遺言は遺言者の死亡時から効力を生じるため(民法985条①)、遺産分割協議をして相続税の申告書を提出した後に遺言書が発見されたときは、遺産分割を無効として遺言の内容に従って分配をし直すことが可能です。ただし、関係者全員の合意があれば遺産分割を有効とすることや、遺産の内容を考慮した形で遺産分割をやり直すこともできると思われるため、遺言の内容に合っていなくてはならないとは言い切れません。ここでは、遺言の内容に従って遺産を分配し直したものとして説明します。税務上、遺言の内容に従うことにより関係者が負担する相続税が変更した際には下記の手続きをおこないます。
1.遺産分割では何も取得しなかったが、遺言により財産を取得して相続税を負担することがわかった人
→期限後申告書を提出し、相続税を納付します
2.遺産分割より多く財産を得て、当初の申告で納付した相続税が少ないことがわかった人
→修正申告書を提出し、差額の相続税を納付します
3.遺産分割より少なく財産を得て、当初の申告で納付した相続税が多いことがわかった人
→更正の請求をし、相続税の還付を受けます
1は決定を受けるまで、2は更正を受けるまでおこなうことが可能ですが、3は遺言書を発見してから4ヶ月以内にのみおこなうことができます(相法32条)。気を付けなければならないのは1~3の関係であり、3で相続税が少なくなる人が更正の請求をした場合、同時に1または2により相続税を納付する人が現れます。したがって、3の更正の請求をする人がいる際には、1または2に当てはまる人は期限後申告または修正申告をしなければなりません。また、全体の相続税が変わらないため関係者の間で負担する相続税を移動して手続きを終了することも可能です。ただし、取得した財産を譲渡した場合に受けることができる相続税の取得費加算の特例は、申告書等に記されている金額をもとにおこなうので正しく特例を受けるために1~3の手続きをしましょう。相続財産が7億円、相続人は配偶者と長男・長女・次男の子供3人(税額は概算、また税額軽減の規定は一切考慮しない)の場合、長男は取得する財産が少なくなっているので2,571万円の更正の請求(前記3)を、配偶者は取得する財産が多くなっているため1,286万円の修正申告(前記2)を、次男は新たに財産を取得したため1,285万円の期限後申告(前記1)をおこないます。なお、遺言書の発見による期限後申告•修正申告については、延滞税・加算税は課されません。
