「わたし……。
バイトクビになっちゃって。」




『え!? なんだよ、それ。いつ?』



「お店に脅迫する人が現れて、その人たちが私と知り合いみたいに吹聴して…………。」



『知らない奴等なんだろ?責任者の勘違いなら、不法な解雇じゃん。』



「彰さん……。私にもよく解らなくて。

だけど、本気で知らないから店長に訴えたのだけど……。

店長は…………。」




  『店長が何?』




―急に私を押し倒して
 胸に顔を埋めて……―



『レナ? レナ店長がどうした?』




―私の身体は悦んだ―




「っ……。て……、店長が……。」




―ダメ。思わず身を任せて楽しんだんでしょう?伝えたら終わりよ―




「急に……クビだって」



『なんだよ それ。
一緒に話し合いに行こう』



「え……、だ……、ダメだよ。会いたくない」




レナは、彰に店長との秘密がバレてしまうのを恐れ、身体を震わせた。




『どうしたんだよ。レナ。なにかされたのか?』



「違う……。彰さん違うの。気が動転してて……。仕事はすぐ探すから。
だから……。だから。」



―これ以上汚れを暴かないで―




 『レナ…………。』




彰は戸惑いを隠せなかった。




―俺は 何か嫌な予感がしたんだ。だけど、その時は言葉がでなくて。

深く立ち入るのをとめた気がする―







〈レナ?元気でたら、嵐のコンサート行こうな〉




―この世にたった一人でも、レナを心配してくれて 待っている大切な人―





大粒の涙が頬に流れる





―私は いま一人じゃないんだ―





私を見てくれる たった一人に伝えよう。

大丈夫だと笑顔で伝えよう。




―嵐のコンサート行こうな―





 (うん……。うん。)





―貴方だけは困らせたくない。いつも通り過ごしたい。どうか神様、幸せになりたい―





レナは彰に連絡した。





行列ができるパンケーキ屋 二人が気持ちを打ち明けた場所。





待ち合わせ時間に、予想より40分遅れたレナは、夕暮れ、彰の笑顔に迎えられ抱き寄せられた。




『こら。もう一人で急に離れるなよ。一緒に解決して歩むんだろ?』





 「…………。うん」





レナは幸福に包まれた。




あれだけ波打ち際で苦しかったのに、ゆっくり呼吸できる喜びが身体を楽にした。





トクン……。トクン…。





(彰さんの鼓動、穏やかで温かい。)





育むのは馴れていないけれど、貴方を大切にしたい。





優しく撫でるこの手が愛しい。






(大丈夫。きっと大丈夫)








―大きなチャンスには、理屈より先ずは行動が大事―





(そうなのか?俺には全く実感ない。なにか俺だけが見えない未来を、拓哉代表が予言してるみたいな言葉だけど……。)




No.1・2は柊・舞斗ペアの独占首位だし、他の上位も二人ほどの売上じゃないけど、まだ俺が到達するには遠い金額……。





(俺は何も持っていない)





目標達成や夢、自分のやる気と、客を喜ばせるアイデア……。





(何も持っていないんだ)





レナ。頼むから電話に出てくれ。なぜ最近繋がりが悪いんだよ。





柊とやっぱなんかあるのか……?





(いや……、柊は一分一秒惜しむほど多忙だから、レナが会いたくても会えない??)





―なんで出ないんだよ。
  いま何してるの?―





  ザァァァァァ……。




  ザァァァァァ……。





  瞳を閉じていると
海からの贈り物で波のコンサートに招待されているみたい。





だけど 今の私には波が引きあがる時に、そのまま深いところに連れていかれそうな恐怖がある。





―警察に訴えたら埋めるからな―





レナは身震いを起こしながら、思い出したかのように、携帯の電源を入れた。




(け…警察に届けなきゃ)




  (だ……、だけど)




~録音メッセージが7件あります~




 「………………?」





  ピッ ピピ。ピー。





〈あ……、レナ?
彰だけど、どうした?。連絡取れなくて心配してるよ。レナになにかのあったか心配だけど大丈夫か?〉




〈レナ?具合悪いの?〉



〈レナ?連絡待ってる〉




―彰さん……。こんな駄目な私を心配してる―




―こんなにバカな私を心配してる―




〈レナ?元気でたら、
嵐のコンサート行こうな〉




(心配してくれる。
私は一人じゃないんだ)




―彰さんに会って側で声が聞きたいよ―








「なんやの?彰ぉ。


せっかくお前の、
女々しくて作戦(ハーブティプレゼント)順調に蕾が花ひらいとんのに、



先週から テンションは低いままやないの……。」





「客 逃げちゃうで?(蜂のように、かるく密吸ってブーンとな!)」




「なぁ、聞いとんの?(おい!こら眉毛、返事しろ)」




  『すいません。』




「彰。スタイリストのテッチャンから聞いたやろ?お前の眉毛 伸びんの早いんやから、手入れは抜くなて。最近 剛毛やないの?」




―また、眉毛かよ…―





 『すいません……。』




(うわ。眉毛気味悪いわ。すいません。すいませんロボットかいな。ちと動けアホ。)





  『拓哉代表』




  「なんやー?」





『1日だけ休みもらえませんか?1日頭冷やして必ず挽回するんで』




(アホかーDASH!
男なら仕事中に挽回せぇビックリマークビックリマークなんやの。ゆとり世代すぐ休みよるDASH!)




『休みは店の都合に合わせます。1日だけお願いします』





(な……、なんやの?)





(やけにシリアスな表情しよって。しっかし、眉毛太くて、アカン。吹きそうやビックリマーク)





「なんや、よう分からんけど、煮詰まっとるん?

ベスト10入りしたんやから、休み明けはガンガン働いてもらうで。エエな?」





拓哉はプィッと背を向けた。




―拓哉代表。俺 レナと連絡つかないのが心配で―




(ホストどころじゃない)





「彰。チャンスの波が来たら理屈で考えるまえに、先ずは行動が大事やからな。お前、ホストの自覚もしっかり考えてこいよ」




 ―チャンスの波……―








―私が 騙された…?―





レナは一人で砂浜を見ながら事の成り行きを思い出した。





(なんでこんなことになるの…?なんで私なの?)





恋愛コンサルタント高山に連れられ、セミナーへ参加した。




(ここまでは良かった。)





外人に話しかけられた後に、見知らぬ人が「仮契約」と巧みに氏名や住所や口座を書かせた。




  ―ここが間違い―





レナちゃん会員になると特典あるしね!高山の言葉を思い出した。





   ―まさか…―




もう一度 思考でリプレイしてみる。





(高山さんは、レナに恋愛コンサルタント無償でしてくれた、いい人。)





―いい人? たった数回しか会ってないのに、何故そう思うんだろう。―




   (柊……。)





― ああ、そうだ。柊さんが、私にとても親切で彰さんとも仕事で繋がりあるから、自然と信頼が湧くんだ―





―やっぱり、私個人の勝手な不注意で、騙された…の?―




レナは頭がガンガン痛かった。加えて心臓の鼓動に気分が悪くなる。





―どうすればいいの?
どうすればいいの?―




レナは震える手で、携帯を掛け、絞り出すような声で、高山の留守電にメッセージを残した。





―明日を迎えるのが怖い―









  ザァァァァァ……。




  ザァァァァァ……。




店長に身体を触られた4日後、レナはどう辿り着いたかわからないが、気づけば浜辺にいた。




指で砂に「これは夢」と 書いてみる……。





すぐさま波が文字を消しにくる。




  ザァァァァァ……。




それでも何度か、希望に満ちた言葉も砂に指で綴ってみる「彰さんと嵐のコンサート・素敵な腕時計・可愛い仔犬・家族」




すぐ波がぐちゃぐちゃにしてゆく。





レナは「大金」と砂に綴る。




何故かこの文字はギリギリまで波が来るものの、波が砂をさらわずレナは塞ぎ込んだ。





あの後 帰宅後、大家を脅している男達が騒いでおり、コンビニで脅迫した男性の正体が分かった。





「君、馬鹿だね。セミナーで詐欺だと分からなかったの?金、利息分合わせて返せよ。」




手付かずの現金は返したが、利息150万円請求されていた。




「てめぇ 弁護士に相談したり警察に訴えたら埋めるからな。」




大家に迷惑をかけたこともあり、その場で元金返済したが「利息」話を聞き身体が震えた。





恋愛コンサルタント高山に、セミナー詐欺に合ったことを相談するために何度も連絡したが、運悪く「海外講演中のためメッセージをどうぞ。日本に戻りましたら連絡します」と留守電だった。





レナは海は見ず、砂浜に書いた「大金」の文字を眺めていた。




普段は動いている感覚さえ忘れている心臓が、
リズムよくドクンドクン身体に振動を与える。




 それが息苦しかった。




―私が 騙された…?―





―セミナー詐欺もあるから、気を付けなよ―




今更 高山の言葉の重みを目の当たりにし、身動きができなかった。







―彰さんもこんなに
女性を喜ばせるのが上手なのだろうか……?―




―私 なんで店長に淫らな姿をさらけ出してるんだろう……?―




(彰さんに知られたら………。)




   ドンッッ!!





「な……、なんだよ。
急に、どうした?痛かった?」




   ドンッッ!!





  「ってぇ……。」





「おい、なんだよ、急に。 さっきまでキャンキャン悦んでた癖に。」




「ほら。俺のこんなになってんだ。こっちこい」




「いや!!感じたふりしてあげただけよ!

馬鹿にしないで!下手くそ!失礼します。もう仕事は無くて結構です。」




 「おい!まてよ!」





   バタンッ!!





はぁ……。ハァ……、





事務所を飛び出したレナは全力で走った。




走りながらも胸に残る舌の感触が、下半身を暖めた。




―完全に理性を失っちゃった……。あのまま嫌なこと全て一瞬忘れられるような気がして……。


同世代の恋人達より、
一歩だけ大人になれそうな「性」への興味の扉をあけてみたくなって……。



私 最低な女だ。
彰さんゴメンナサイ―




(怖い。自分の感情に、
あんな逃げの姿勢があったなんて……。)




親友の美穂みたく軽い女になりたくないのに。





大人になるって どうゆうことですか?




一線越えたら近づけますか?




―私みたいな子供がいるから、店長みたいな大人がいるんだ。強くならなきゃ。 心の隙間を他人にうめてもらわず、強くなるんだ―




(本当の私……。戻ってきて。)






モラル・人間関係・逃避・経済事情・愛情の渇き。



内にある秘め事が増すごとに、肌の重なりが興奮へ変わる……。




(わたし……。
ストレスの末期症状だった……の?)




触れられる指に愛しさを感じ、




焦らされる瞬間に幸福を覚え、





ただ。 ただ……。





頭が真っ白になるの……。





私が私でなくなる瞬間
せがむように声がでてしまう。





二人の空間だけ熱気球のかごみたいに包まれて、




つい。




この熱が冷めたあと





何処か想像もできない場所へ落ちてしまうのだけは分かる。





  「きれいだよ」





店長はレナのブラジャーをそっと下へずらし胸にふれた。




「早く舐めてって顔してる。凄くエロい表情だ……。 乳首までたたせて」




  「や……。」





「今更 イヤはないだろう。こんなに胸はだけて、俺を興奮させときながら、本当は先の展開を想像してるんだろ」





そう告げると、レナの乳首に吸い付いた。





レナの身体は電流を流されたような、熱っぽい快感が身体を支配し、呪文のように思考が囁く。




(もっと……。もっとして欲しい。ブラジャーの隙間から舌を滑らせて……。)




   ―彰さん―









  店長の年齢は36歳
 見た目はレナのタイプ



店長は知らないだろうけど、
このコンビニ……。
本当はオーナーが親なんでしょう?



息子の貴方は、定年退職しフランチャイズ契約を結んだ親の体力を考慮し、長男だからと店を継ぐつもりで、



赤の他人を経営に抱きかかえるよりも、自ら店長を引き受けた。



前職は金融の外資系で働き、株や投資さえ得意ということもあり、現在も複利で配当所得が入り



正直、お金には困らない。



コンビニの店長になれば、学生や若い世代と交流が持てることもあり、



面接では好みの女性を選んでいると、店長が絶大な信頼を寄せている、お喋りな女性から聞いたんだから……。




そんな店長も陰ながら人気者だ。




(その女性とも……。
こんなことしたの……?)




(やだ……。私。
今の普段の私じゃない。)



―見た目はタイプの男が、レナの髪の毛に触れ、無我夢中で胸に顔をうずめてくる―




 ―少しだけ優越感―




―いまだけ私のペット―




(もう少し、滑らせて)




(口に含んで舌を遊ばせて……。)




―眠っていた、もう一人の小さな欲を抱えた私が、そう言うの―




―ちゃんと気持ちよく愛撫しなさい―





コンビニの店長はレナをソファーへ押し倒し、
両腕を押さえたまま首筋に顔をうずめた。



 押し倒された反動で、
一瞬記憶が飛ぶような衝撃に加え、全神経の融通を奪われたような脱力感に負け、レナは全く身体に力が入らなかった……。



(こ……声が出ない…。)



抵抗できないレナの姿に勘違いした店長は、



「そうか。君もずっと欲しかったのか。
どんな風にされたい?」



「こんな風に、されたいか?」




舌を出し舐め回すような仕草のままレナを見つめたあと……。




耳元で「舐めて下さい。って言えよ。店長……舐めて下さいって、言ってみろ、ほら。」と囁く。



(い……や、なハズなのに……。気持ち悪いハズなのに……。泣きたいくらい不運な状況のハズなのに……。


店長の吐息が耳に伝わるたびに、余計に力が抜けちゃって……。


なぜか耳から伝わる「音」が、微力な電流となり身体を麻痺させてゆく。


どうしたの?私。
嫌がってよ。お願い……。)



店長は焦らしながら、
レナの髪の毛を掻き分け、耳たぶから上へゆっくり舌をころがした……。




  「ンンッ……。」




レナは思わず声が漏れた。




(や……。なに?!
今の声。私じゃないみたい……。)



店長はゆっくりレナの耳を舌で舐めまわしながら、掴んでいた両腕を放し、指先を器用に動かしながら、二の腕や脇の下…… 胸へと滑らせた。




―こんなことで……。
人肌が気持ちいいなんて認めたくないのに―




(身体が言うこときかないの)