



五月雨にはちょっと早いですが、このところ雨模様の肌寒い日が続いています。
私中川の近況ですが、宮下先生のもとで修行させて頂いてはや8ヶ月。
Perioに興味を抱いていましたが、最近Endoに目覚めています!!
診療が終わってから診療室を貸し切り、ラバーダムのかけ方から根管治療の術式に
至るまで、宮下先生のスカンジナビア流エンドを叩き込まれているところであります
当然エンドの文献も読む機会が増えました。
最近読んだ文献は、、、
Outcome of primary root canal treatment : systematic review of the literature - Part 1.
Effect of study characteristics on probability of success
Y.-L. Ng, V. Mann, S. Rahbaran , J.Lewsey & K.Gulabivala
今回は、システマティックレビューです。システマティックレビューはひとつの研究だけではなく、多くの研究を一定の基準に沿って集め総合的に結果をまとめたものです。
言い換えれば、1粒で2度以上も美味しい!!!!
すでにNgさんが良い研究を探してくれて、悪い研究に引っかかかることもない!
この研究の目的は、①初めて行った根管治療の成功率をシステマティックレビュー
で導き出すこと、②根管治療の成功率に影響を及ぼす因子は何かを特定することです。
研究の方法ですが、MedlineとCochrane databaseを用いて文献が検索されました。
そのうち、
①初めて行った根管治療の結果を調査した臨床研究であること。
②根管治療の再治療が含まれていても、初めての根管治療を区別して分析できること。
③サンプルサイズが与えられていること。
④少なくとも6ヵ月後に術後評価をしていること。
⑤臨床的症状とレントゲン上(厳密な基準:根尖透過像の消失、ゆるい基準:根尖透過像
の大きさの減少)での成功基準が設けられていること。
⑥包括的な成功率が得られているあるいはデータから算出できる。
⑦英語、ドイツ語、中国語、日本語によって書かれている文献も含む。
3人の研究者によって、これら①-⑤の基準に合致しない研究は除外され、その上で
個々の研究結果が要約されました。そして、初めて行われた根管治療の成功率が算出
され、それらに影響を及ぼす因子が吟味されました。
検索された119の文献のうちこの研究の基準を満たす1922年から2002までに出版された
63の研究が採用されました。うち6つはランダム化比較試験、7つはコホート研究、
48が後ろ向き研究です。その結果、厳格な基準の場合、初めて行った根管治療の成功率
の平均値は31%から96%になり、緩慢な基準の場合60%から100%になったのです。
研究に際して、患者と術者に関わる24の要因がさまざまな比較方法で調査されました。
術前の歯髄と根尖部の状態が結果に及ぼす影響がもっとも重点的に調査され、
診療のテクニックが及ぼす影響はあまり調査されませんでした。この成功率の差、
すなわち異質性と呼ばれますが、それを左右する因子がレントゲン画像上の診断基準に
あったとのことです。
すなわち、レントゲン上で根尖透過像が消失したことにより根管治療が成功したとみなすのか、
あるいは根尖透過像の大きさが減少したことを根管治療の成功とみなすかによって
その成功率は大きく様変わりするといったわけです。
ここで、論文のPICOですが、
P:初めて行った根管治療の患者は、
I:厳格なレントゲンの診断基準で評価した場合
C:緩慢なレントゲンの診断基準で評価した場合に比べて
O:根管治療の成功率は高いか?
ということになると考えられます
すべての研究に関わる参考文献および英語以外で書かれた研究も探しており、
研究の集め方としてはいいようです また、3人の評価者で合意の上、
評価を下している点も研究としては良いと思われます。
研究にはフォレストプロットが用いられていますが、網羅的に集められており実際、
有意差を認めました。また、Cochran Q、I2統計量が用いられ
異質性の検討も十分行われています。
ただし、研究の種類が後ろ向き研究中心に集められており、
このあたりの研究デザインが適切かどうかの意見が分かれるところだと思われます。
確かに、このタイプのシステマティックレビューの場合は必ずしも
ランダム化比較試験が最も優れているというわけではないのですが・・・
結論的には、初めて行われた根管治療の成功率を算出しているのみならず、
レントゲン上での根尖透過像の診断基準を厳密にするかどうかで
その成功率が左右されるということを示唆している点では、
大きく評価できると思います。エンドに関する論文は数多く存在しますが、
それを読む際に何をもって根管治療の成功としているかがとても重要だということです。
ゆるい基準で成功とされている文献は世の中にはたくさんあり、
厳しい基準で成功とされている研究のほうが当然、
研究の質としては評価されるわけですから・・・。
そして、この研究でとても興味深い点があります
それは、初めて行った根管治療の成功率を色々な項目で比較している表が書かれていますが、国より成功率が異なっている点です
例えば代表的な2つの国を比較してみると、、、アメリカ成功率88.1%に対して
北欧の成功率70.3%となり、北欧は成功率が低いように思えますが、「その基準」を
「厳しい北欧基準」で見た場合に88.1%だったアメリカの成功率は74.1%と
かなり低くなり、
それに対して「ゆるい基準」で見ると北欧の成功率が高くなり逆転します
ここにマジカルあり!!!!!
「ゆるい基準」か、「厳しい基準」か。 それを見分けていない場合は、
正しく研究を知る事にはならないです。
そしてっ!
北欧は「厳しい基準」に基づいた研究が多い


宮下基準に至っては根管治療後に外科的治療を行って成功している症例も、
根管治療の成功には入れないという、とても厳しい基準で日々根管治療されているのです
いやー、恐れ入りました
恐るべしスカンジナビア流エンドです・・・ これぞ、「北欧基準の歯内療法」
以上、中川がエンドの文献をひも解いてみました
これからスカンジナビア流エンドを学んでいくうえで、
臨床の手技だけではなく文献の勉強にも取り組んで行きます。