昔は文章を書くというと紙(原稿用紙)に手書きが当り前だったが、1990年頃からだったろうかワープロが普及し始めてペンで書く機会が減り、そして2000年頃になるとパソコンが身近になって文章を書くだけではなくいろいろなことができるようになって、アマチュアがものを作る世界が限りなく広がってきた。

 

 若い時から鉄道やバスを利用して旅行や山登りをカメラを持って楽しんできた私にとっては、こうした時代の変化は写真入りの旅行記やエッセイを書くという新しい楽しみを作ってくれた。その上ホームページを作って公開し、未知の多くの人たちに読んでもらうというこれまで考えられなかったことが手軽にできる新しい時代が始まっていた。

 

 もともと文章を書くことが嫌いではなかった私は、定年になると時間の余裕ができたこともあって手に入れた中古のパソコンを使って次々とエッセイを書き始めた。そしてJCOMのホームページサービスを利用して公開していった。

 

 このようにしてホームページに公開したエッセイや写真がたくさんになってくると、今度はその中から選んだもので本やアルバムを作ってはどうだろうかということになった。そこで本を作ってみたが随分と高いものについた。アルバムも近年のフォトブック作りのブームに乗ってすでに幾冊も作ってみた。

 

 ところが予期しないことが起るもので、JCOMが突然ホームページサービスをやめることになってしまった。はたと困ったが面倒なホームページの作成を新しく始めるのも気が進まなかった。そこで考えたのがその頃広がってきたブログの作成だった。

 

 ブログなら作るのが割と簡単そうだし、工夫すればいろいろできそうに思って始めたのがYahooのブログだった。ホームページ掲載のエッセイをブログの制約に合わせながら再掲載すると同時に新しいエッセイや写真なども次々と載せていった。

 

 ところが悪いことは2度起きるもので、ブログを順調に楽しんでいたところ今度はYahooがブログサービスをやめることになってしまった。どこにするか悩んだ末に引越してきたのがこのAmebaのブログになる。もうやめるなどと言わないように切に願っている。

 

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 ホームページやブログに載せた記事は古くなると本人以外はほとんど読む人がいなくなるのが普通だろう。ブログの内容が日記風の生活の断片などならそれも仕方ないかもしれないが、私の場合は本や資料を読み、関係地を訪ねたりして書いたものが多いので、そのまま読む人もなく忘れ去られてしまうのはいかにも残念だった。そこで思いついたのがこのブログの中に「本」を作ることだった。

 

 すでにブログに掲載しているエッセイや写真から、いくつかを選んで並べ方に工夫して目次を作り、それぞれにリンクをつければ本は完成する。あとは興味を持った人がクリックして読んでくれるのを待つばかりである。作る方も読む方もお金がかからないし、ちょっとした手間で古い文章や写真が再び読んだり、見てもらう機会ができるとすれば嬉しい限りだ。

 

 そのためにブログのテーマに「本」というのを追加してすでに「會津八一の歌碑」という本を作ってみた。これは會津八一の歌碑全般についての文章と個々の歌碑についての説明を読む時に便利なようにと考えたからだ。次に考えている本は、いろいろな文章を組み合わせるので工夫がいるが新しい試みをやってみようと思う。多くの方に読んでいただけると嬉しいのだが。

 

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 こんなことがあった。會津八一が好きで、彼の歌の解説を自分のホームページで熱心に展開していた人が突然亡くなった。彼のブログには、亡くなる直前の彼の言葉が綴られていた。そしてその翌日には遺族が彼が突然亡くなったことを知らせる記事をブログに載せたのだった。私の従兄は居間で奥さんとお茶を飲みながら話している最中に突然倒れてそのまま亡くなった。人の命ははかない。一寸先は闇だ、とつくづく思う。

 

 また、自分の書いた記事についた「いいね」を見ていると、「ユーザーが退会しているため表示できません」というのが時々ある。退会すればそれまでの何年か続けてきたブログの記事はすべて消えてしまうのだろう。寂しくないのだろうか。もし退会の手続きをしないで記事を書かなくなったら、どのくらいの期間で記事は消滅してしまうのだろう。

 

 昔からどの家庭にも亡くなった人を偲ぶアルバムがあるが、同じような役割をブログがすることは出来ないのだろうか。ホームページの場合はサーバーに送るために作成した記事が自分のパソコンに残るので、ホームページをやめたら何もないといった状態にはならない。ブログでも退会しなければ記事がそのまま残るようになれば、不幸にして亡くなった人を偲ぶよい記念にもなると思うのだが。

 

 上の写真は私の書棚の一部。処分してもいい本、最期まで手元に置いておきたい本を決めかねているうちに月日はどんどんと経っていく感じだが、自分のブログに作る本はそんな心配をしなくてもよさそうなのがいいところだろう。