さっきの続き。
水田にたわわに実った稲の中を抜けてゆく農道。
うねうねとカーブして、ゆく途中。
うしろから元気のよい老人が歩いてくる。
話しかけると、ぼくよりもずっと遠いところの人。
これからどっちへ?
ハス池まで駆け上がって、切り通しから歴史資料館へ・・・
すごい距離になる。
おいくつ?
72。ランニングクラブにはいっとるからね。
じゃあまさかH先生じゃあ?
H先生も入っているクラブじゃ。
へえ、奇遇ですね。H先生はぼくの高校の陸上部の顧問だったんです。
へえ。
・・・・
この健脚にはとうてい追いつけない。
あっという間に稲穂の向うへ消えた。
ぼくは写真を撮りながら同じ道を、家に向かう。
花梨の実はまだ青い。
太陽がまぶしい。
強い日差しに、影は濃く、
あの異界の門である墜道への坂道に出た。
今度は長い上り坂だ。
心臓破りのこの坂道の、もうどこにもあの老人の姿はない。
息を切らしながらずんずん歩く。
テニスコートから階段をかけ上がればぼくの団地。
帰りついてすぐ握り飯を作り、折りたたみ椅子を持ってハス池へ。
大学の裏庭にたむろっていた女学生たちが、ぼくを眺めて「かっこいい」。
うふふ。斜めに被った帽子のおかげかな?
それとも黒いスリムなズボンのせいか?
うふふ、えへへ・・・にやにやしながら蓮池を一周し、隠れ家の堤防へ。
カルガモが驚いてはばたく。
もうすでにガンが渡ってきている。
ブッシュの影に椅子を置き、どっかり座ってまた缶ビールをぷしゅっ。
さっきの猫のスルメの残りでやったあと、おにぎりを広げた。
中身は葉唐辛子の佃煮。
焼酎をスキッドに入れてきたし、長居できそう。
これが楽しみ、手についた飯粒。
じっと見ていたらアキアカネがやってきた。
アカネは種類が多いのでアキアカネかどうかはわからない。
やや小ぶり。細め。アカが目にしみるほど濃い。
昼下がりの二時間ほどをぞんぶんに楽しんで、池をあとにし、
農道をゆくと、狭い側溝にまたアカネがやってきた。
「なんだ、おまえ、ついて来たのか?」
まさかね。
由布の頂上まで届くカメラで。
こちらは鶴見岳頂上のロープウェイ乗り場まで見晴るかす。
麓までここから、さて車で40分はかかる距離だが。
それだけ空が澄んでいるということだ。
ふるさとの山に向かいて言うことなし。
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