レナは一週間後コンビニの店長に呼び出され、
皆に知られないよう店長使用の事務所へ通された。



「理解してもらえるね?」



「店長……。待って下さい。私 生活費無くなると困るんです。」



「何、言ってるの。
橘さんは若いから、いくらでも仕事みつかるでしょう。

それに、ここフランチャイズだから、オーナーも本社に注意されて困ってるんですよ。」



「店長から話して頂けないでしょうか?

わたし こないだの男の人達なんて知らないんです。

私 被害者なのに、仕事とられたら……。」



「困るよ。橘さん。
君、もう少しで20歳だよね?事の分別は理解してもらわないと。

被害者って言うけど、
うちの店の損害幾らか知らないだろ。

店舗が一番の被害なの
今回 本社は損害保険使わせないって言うから、

俺とオーナーの持ち出しあるわけ。」



「お金なら働いて返します。だけど大金なんてすぐ用意できないし、働かせて下さい。せっかく親しくなったパートの人もいるんです。皆にも謝りたいし。」



 「そ。働けるの?」



「はい!本当にすいません。働かせて下さい。」



「………………。
いいよ。そんなに言うなら、誰にも余計な事は言わないか?」



 (余計なこと……?)



「え……。は……い」



店長はレナを見つめた……。



「君、肌が綺麗だよな。
賢く口封じできるなら、
俺が小遣いあげるよ。
1回1万円 どう?そんな怯えた顔しないで、こっち来なよ」



「や……。店長やめてください」



「好きなんだろ?こーゆーの。あ、この事務所は俺とオーナーしか入れないから、叫んでも誰もこないよ?」



店長は無理矢理 レナをソファーに押し倒した。



いやあーぁぁ!!…………………。






生きている価値が分かりません…………。



気づけば孤立していて苦しい…………。



誰にも自分の気持ちに気づいてもらえない…………。



毎日は充実しているけれど、何か欠けていて足りない…………。



体調を崩して辛い…………。



認められたいと、望む気は全くないと言葉にしても、人の根幹で大事な柱となるのは「役立つ」こと…………。



無意識に引き寄せる「善」の心は、悪人だろうが最後まで望む、唯一の感情。



どうして泣いているの?



何故 無理だと思うの?



生きる価値なんて、産まれたことが、すでに奇跡的で神聖なものだから、



がむしゃらに夢中といえる「何か」を追求して、

どうして自分はそれが好きなのか、自らと対峙して過ごすのもいいんじゃないかな?



僕には君が諦めた理由が今でも分からない。



残された僕は幸せを遮断された気分なんだ。



自分の笑顔が時に疎ましく感じてしまう…………。



車の助手席に乗り込む君をみて、「決行」を表情から読みとれた。



急に逃げたしたくなって、関わりたくないと感じたのは、君にも伝わってしまったのかな…………。



優しく出来ずに悪かった。



友達にもなれずに悪かった。



―決して君が嫌いで離れた訳じゃない、それだけは忘れないで―





    一年前



舞斗と柊はNO1を交互に出し抜いていた。



「お前の手練手管盗ませろよ(笑)」



「柊 俺だってお前の盗みてーよ」



当日 舞斗には太客で感情移入しやすい女がついていた…………。




「ねぇ?舞斗。わたし舞斗の側に居れると、すべてが忘れられる……。」



「もう 何処にもいかないで。ずっとわたしの側に居てね…………。」




昼夜問わず鳴り続ける電話…………。



初めは家庭環境、友人の話や仕事話。舞斗は真剣に耳を傾けた。



次第に女の精神安定剤になるには、そう時間はかからなかった。



―俺が至らなかった―




「舞斗。どうして話きいてくれないの?」



「毎日 毎日 電話するなよ。俺、疲れてるんだから寝かせろよ」



「私がこんなに困ってるのに、助けてくれないの?そんなもんだったの?貴方の気持ち。突き放すくらいなら、消えちゃうんだから!!」



  「いいよ。」



  「え………?」



「さっさと消えちゃえよ。家庭の話や友人の話ウンザリだ。」



 「舞斗………?」



   ガチャ!



30分後また着信があり女は告げた。



「ねぇ?舞斗。生きていたらいけない人間はいないって、神様は言ってた…………。


だけど景色はいつも晴れないの。


もう…、疲れたよ…………。


携帯切らずにポケットに入れておくから…………。



全てを受け入れてね。」


 「おい!待て!」



女はそのまま23階から飛び降りた。



酷い衝撃音が受話器から聞こえた。




舞斗は受話器ごしから叫んだ。




NO1の立場が重くて苦い過去。



舞斗は自分が命の引金を引いたと核心した。



―こんなに…、あっさり捨てるなよ―



その後 舞斗がNO1を飾ることは一切無くなった。





「もっと大きなハコで
試してーなぁ…………。」


舞斗はタバコをふかしながら呟いた…………。



 カツ……カツ………。



「俺越えてから言えよ」



「おぉ、柊…………。」



   「飲むか?」



柊は舞斗にレモン水を渡した。



「そーいや、お前 チビとつるんでるだろ。」



「あ…、サンキュ。彰のことか?なんだよ急に」



「柊だって、ヘルプつかせてんじゃん。」



「俺は気まぐれ。タクヤ代表に頭下げられてな」


   「そっか。」



 「チビ楽しいか?」



「んぁ?彰イイヤツだぜ。真っ直ぐな性格で、情に厚い誠実な男だ」



「……………………。」



「それより柊。お前は思わないのか?もっと大きなハコで試したいって」



「全然。稼げりゃ問題ないだろ。試すって、何を試したいんだよ」



「なんだろーなぁ。
 俺、舞斗サマの価値?」



 「フッ…………。」



「てっぺん見上げりゃ、キリねーぞ。地に足つけてなんぼだろ。」



「柊口説くの大変そうだな(笑)」



「場所変わってもやること同じだろ?城守ってナンボだろ。」



「柊は相変わらずぶれないな」



―移り変わる欲に対応するほど、本気だせないんだよ―



「お前だって、才能あるのに何故本気ださないんだよ。ここなら余裕だろ?」



「柊…………。覚えてるか?俺がてっぺん上がっても、守れないんだよ」



「おい…、まだ あの件引きずってんのか?」



「忘れられねぇ……。」



―遅かれ早かれ結果は同じだろ? 自責の念なんて必要ないんだよ―



柊は1年前のことを思い出した…………。






   俺が幼い頃
  生きていく途中
一生巡り会わない縁があると思考で勝手に決めていた時がある。




例えばそれは最悪な不幸話だったり。




人の道を外れた行為をする人間との接触だったり。



馬鹿みたいに金持ってるくせに、超ドケチだったり。



超高級タワーマンションの一室で裏パーティーしてるヤツとか。



一時間で1億稼ぐ経営者だったり。



あの頃は出会う術が分からないから「会わない」と思っていたけど、



  その都市の性質で
 危険な場所があったり
聞いことがない不幸話が目の前にあったり………。



「この街では、これが当たり前」だなんてキャストに言われたことあるけど、



目を背けず、一度は現実を受け入れてみても、俺は口が裂けても「当たり前」として告げたくない過酷な現状が、歌舞伎町には転がっていた。




こんなに乱暴でいなきゃいけない理由はなんだ?



 殴られて殴り返したら
ただ互いに傷を負うだけなのに、なぜ無意味な行動にエネルギー注ぐのだろう?



力任せで解決しようとするのは、大人げないって、皆 気づいてほしい。






―女って、王子様に憧れるんだよな―




そんな話し 初め聞いて
んな完璧な男なんかいないって、笑ったけど……。



  柊を見ていると
王子様は実在するなんて
男の俺でもマジで考える



   ―勝てない―




思えば垂れ目の舞斗さんも、堂々と座ると王子様だ………。



―男なのに色気とオーラが違うぞ!―




(きゃ~!抱いてぇ~、舞斗ぉ)




    うん。




(こんな言葉はレナっぽくない)




(柊さん…、本当は彰さんよりお慕いしていました…。今夜、一度だけでいい…、抱いて下さい)




― ぬぉー!!エロい!!




   って…………。




(俺の彼女だぜ!?なんつー妄想………。)




そう。俺には秘密の妄想がある………。


柊が…、ちょっと嫌がるレナに口づけして…


胸をわしづかみ!!



(いやいやいや。相手は王子様………。)



手品のようにボタンをパラパラパラ………。



(わー!柊さんすごい!)


ダメダメダメ レナは無邪気だから手品みたいだと喜んでしまう!




なんか柊のイメージはやっぱり王子様だ。




(舞斗さんでいこう!)




  「話があるんだ」



「舞斗さんなんですか?」



   「んんッ!」




いやぁ………。舞斗さんに相手変えると…、妄想が野外なのは何故だ?



(野性的に不潔そうだから??)



(ストーカーにもなれそうだから??)




   はぁー………。



 オレ本番ドジりそう…。



女の子の裸みただけで
発射して終わりそう………。



童貞すてるのも勇気いるよな………。



腰に重り付けて鍛えておこうか!!



ああー!! 俺が童貞なばかりに、レナを柊に取られるのはイヤだむかっ



俺も王子様になりたい!!






なんだか言葉がうまく伝えられなくて………。


彰さんの真っ直ぐな瞳をみたら涙がでそうで………。


この緊張感が身体中の神経に障る………。



―ダメ。言えない。



伝えたら嫌われてしまう………。



せっかく手に入れた幸せ
温かい感情パチンッて弾けてしまいそうな不安―



『(レナ。まただ………。前もあったよな。ユィさんとの日に、急に来てやっぱり黙っていて………。)』



彰は様子の変化には気付いたが、汲み取れるほど女心に慣れていないため、ただ無言で側にいた。




「ねぇ?柊。あの二人まるで葬式みたいじゃない。 バレたの?」




「彰じゃ、まだ役不足だろ。女の不安に免疫ないからな」




「貴方は免疫ありありなのね」




「俺を誰だと思ってるの?わからなきゃトップ走り続けれないさ。」




「知ってるわよ(笑)意地悪いっただけ。」




「ところで、いつ階段登りそう?」




「2段あがりで今週末かな」



「彰 泣くかしら(笑)」




 「泣かせたいの?」




「全然。如何にも泣きそうな相手が泣いてもつまらない。咲は貴方の涙がみてみたい」





柊は笑みを浮かべて咲の頭を優しく撫でた。





レナはそんな柊と咲の姿が眩しく映った。




―俺たちは素直に相談し合おうな―




(彰さん…、私を許して)



  レナと彰は未成年
レナは精一杯 店での彰の立場を守ろうとしたが、
彰には誤解を与えてしまう。



―レナは柊のことが気になるみたいだ―







レナの待つ席へ向かう彰は、少し緊張していた。


―昨夜 声が聞けなかったせいか、なんとなく何から話そう?なんて俺らしくない発想―



『レナ こんばんわ!』



 「あ!彰さん(照)」




「彰 やっと来たか。

お前、レナちゃんに会いたかったからって、咲への挨拶忘れてるぞ」




『あ汗咲さんすいません。浮かれてしまって汗



「やだぁ。素直ね(笑)
いいのよ、私のメインは貴方じゃないから♪」



―彰 私を無視してムカつく―



咲は不機嫌になる表情を抑え、呪文のように(もう少しの辛抱よ)自分を慰めた。



―どうせ坊やは、シクシク泣くんでしょう?見物だわね―



「レナちゃん空いたがってたぞ。姫様、レナと彰がゆっくり会話できるように、こっちにおいで」



柊は咲の腰に手をまわしソファーの端へ移動した。



―すげぇ………。
あんなエスコートしたことねぇ。

社交ダンスみたいに息がピッタリだったぞ!―




彰とレナは一瞬みとれてしまった………。




― や…、やばい!
何か行動起こさなきゃ…、俺ダサい―



彰はゆっくりレナに身体を密着させつつ座った。



『レナ、会いたかった』



(ん………?いま……。)



―少し避けられた??―



(やだ…、私ったらせっかく彰さんが側に来てくれたのに、昨日の恐怖かな………。身体が反射的に避けた………。)



『今日と昨夜、電話したんだぞ?なにかあったのか?』



レナはうつ向いたまま答えた。



「うん…、携帯を置き忘れて来ちゃって。どこにあるかわからなくて。多分 バイト先か自宅のどこか。」




(ん……?レナ。
さっきまで、柊と会話してたみたいに笑わない。)



―なんだよ。なんで目を合わせないんだよ―







―しっかり繋いでおかないと、手の届かない場所まで流されるぞ―




― 柊に限って横取りなんかないよ―




 『………………。』




もしかして……………。
柊のさっきの優しさは、
レナに手を出す宣戦布告!?




二人は昨夜→一緒に過ごした。




電波不良→柊がわざと電源切った。




すべては→嫌いな俺の泣き顔を見るため!!




 (なんてこったーむかっ)




柊が失恋でもして哀愁漂わせていたんじゃなくて、レナは俺に仕返しで柊の駒を使った!?




(って…………。ずいぶん頭脳派な俺の彼女!?)




― やばい。俺こそ頭…、打ったのかも………―




「ょう………。しょう! 彰むかっ




    『え?』




「おまえ 側で歌舞伎役者みたく表情変えて、恐い。はやく柊の席につけよ………。俺のとこはいいから(汗)」




― おぉ!舞斗さん!!




 彰は舞斗に会釈して
 レナの席へ向かった。







 「レナちゃーん!」




 キャストに案内される
レナを笑顔で手招きする咲



「あら♪レナちゃん今日は一段と綺麗じゃない?

しっかりアイライン引いて、つけまつげまで」



「や…、いつも化粧薄いから、少し今風に(照)」



―本当は誰かが私を

見張ってるかもしれないから変装のつもり…………。

だなんて、咲さんに言えない―




「いいじゃない♪ねぇ?柊。」



 「ああ。綺麗だよ」




  「彰さんは?」




「あいつ舞斗のヘルプ
呼ばれて入ってるから、

レナちゃん俺と一緒に
  一杯付き合ってよ」



「なんか心境の変化でもあったの? 彰がみたら驚くだろうな(笑)」



「そんなに 普段と違いますか? 変ですかね?」



「レナちゃん綺麗よ。お世辞じゃなくて、すごく化粧映えするのね」




「咲、女の子は急に蝶々に変身するんだよ」




レナは柊の言葉にドキッとした…………。




顔を赤くしたレナに柊は笑顔で応える。



―やだ。違う意味で意識しちゃう…………。

恋愛コンサルタントの高山さん紹介してくれた柊さんには、全て見透かされているようで―




彰の席では、舞斗がからかうように告げた。



「見ろよ 彰。
柊の席にいる、あの子。

なんかいい感じじゃね?」




― 舞斗さん!!あれ俺の彼女むかっ




  『そうですか?』




「おいー!彰 嫉妬するなよ(笑) 冗談だって。柊が横取りする訳ないじゃん」



『だけど、舞斗さんにはそう見えるんですよね』



「彰本気で好きなんだ」




舞斗はからかうようにウィスキーを口に運んだ。



『(レナ……………。)』



― レナって、あんなに楽しそうに笑うんだ。柊の前だと、そんなに素直に表情変えるんだ―




― 咲さん無視して、二人してイチャイチャするな―