毎日


出勤時に通る公園がある


せせらぎ公園という


素敵な場所である



昨年の今頃


いつもの様に出勤の為、その公園を通った


公園の中にある小さなグランドに


腰の曲がった白髪の年老いた男性が


1人で立っていた


左手にはグローブが


右手には真新しいボールが握られていた



壁面から5メートル離れた場所から


彼が、そのボールを投げた


ポン、ポン、ポン・・・


壁にも届かず、3メートルあたりで転がった



腰が曲がり、青白い顔をした


その年老いた男性は


何度か、そのボールを拾い


投げていた


だけど


何度投げても、5メートル先の壁には


届かない



ひどく寂しく


ひどく切ない


ひどく悲しい光景だった


定年退職し、何もする事がなく


時間を潰してるのだろうか


そう思っていた



しかし


その年老いた男性は


来る日も、来る日も


毎朝同じ時間にボールを投げていた



凍えるような冬の朝も


雪が降る日も


春が来て、雨の日も


茹だるような暑さの朝も


秋が来て、紅葉になり


葉が落ち


また冬が来ても


毎朝、ボールを投げていた


来る日も、来る日もである



僕は毎朝、彼を見るのが


日課になった



ボールの数が


2球、3球と、少しずつ増えていく



投げる距離は


3メートルから、5メートルと


距離が増していく



姿勢が少しずつ変化する


日焼けをし、顔つきが変わっていく



名前も知らない彼の進化を


毎日見る事が、楽しみだった


彼がいない朝は


寂しくもさえ感じた



そして


今月の彼は


颯爽とグランドに自転車で駆け付け


片手にグロープとバケツを持って


大股で公園に入ってくる


バケツには、沢山のボールが入っている


10メートル手前から


力強いボールを投げる


シュっと音がする


全球、壁面のネットに当たる



その日焼けした顔で


真っすぐ立つ彼の姿は


どう見ても50代前半にしか見えない



毎日、彼を見てきた僕には


1年前の彼との違いに、驚きを隠せない


色白で腰の曲がった、年老いた男性の姿は


もうそこには微塵もない




毎日、毎日の積み重ねる努力で


人はこんなにも変われるのだという事を


目の当たりにした



成長、進化するという事は


全て自分の決断と断行なんだと


改めて気付かされた




この名前も知らない男性に


感謝している


本当にありがとうと言いたい



彼の次なる挑戦を見てみたい