現在進行中のシリア内戦など

いわゆる野戦ではなく市街地戦が目立っている

そこで、読者の皆様に市街地戦の特徴というものをわかりやすく紹介したい、そして著者も復習したい

(ここ足りないぞとか間違ってるぞという場合は遠慮なく指摘を)

 

1.市街地の地形的特徴

一般に、市街地は路地と路地の間に大小さまざまな建造物が存在する。この建造物に視界が遮られ、また建造物そのもの、およびその内部にも塀や家具など視界を遮るモノが多数存在する。

つまり、遮蔽物が多い。モノに隠れて居場所がわからなければ、正確に狙いをつけるのが難しい。

また、移動なども隠れて行いやすい撤退や潜伏なども容易だ

が、注意しなければならないのは遮蔽物が多いとはいっても、強力な自動小銃の銃弾を防げる遮蔽物はそう多くない

つまり見えないから正確に狙いにくいだけで、野戦で塹壕など本格的な塹壕に籠もる歩兵と比べて防御力は高くない

平地と異なり、たとえば二階や屋上など立体的な布陣も可能であることも敵の位置を把握する上で障害となる

更には、大部隊もこれら建造物によって少部隊ごとに分散することになりがちである。極論すれば、小部隊であっても建造物の内部においても部屋と部屋で分断されることもありうる

そして視界を遮るモノが多い事による必然として、敵との接触がごく近距離で発生しやすい

遅刻遅刻~といってパンくわえて走ってたら曲がり角で転校生とぶつかるあのシチュエーションね。ぶつかるのは敵兵とだが

他に付け加えるならば市民との距離が近くなりがちということもあるだろうか。なにせ街だからな・・・

まとめれば

・敵の居場所が掴みづらい

・大軍も分散しがち

・接近戦になりやすい

・隠れやすいけどあまり防御はされない

・市民もいるかも

 

2.市街戦の特徴

前述の前提より、市街戦というのは消耗戦になりやすい

なぜならば、敵が隠れる場所がそこかしこにあるので、どうしても虱潰しに建造物を一つ一つ潰すという事になりがち

だがそのような戦いでは、小部隊と小部隊が建造物内で接近して交戦するというようなことを繰り返すことになる

その繰り返しの中ではお互いの戦術的巧みさだとか、あるいは兵器の優劣など要素は希釈され、最終的に頭数が要求されてくる

たった一つの建物をめぐって数週間も争い続ける事例もあるのだ

有名なパブロフの家とかね。面白いから知らない人はググれ

そして遮蔽物の膨大さは相対的に防御側が有利にはたらく

考えてもみて欲しい。正直に玄関から建造物に入ったとして、入り口の死角から敵がいたらどうだろう?

死角が多い=待ち伏せがしやすい→攻撃側は犠牲を出しやすい

ということは容易に想像してもらえると思う

建物から建物へ渡る途中の路地で影から狙撃され、突入すれば部屋のカドに敵兵がいて、階段を登ると更に上の階の階段から撃たれ、窓に身を晒すと隣の建造物から銃弾…なんてのが市街戦

そりゃあ消耗戦になるだろ…常識で考えて…

 

3.市街戦の戦い方

市街戦は接近戦になりがちで火力が野戦に比べると発揮しにくい

だが、とはいっても火力が無用というわけではない

むしろ市街戦においても火力は必要不可欠

たとえばあの部屋に入ると敵に撃たれそうだ。そういうとき、歩兵が単独で行える簡単な対処は手榴弾を投げることだ

手榴弾を使えば自らは部屋に入ることなく、しかしその部屋の人間を(存在すればだが)一掃できる。仮に杞憂だったとしても、移動時の安全をまずは確認できるというのは重要だ

スターリングラードにおいて市街戦を指揮したチュイコフは曲がり角の数だけ手榴弾を投げろという論旨の発言をしたとされる

そこまで言われるほど市街戦では待ち伏せの危険があるわけだ

同時に、建造物に突入するには入り口から入ることは厳禁である

玄関とか敵が待ち伏せしてるなら注意されてるに決まってるしね

では窓から…というのは次善の策。ベストは新しく入り口を作れ

一般的な建造物は歩兵携行の無反動砲などで壁を簡単に崩せる

壁を爆破してそこから手榴弾を投げ込み突入するわけだ

市街戦において爆発物というのはあればあるほど良い

(別に野戦でもそうだけれども)

だから市街戦でも戦車や装甲車が大いに有力

戦車は手榴弾などよりずっと強力な爆発物を発射できる

しかも狙いは正確で、そしてずっと遠くまで届くものをだ

あの建造物に敵がいそうだから戦車砲で階層ごと吹き飛ばす

あそこへんに狙撃手がいそうだから戦車砲で飛ばす

そういった行為を行えるのが大口径火砲の力だ

ベルリンの市街戦では152mmカノン榴弾砲を家屋そのものをまるごと破壊するために市街地内部に持ってきたほどである

また現在のシリアの市街戦でも、たとえば地雷処理用の爆導索を対人使用して建造物ごと敵を一掃しようと試みられている

もちろん市街地内部に戦車を持ってくるのは本来は危険な行為だ

前述のように歩兵が待ち伏せしやすい、つまり対戦車攻撃もしやすくRPGなど対戦車ロケットで破壊される危険が大きい

とはいえ、戦車に犠牲がでるような市街戦を歩兵だけでするとなおのこと犠牲が出る。

本質的に市街戦は消耗戦であり、戦車もその例外ではない

 

4.市街戦の問題

さて、3をみて思っただろう。

そんなことしてたら町は廃墟になるのでは?

結論から言うと、市街戦をすると都市は廃墟同然になる

スターリングラードの戦いでスターリングラードの町は徹底的に破壊されてしまった(ベルリン?あれはもとからB-17が・・・

太平洋戦線ではフィリピンのマニラ市街戦なども有名だ

現在のシリアでも都市が廃墟同然になっているのをニュースなどで見かけるはずだ

しかも市街地にはもとは市民が生活していたのである

疎開して逃げ出さざるをえなかった人、逃げ出せず巻き込まれて死傷した人などが膨大な数にのぼるわけ

そうであるがゆえにシリア難民がすごい数発生するわけだな

戦争の市民への被害という意味では、都市への戦略爆撃に次いでそれを発生させるものになる