ここは、サーキット南天部。

薄汚れた空が広がり、黄金の太陽がその汚れを埋め合わせる直下。

高速で走ろうとするマシンは、路面との摩擦で火花を散らし、黄金陽がその熱さを包み込む。

火が燃え盛るほど、その尖った先端を、黄金は細やかに映し出す。

盛る火の鋭さは、黄金の微細さ。

天から降り注ぐ有り余るそれは、刺々しさを装飾してあまりある。

火は包まれれば包まれるほど、表面の黄金幕を突き抜け、新たな黄金と出会う。

黄金の豊富さは、火の激しさを包容するにたり、やぶられたことすらも絵にしてしまう。

行き渡る黄金の中で及ぶ、赤き火。

常に最高速で迸り続け、コースを灯していく。

漆黒のアスファルトが、焦げる時、見えるのは熱い模様。

この南天部でしか見ることのできない景色。

それは黄金をまとった、赤の華々しさ。

一際、黒い背景の上で、それが舞い上る。

周囲の芝生もマーシャルたちも、そっちのけ。

その瞬間は、黄金火が駆け巡る。

高速のサーキットの目まぐるしさを、上下左右に。

マシンが前に進む仲、抑えきれないエネルギーを、散らしているのだ。

その高まりは浮沈し、いずれ落ちるものなれど、ついつい瞳の端に。

それどころか、端から一挙に、瞳の芯までも到達してくる。

速く、荒々しく。

荒削りな炎は、抑えようがなく。

パワーを調整するよりも、乱れて。

焦点を絞るよりは、広がって。

瞳の広範囲を、席巻していく。

赤さでもって、塗装してくる黄金さえ、赤らめてしまうほど。

黄金にさえあらぬ色彩を浮かべさせ、ブレーキもヒヤヒヤにデッドヒートを。

持て余すエネルギーが、今ここに。

抑えられていた熱が、ありったけに。

まだまだ先があると言うのに、すでに惜しみない。

これで持つのか?

そんな観客の問に応えることもなく、目の前の姿を儚くしていく。

燃え盛れば燃え盛るほど、それは顕著に。

いかに、黄金がたっぷりと行き渡ろうと、火はその所作を止めない。

火は火花である限り、まくし立てていく。

昇っていく。

黄金の空間が暖かければ暖かいほど、やわらかければやわらかいほど。

朗らかな空間を焼いては、焼け跡残して。

それは、まばたきをしていれば、過ぎていく模様。

されど、瞼の裏に焼き付く、色と温度。

激しい寸暇の後に、目を開いた語は、空に返り。

染まり、熱くなった瞼の裏を、感じざる得ない。

一瞬、一瞬が熱い挑み。

 

南天直下では、風すらも、それを煽る。

北からの風は、別の方角。

南天の方角は、熱風が吹く。

それっもマシンが起こした風か、天然の風か、見分けも定かではない

マシンから、天然の風が入り混じりっている、と言えばいいのか。

それほど、いくつもの流れが注がれた、ストリームが感じられる。

熱風たちは、行き交う。

マシンが近づけば近づくほど、観客席に。

元々の方向を、一挙に。

つむじを巻いて。

天然の風と、マシンの風とで、入り混じって。

結局は、ライナー性の合成風を浴びせてくる。

それだけでも、熱帯。

それだけで、熱帯昼。

真昼に吹きすさび合う、熱き風たちは、南天の高まりを煽っていく。

風上は天上、風上はマシン。

環境とテクノロジー、それらが巻き起こす激熱風。

風下ではうちわで煽ることも、汗の元。

動かした手首が、燃えるよう。

体中の汗腺細胞に熱が感染し、吹き出す飛沫。

あまりの勢いに、飛び散るほど。

全身の毛穴から、細やかに。

半径数ミクロン単位で展開される、微細な芸が、熱風で煽られる。

燃え上がるように、上り。

手を上げるよりも、速く。

気がつけば、蒸発している。

微細な熱の欠片として、熱風の一成分と化して。

追いつけない速度で、天上へ舞い上がっていく。

昇天火花がそこに混じれば、大しけもよう。

煮沸された水滴たちが、さらに灼かれて、悶える。

観客席いっぱいに。

ここ南天スタンドは陽が注ぎ、火が荒れ、風も煽り、蒸気が燃え上がる渦中。

ふんだんに注がれる陽のなかで、迸りが脚光を浴びている。

大気中に張り巡らされている蒸気の燃焼が、光輝いて見えるほど。

黒くもなく、赤くもなく、白く。

あまりの温度に、恒星同様の輝きを発してさえ。

風は、そこにさらに、熱を送り届け。

火花は風に乗って、さらに攻めかかり。

たまらない蒸気たちは、昇天を繰り返す。

観客の叫びが、そこに効果音を与える。

諸手を上げて、叫ばれる音が、一面の迸り模様。

濃密に、厚かましいほど。

辺りを埋め尽くし、空へ昇っていく。

 

マシンが、マシンが来る。

それだけでうなる、爆音。

エンジン音と、どちらが大きいか。

生きたリズム同士がぶつかり合い、しのぎを削りあう。

一帯を埋め尽くす効果音同士が、摩擦を起こし合い、これまたプスプスと。

摩擦音を起こしては、効果音を付け足す。

風の音が混じって、ノイズを混じらせて。

風速で、効果音を曲げさせてさえ、展開される効果音。

さながらの、ディストーション音。

ギターでも、ベースでも奏でることのできない、天然と人口のコラボレーションサウンド。

大音量には、つまみいらず。

マシンが来れば、自動的に、騒ぎ出す始末。

放たれた観客席では抑えることなどあまつさえ、広がるのみ。

空間を埋め尽くすほど。

爆音が、唸る。

エンジンが猛れば猛るほど、風が荒れれば荒れるほど、人々も反応するから。

瞬時に音圧の歪みが、頂点へ。

エンジン、風、人、サーキットを渦巻く音源たちがぶち上げるコンサート。

火花が、黄金陽が、ライトショーを醸し出し、底から温度を上げていく。

赤熱化する黄金が、著しい。

突発的な高熱で、二つの華々しさが入り乱れて。

もう、黄金は形容するよりも、灼けて。

焦がれた暁には、ディストーションのアンサンブル。

サーキットを構成する、楽器たちのめいめい加熱しまくて、ぶち上げるディストーション。

熱々模様の中で、それらが上がり、ときに蛇行し、空間をめいいっぱい泳いで、アスファルトから観客席を突き抜けて。

この、サーキット南天部という、激昂の効果音を作り出す。

諸手に注がれるは黄金ではなく、金色の赤。

その演出は、サーキットのオーケストラ。

めいめいの熱気、それがぶつかり合う摩擦音が、テンションを炙る。

薄汚れた空が、バックでそれを受け止めて。

年季の入った様に象徴される、奥行きでもって、いくらでも。

火花はそこで黄金に咲き乱れ、空はどこまでも背景として。

爆音すら挑むことのできない重厚さの中で、繚乱される様を湛える。

空では音速が流れ続け、咲き昇るさまは薄汚れたガスにより、コントラストを与えられて。

すでに上り詰める様で、彼らを覆い続ける。

あまりの深さで、最果てにある球面上の境界線すら、気にさせない。

遥かなる天上で、清濁合わせ呑みながら、丸めている。

直線的な火花、その鋭角的なそぶりで様々な箇所と衝突しがちであるが、汚れに慣れた底深い度量の中では、どこともぶつからない。

爆音も、ゴリゴリな様をなだらかにしていく。

視覚的にも、聴覚的にも、いなされた高みがそこに見える。

生のものに絶妙に不純物がブレンドされた高み模様。

遥かなる不純さが作り出す、演出。

手を伸ばしてもなかなか届きそうにない、極みが、そこには、ありのままに。

サーキットの迸りとは、天と地の差。

超越された色彩すら、見えてならない。

ともすれば、地上に降り注ぐ陽の優美さ、陽すら赤くしてしまう激熱、その様を煽る風へと、目が行ってしまいそうだが。

ともすれば、観客の絶叫、エンジンの爆音、風音との摩擦により高まるディストーションに演出されているように見てしまいそうだが。

バックには、南天の空が悠然と控えており、清濁併せ呑む度量で地上の迸りを演出し続けている。

その後に、汚点を昇ってくる蒸気の灰でもって、偽装する様が憎いほど。

南天直下直上候。

 

 

 

ピットウォールに注ぐ太陽。

赤きテント、赤きコンピュータ類、赤きチームウェア、それらが黄金色をまだらに写す。

高温直下で見える陽炎、ゆれる景色。めいめいの赤さが、赤と黄金の間で揺れ動く。

ホームストレ―トを前にして、めいめいのディスプレイにかじりつくの表情が、そこで揺れ動く様が見て取れる。

片方の口角を上げる柔和な表情、量の口角を上げて、苦虫を奥歯に噛みしめる姿が交錯する。

各々の赤さの間から、覗ける顔色は様々。

黄金のスポットライトを受けて、多少表情を黄色気味にしている。

赤きチームウェアの間に紺碧と、緑白のアンダーを覗かせながら。

一人だけ異色のアンダーを帯び、ディスプレイを見ている少女もいるが。

とりどりの表情の中で、一際白く。

黄金が染める南天直下においても、一際白く。

染まらない色彩を顔色に表し、展開に見入っている。

赤いチームウェアとその白さが好対照に見える。

陽が照らせば、ともに光を得て、紅白のコントラストが浮かび上がっている。

新調された赤き襟元から覗ける、きめ細やかな素肌が香る。

一際白い。

日にも染まらぬ色をそのままに、一輪の茎を首元から伸ばして。

辺りの蒸気が灼けて、蒸発していくときの白さが、茎の肌合いと同調する。

醸し出されている白い雰囲気は、サーキットのものか、少女の肌色からくるものか。

いずれにせよ、色が香る。

渋い顔をしている者にすら、柔和なものを差し込ませてしまうほど。

渋い顔のシワの一つ一つに、香りを差し込ませて。

自然に、次第次第に、シワの深みが薄まっていく。

どことなく通ってくる、白さにほだされては。

ディスプレイで散る火花が見える度に、ほぞを噛む動作をゆるめていく。

辺りの景色に擦れきっていない、白さにより。

ドライバーの滑らかでないコーナリングにも、深刻なシワは白さのなかで、和らげて。

なかには、柔和な表情で受け取る者も、チラホラ。

中心で香る、純な色香のせいで。

いや、おかげで。

とくに言い合うこともなく、ディスプレイを見ている。

少女を、中心に据えて。

辺りをそばだてる白き光子が、どことなく漂う中で、基調を中心の純色に合わせていく。

 

そこからは、相変わらずの白茎。

みずみずしさとさえ、含ませて、しなやかに、おとがいにまで、添えられていく一筋。

それが、やわらかく、すっきりしたおとがいの先に、スラリと繋がっていって。

赤い胸元から伸びてくる、色香の最前線を、そこに伝えていく。

果肉の研ぎ澄まされよう、そのままに。

すっきりした顎のラインをもって、おとがいに届けられる色香の数々。

涼やかなおとがいにて、そよぐそれらのニュアンス。

風がそよげば、涼しさがさらに。

南天直下の熱風が、爽やかに感じられるほど。

たとえ、風が吹きすさんでいても、爽快さが余計に届くばかり。

熱さを増す中でも、尚更、皆の表情は緩んで。

ディスプレイに見入っている、少女のおとがいが、艶めかしい。

ディスプレイに映るステアリングが乱れ、火花散るときでも、その艶やかさの方が先で、こちらに飛び火することもなく。

ほぐれた表情で、それを眺めることができる。

 

皆が一体の表情を浮かべている中で、おとがいの先を刻みに動かしている少女。

ディスプレイの左の枠に、ドライバーのオンボード映像を見ながら、右枠の白いディスプレイに目を映しながら、どちらかというと、右枠のディスプレイに寄りながら、顔を二転三転させている。

目端に、オンボード映像を見据えながら、碧字と赤字で図形が表示されている、右枠のホワイトボード。

その中央やや上にはマシンのポリゴンが乗っており、それを取り囲む風の流れ、陽射しの向き等が記載されている。

左の画像でステリングが揺れれば、風も揺れ、陽射しを表すはずのラインも、なぜか一緒に揺れている。

乱れた風は乱流を起こし、マシンの周囲の流線を荒れさせており、陽射しと言うか、その反射光が乱れている。

風の乱流とマシンの間にはマシンを取り囲む碧き流線があり、反射光は表面上、マシンのボディから赤く発せられている。

乱流が増すとマシンを取り囲む流線が強くなり、ボディから放射される赤き光も多くなっている。

その間、少女は画面をみながら、右手を動かしている。

手元の5つのマボロバが白く瞬く。

サラリとした白さが醸し出されるほど、画面上の向きや数字が入れ替わる。

マシンの前後左右、上下、くまなく方向が入れ替わり、数字も入れ替わり。

5つの舞が、興じられることで、変容していく目の前の景色。

どことなく、5つの踊りに合わせて、ディスプレイが白く発光する。

南天直下で黄金の光子が立ち込める中、そまらぬ色が眩しい。

そまらぬどころか、小さなそれは、こちらも照らしてしまうよう。

そのためか、皆々の目の輝きにも艶めいた白さが。

少女の手の動きに合わせて、増す瞳の光。

ふんだんに注がれる黄金をも、軽快なまぼろばで紛らわして。

辺りの景色を、お色直ししていく。

軽妙に展開される5つの色香に、ディスプレイも一緒に。

皆々が見つめる中、様相を変えていく。

 

右枠のディスプレイにはシンプルに、「予想」と。

一際の輝きを含んだ色彩で。

眩しすぎて、誰もが目を輝かしてしまうほど。

「おーっ」と、声を上げる者まで。

5つの軽やかで、即妙な舞台が幕を上げて。

そこに浮かび上がるものに、舞を負えた少女ですら、瞳を輝かせて。

横に長い、つぶらな瞳に湛えられた光が、白く。

茶色い虹彩を照らし出し、数多の光彩を瞳の筋に、きめ細やかに反射させて。

いつつもの微細な光子に、瞳を塗れさせて、有り余るほど。

細い瞳を珍しく、大きくして。

体積の増した瞳には余計に多くの光が拡大表示されて。

光が広がる分、余計に隅々まで光子が行き渡って。

やはり、有り余る程の細やかな光が、どこかしこ。

瞳から溢れて、止まらない。

こぼれても、いざ知らず。

諸手まで、上げて。

「やったー」と。

白く細い声が、辺りに舞う。

それが皆の鼓膜を明るくし、表情にも。

緑白のアンダーウェアを着る者たちは、組体操までしている。

紺碧のアンダーウェアの者は、沈黙を維持したままだけれど、抱える淡さを光らせて。

めいめいが、少女の声色や表情に、涼やかになる余り。

左のディスプレイでは果敢に舵取りを繰り返し、速攻で迫りくる障害を避けるオンボード。映像。

右のディスプレイには、白き発光体の数々。

白い画面なのに、その文字の数だけ、印象的に映っているのは、なぜだろう。

終いには、黄金と赤で満たされている左のディスプレイにも、その光を添えている模様。

明るいビジョンが、珠玉のそれを彩り。

色移り、甚だしく。

白粉で満たされていく、左側の映像。

そこは、幾多の紆余曲折を経て、南天を抜ける一本道。

坂道を駆け上がり、行き着くサーキットの頂上。

遥かなる映像が、眩しい。