グローバル人財って、そもそも必要なのか?について

ビジネス社会に身を置いている人たちの中で、グローバルと言う言葉で分類してみると

① 既に日本だけでなく世界中で既に活躍している人たち(問題なし、そのまま頑張って下さい)。

② 日本では活躍しているが、まだ世界で活躍出来ていない、若しくは、そのチャンスに恵まれていない人たち(この人たちを如何に世界で戦えるビジネス人材にするかが課題)。

③ 残念ながら日本でも十分に実力を発揮して活躍できていない人たち(残念ながら、日本で活躍できなければ、世界で戦うのはあまりにも負担が大きすぎるので、厳しいかな

私の経験ですが、以前、日本企業海外営業部長をしていた時、国内営業責任者の某常務が “池島部長、悪いけど XXX君を海外で引き受けてくれんかなあ”と “結構頻繁” に言われました。その度に “常務、引き受けるってどういう事ですか?”。その返事が “いやー、あのな、イマイチパッとせんのでYYY所長がどこかで引き取ってくれって言っているんや”、、、と、これはトンデモナイ話です。グローバルビジネスが特別だとは言いませんが、国内ビジネスで求められる内容に加え異文化への対応、自社の根っこにある理念は曲げない信念、タフな交渉、、などなど厳しい環境に浸ることになります。これでは、本人の実力以上の負担を掛けて辞めるように仕向ける以外の何物でもないでしょう。もちろん、その人の個性として、国内ビジネスには向かないが、グローバルビジネスに向いている人は稀に居ますので、その場合は別です。

これから考えるとグローバル市場で勝負をしようと考えている企業が企業力を上げる為にはグローバル人財力アップの対象を “日本では活躍しているが、まだ世界で活躍出来ていない人たち”と考えるのが現実的であり、全社員に “明日から英語を使ってグローバルビジネスで勝負だ!” と言えるのは、ごく限られた企業に限定して考えた方が良いでしょう。

昨今、どちらの企業でもグローバル化!、グローバル展開!言うお話を伺いますが既に今から40年以上前、バブル期以前に日本の基盤を作った時代には、片言の英語だけで世界に挑んでいった人たちが多数居られました想像するに、その中で多くの人たちは派遣時には英語が流暢では無かったのではないでしょうか。

その状況で、どうしてその困難に立ち向かう事が出来たのか? 

“英語以外の強みと自分がこの会社を背負って立つという気概”を持っておられたのではないでしょうか。

それに比べ、最近ではその部分より、英語だけに頼り過ぎているのではないか?と感じる時があります。

日本国内で多くの日本語が流暢な外国人の方々が活躍されています。以前、日本企業社員で日本語がかなり話せる某外国人(勿論、アクセントは微妙に違いますが、実用上全く問題ないレベルです。)と話す機会がありましたが、その彼が、“日本人で、2世でも無いのにも関わらずほぼ完璧な英語を話す人が居ますが心配です。その英語を身に付ける為にどれだけの時間を使ったのか?逆に言えば、その時間を使ったために日本人として学ぶべき事を学ぶ時間を犠牲にしてしまったのではないでしょうか?”と言っていました。彼自身、日本語習得に苦労した(多大の努力と時間)にも関わらず、ご自身の現時点での日本語レベルを考え、その様なコメントが出たのでしょう。

私も、自分で行っている研修でお話していますが、完璧な英語を求める必要性は大きくはないと考えています。アメリカ滞在中、多くの1世(子供の時にアメリカに来て、そのまま滞在、高校から、大学からなど)の方々とお会いしましたが、彼ら、彼女たちですら、アメリカに来た時の年齢で英語力にはっきりと差が出ます。特に発音ですね。大学からでは既に遅く発音はやはり日本人です。私もアメリカ滞在が3-4年になり、少し英語が話せるようになると鼻が高くなってきます。”よーし、アメリカ人並みの英語を目指すぞ!”なんて思いましたが、既に30台になっており10年アメリカに居ても無理でした。アメリカ人の中に入り、会議、シンポジウムなどで何回もプレゼンをしましたが、彼ら英語を母国語とする人たちとの差は歴然でした、、、残念ながら。

そもそも、現在のグローバルビジネスで英語を母国語とする人たちとのビジネスより、お互い外国語として勉強した人たちとのビジネスの方が多いでしょう。

一方、英語が出来ればグローバルビジネスを出来るのでしょうか?自分の経験上、ネガティブな感覚です。以前、部下の中に小学生から高校までアメリカ、大学が東京でも1,2を争う難関私立大学の英語専攻を卒業という部下が居ました。が、残念な事に彼女は日本語での業務指示内容を十分に理解出来ず、仕事でミスを連発していました。確かに英語は出来たのですが英語そのものが学生として勉強した英語であり、論理的に考えるという部分は苦手な様で指示内容のレベルが上がると全く付いて来れず、、。 彼女に限らず、アメリカで出会った日系2世の人たちの多くから、”何故か大人しい、覇気がない、弱いなど頼りない”という印象を受けた人が多かった印象を持っています。これは、よく言われるアイデンティーの問題かも知れません。

英語はあくまで道具です。勿論、全く話せない、苦手だからやりたくないという言い訳は論外であり、グローバルでビジネスを行う以上必要なツールです。が、英語(その他外国語含め)だけに頼る、英語が出来ればOKというのは論点がずれていると考えています。まずは、きっちり整理された日本語を使える事が出来るという日本人としての基本が無くては通用しないでしょう。ご自身の得意分野(仕事だけに限らず)を持たず、日本の歴史、文化を知らず、日本の素晴らしさを語れない者は、海外でも信用されないでしょう。

海外で出会った多くのエグゼクティブの方々は、自国に誇りを持ち、自国の歴史、文化を良く知っておられました。

今の日本は住み心地良い国であるため(勿論、改善すべき点もありますので、ご意見は多々あるかと思います。が、他国と比べて治安は圧倒的に良いです。)、素晴らしさが見えにくいという事実もあります。その為にも、若い内から海外に出て、事実を見て、自分の中で比較し、事実を客観的に認識できる機会が必要でしょう。

*ビジネスの中で発生する非連続な無理、矛盾を乗り越えそれらを如何に繋げて、商売として丸ごと動かせる人財がグローバルリーダー 

*それを出来る人財かどうかの見極めは、修羅場に放り込み、その中で見極めるしかない

しかしながら、しっかりとした準備なく乗り込むと、その修羅場レベルが更に上がります。是非とも準備をしっかりと。