。


ごめん。おばさん、そういう声、昔から苦手なんだ。頭、痛くなりそうだ。



でも、パックド・オイルサーディン。いわしの油漬け缶とはよく言ったものだ。
ぎゅうぎゅうに詰まった車両にまた、さらに圧力がかかる。


あ。やっと相手の声も聞こえる。
「もったいないけどなー」相手も女子高校生か?ま。普通だな。


「我が家はさー。公立じゃないと無理っぽいでござる。ほら。底辺だからー。キャハハ
笑い声なんかもろ、アニキャラだ。
TV東京とかMXTVで夜中やっているドタバタアニメのうるさいばかりのキャラクター。


「私が代わっていいなら、代わりたいくらいさー」
「譲れるなら、譲るよ。ハイ!プレゼント!フォーユー!ご主人様!」
ますます、ハイトーン。ハイテンション。


参ったなー。満員電車ではマナーモードで話して欲しい。



「で、推薦は2つとも蹴ったの?」
相方は場をわきまえて押さえ目に話す。


「うんにょ。あたしぃ違うのやりたいんだにゃぁーー。
ああ。いらいらする。”ゃぁーーー”がだんだん高くなるのがわかる。


「先生、怒ってなかった?」


「他に行きたい人がいらっしゃいますですよ?」


先生も気の毒に。どこだか知らないが、こんなの推薦するなんて。面接で蹴られるだろう。


「うーん、さすがにWとKだからなー



え?
え?



「工学部だったですよぉ。あたしは、遺伝子とかやりたいですぅ。ミャハ!


ミャハ!って。
ミャハ!!じゃないだろう?

アニ声って、お○カキャラだと思っていたが、思いっきり偏差値の高い話だ。


「それにぃ。お金持ちの人の学校行ったら、ご主人様いっぱいで。困ってしまいますぅ。苦学生なんて似合いませんもん」



「あんたは、メイドキャラだもんねー」


「んん。頑張って、お勉強しますですぅ。ニャン!あはは」


その時、人垣の向こうから、手が伸びた。某国立系女子大学付属の制服のそでだ。
その手がニャン!!と手招きする格好に動いた。


アニ声の主がニャン!ニャン!と飛び跳ねている。


あー。あそこの学生か。推薦がWとKね。有りですね。

つくづく迷惑な奴だなー。


それにしても。ニャン!か。
15分ほどしてやっと混雑とアニ声から開放された。
勤電車は耳にも痛かった。



・・・・・帰宅してから、本物のニャンに『ご飯、ちょうだいニャー!』とやられたが、もっと・・こう・・。
なんか、かわいくなかったなー。
なんでだろう?

連休の中、実家に行くため都内に出た。


さすがに休日だけあって、乗込んだ地下鉄は思いの他空いていた。
いくつかの空席の中、ヨーロッパ系の男性とオノ・ヨーコみたいな日本人女性が子ども連れで広めに座席を利用して座っていた。

子どもはルーベンスの絵の天使のような、金髪碧眼の男の子だった。


向かいの席に大学生だろうか?若いカップルが乗込んできた。

姉ちゃんは子どもを見るなり声を上げた。
「うわぁ。かわいい!」

母親が軽く頭を下げる。

「ね。かわいいよね?」しきりに姉ちゃんは彼氏に同意を求める。

彼氏は関心がないのか、曖昧な返事しかしない。

「いゃぁ、本当にかわいい。いいなー。うん」彼女の視点は白い天使君に注がれっぱなし。



「ねー。ねー。マー君」姉ちゃんは甘える仕草で彼氏を引寄せる。

「あ?」

「あーんな子が欲しいよねー?」

「あ?」


あたし、あーんな子、生みたいなー。」


マー君も固まってたけど、その車両の全員が固まったと思うよ。
ちょっとの間、何聞いたか、耳を疑った。


オノ・ヨーコさんは、胸元はだけた旦那に耳打ちをして子どもと一緒に、そそくさと隣の車両に移動してしまった。


そして、次の駅に着いたときにやっと、マー君が口を開いた。

「お前には、無理なんじゃない?」


彼女は、えー?どうして?何で?などと不満を連ねていた。

私もそう思うよ。マー君、お気の毒。


っていうか、それを彼氏に言うか?


その子は幼稚園で言えば年中さんくらいだろうか。
4歳。よくて5歳。少なくとも小学校へ通っているような子には見えなかった。
くりくりの坊主頭に、「J」と描かれたサッカーユニホームを模したような青いTシャツ。
青い短パンに青い運動靴。
手ぶら。


夜9時だというのに、急行電車に独りで乗り込んできた。
長い連休の始まる前、金曜の夜。


発射間際の混雑した電車にドア際から飛び込んできた。

いつものように思わず押し返しそうになるおっさんが、「をっ」と声を上げた。


ドア際の手すりをつかむので、そばに居た私も彼のために空間を空けた。

すぐに親も乗り込んでくるのだろうと思ったが、発車のチャイムが鳴っても連れが来る様子もなく、また、そうであっても彼の眼差しは揺るぎなかった。


閉まるドアの向こうをキッと見つめていた。
誰かが居て、降りる駅で受け取るのか?


私はそう思って再び彼の親を見探したが、特に誰という人はホームに居なかった。

大丈夫か?各駅停車と間違えて乗り込んでいないか?


これは遠くまで行く電車だが、乗り間違えではないか?


こんな幼児がたった一人で乗り込むには不釣合いな電車だった。

電車が始発駅から動くとすぐ、大きく揺れる箇所がある。


ポイントの通過だが、急行はことさら揺れが大きい。
くりくり坊主は手すりにつかまりながらポールダンサーのように右に左に身体を揺れに任せる。

ぶつかられて、後ろを見ないで姉さんが
「ちょっとぉ」と言いながら振り返る。


彼は身をかわすでもなく、お構いなく揺れに身を任せる。
こんな子を相手に怒るのも大人気ないと考えたのか、姉さんは彼を睨むだけにして奥に入り込んでいった。


もし、たった一人でこんなに混んだ電車にこんな時間に乗り込んできたのであれば、彼の心にはきっと並々ならぬ決心があったに違いない。

こんな揺れに動じてどうする?みたいな心意気があるに違いない。

「母をたずねて三千里」だ。

がんばれ!マルコ!www


やがて、一つ目の停車駅。
降りるのだろうと思っていたのだが、彼は動じない。


そして2つ目の駅。
車両からどっと降りる客にもめげずにドア際から彼は一歩も動かない。
酔客も含めて、ドア際で邪魔になっている彼を見とめて、「あっ」という顔をして降りていく。


3つ目の駅になって、ホームには、駅務員が立っていた。
誰かが知らせたのだろう。


駅員は
「僕、どこで降りるんですか?」と話かけた。
彼は必死に手すりをつかんで無言である。マルコの決心は固いのだ。


「降りる駅を言えますか?」


「・・・・」


「お父さん、お母さんはどこ?」


見かねて車内のオジサンが答える。
「始発駅から、それらしき人が居ないんですよ」



駅員とオジサンが顔を見合わせる。


駅員が長く電車を停車していられないと判断したのか、ホームを見回して、
「じゃぁ、この駅で降りようか。親御さんも呼ばないとね」と言って彼の手をひいた。


「いゃぁ!」彼はますます手すりを握り締めた。


車内から声があがる。


「おい、早くしてくれよ」
「いつまでかかるんだよ?」
うん。おばさんも早くして欲しいと思ってるよ。


「困ったなぁ、僕ぅ」駅員が彼に話しかけると、彼が思いの他、大きな声をあげた。
「僕じゃないもん!リュウセイだもん!」


?リュウセイ君って言うんだー。これって流行の名前なんだね。きっと。


変なところで感心していたら、混雑した車内の奥から低い女性の声があがった。


「こっち来い!」


え?


「はぁい!」

リュウセイ君は、さっさか奥に入っていって、座っている女性の前に立った。
周りはあまりの事に呆然とするばかり。


どうやら、そこにおわします、おヤンな感じのお姉さんがお母さん?らしい。


子供が奥に引っ込んでしまったので、駅員は「あ、じゃぁ」と乗客に一礼して走っていってしまった。


「お待たせしました。電車、お客様ご案内のため5分ほど遅れての発車となります」

お客様ご案内って言うのか。あれを。


座った母ちゃんは、リュウセイ君の手を引っ張って、「手間かかるな」と一声言い放ち、よく似た目で睨んでいた。


と。
5分も経たぬうちにその手は携帯電話をしっかり握り、目先は画面を見るのに必死になっていった。

なんだかなー。


手間かかる」のは、あんたじゃないか??と母ちゃんに問いたい。

実際、みんなは彼のことを心配したんだよ?



リュウセイ君。
どんな字を書くか知らないが、真っ直ぐ育ってくれよ。

オバサンは遠くから応援するよ。


それから、電車のアナウンスは盛んに「遅延が生じた」「お客様のご案内のため」を連呼した。


私が降りる駅では、5分だった遅延は15分に拡大していた。


その後、親子がどの駅で降りたか知らない。
知る気もなかったけど。

ほんと。