先週末4月21・22日にEPSDC研修会主催(場所:六本木)にて、第13期 STAGE l イエテボリ診断学ベーシックコース(半年間 全6回)最終回が開催されました。

 

 

この半年間、診断学を大きく捉えた考え方、及び顎顔面領域における痛みの診断に対する講義が行われました。

 

イエテボリ診断学教室では、'臨床は診断の連続'とし、初診時だけではなく臨床の各局面においてのデシジョンメイキング1つ1つを診断の重要なステップです。

このような診断学の考え方は、スウェーデン・イエテボリ大学の診断学教室のHans-Goran Grondahl先生からClaus Reit先生へ、そして Thomas Kvist先生へと現在も引き継がれており、彼らの学位論文が全て ‘Decision making’というタイトルがついていることからも、それが伺われます。(Grondahl1979, Reit1986, Kvist2001)

 

 

顎口腔顔面の痛みは日々の日常臨床においてしばしば遭遇するが、その大半は歯原性です。(Okeson.2005, 2011, 2017)

 

そこに非歯原性が歯原性疼痛の影に隠れているケースは多く、歯科医師が診断に迷う症例も少なくないです。

 

 

EPSDC研修会STAGE l 診断学ベーシックコースの講義では、歯原性疼痛から神経障害性疼痛の診断まで研修終了し、今回は、STAGE l 最終回の特別講義として東京医科歯科大学 歯科心身医学分野の豊福明教授をお招きし、第1回目として不定愁訴を訴える患者に対する対応のお話を伺いました。

 

 

また、本セミナー受講者が日常臨床で診断に苦慮した症例を提供していただき、どこでどう迷っているのか、診断のポイントをセミナー受講生と講師陣にてディスカッションが行われました。

 

 

 

 症例は62歳女性。

 

主訴は「右上の前歯がヒリヒリ痛んで鼻の方まで痛い。」

          「左側の舌がヒリヒリ痛む。」

(スライド提供 13期STAGE l 受講生:野間 俊宏先生)

 

 

<ケース 1 痛みの歴史より>

現病歴は、X−3年2月に左下臼歯部の部分床義歯の新製・装着を契機に左側頚部や鎖骨の痛みを伴う左側舌辺縁部のヒリヒリ感を自覚。義歯調整や咬合調整を繰り返すも症状の改善は認められなかったものの、当時の痛みは生活に支障のある程度ではなかった。

X−1年4月に右上側切歯の自発痛が出現。根尖性歯周炎の診断のもと感染根管治療開始。根管充填後に右上側切歯の違和感や打診痛を訴えていたが、X−1年7月には打診痛消失し、支台築造を行った。

築造後から右側鼻翼周囲の痛みを自覚。口腔内外への疼痛範囲の拡大を認めたため、A大学病院の麻酔科へ紹介されており、麻酔科にてプレガバリン50mg/日 処方され服薬したところ、X−1年11月には右上側切歯と舌の痛みは改善傾向ではあったが違和感は残存。

その後X年2月に同部位の疼痛再燃を認めた。

 

 

本症例疾患の診断を困難にしている要因として患者が様々な痛みを訴えていることがあげられます。

 

<診断のPOINT>

本症例では①右上側切歯②舌③右側鼻翼④咬筋側頭筋の痛みの4部位に疼痛出現が認められる。

疼痛部位が多くなると患者の訴えも多岐に渡り、各々の痛みに対する問診や診査が不十分となりやすい。

痛みが複数部位に存在する場合には、各部位毎に痛みがどのような経過をたどってきたかを整理する必要があり、そこに関連があるかどうかは、その後に考えるのであり、正しい診断のためには、まずは問診で考えられる鑑別すべき疾患を挙げることから始まり、その上で鑑別診断が必要な情報収集を行うことが重要。

 

 

本症例の背景にはおそらく歯原性と非歯原性疼痛が混在している可能性が高いと思われるが、ディスカッションでは、まずは歯原性疼痛に対する診断が適切に行われているかどうか、また追加で必要な診査があるのではないか、という意見が交わされました。

 

 

本症例にて学んだこととして、正しく診断し、そして必要とされる歯原性疼痛へのアプローチを行った後に、残存した疼痛や改善されない非歯原性疼痛に対するアプローチを行うステップが重要だと改めて考えさせられました。

 

 

また本症例では、歯原性疼痛の確実な除外がなされる前にneuropathicな痛みの側面を勘案されており、専門医療機関においてプレガバリンの処方もなされています。

ただし、本症例においてのプレガバリンの処方量は少なく、薬剤反応性を十分に評価出来ていない可能性も示唆されました。

薬物療法では副作用の出現により、処方量の調整に難渋する症例も少なくないです。

このような背景もあり患者にとっても治療者にとっても痛みの改善にはつながらず、結果的に不定愁訴とされているケースでした。

また、一般開業医から歯科心身外来に紹介があるケースでも、歯原性疾患である根尖性歯周炎のケースもあると豊福教授も示唆されました。

 

 

最後に、講師陣からはこのようなケースの場合、「一般開業医にて、歯原性と非歯原性の鑑別診断▶︎除外診断▶︎確定診断を確実につけた上で慎重に治療を進め、専門機関との連携を取っていく臨床のステップが重要。」と述べられ、最終回にふさわしい盛会となった。

A.M.

 

 

東京国際歯科 六本木 

Tokyo International Dental Clinic www.tids.jp

Anna Miura   EPSDC  

   

Hiroshi Miyashita

Specialist in Periodontology & Endodontics

certified by Odontology, University of Gothenburg in 1996

E-mail:  epsdc8f@gmail.com

 

 

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