今年1月24日にネット上でISIS〈イスラム国〉による湯川遥菜氏の殺害処刑の一報が知らされた時、インターネット上では様々な憎しみや罵詈雑言が各所で飛び交い、2004年と同じ人質個人への「自己責任論」も然り、はたまた穏健なイスラム教徒全体へのヘイトスピーチも噴出しました。そこでは日本に住む「イスラム土人(差別用語)」を皆殺しにしろだとか、なぜだか同時にコリアンへの暴言もセットであてられイスラム土人朝鮮土人は滅びるべき!」と次々とネット右翼による蛮行が繰り返されております。

またほかでは『ISISクソコラ画像グランプリ』だのという、閉鎖しきった内輪の痛々しい「アソビ」がなされ、まったく面白みの欠片もない寒い不謹慎な画像が溢れかえっております。人の命を何とも思わない、バーチャルな空間で心や精神がとことん腐りきった連中の行動、それは最近日本のネット界隈に渦巻く『嘲笑主義』(「-まとめサイトやネット民の「嘲笑至上主義」- 」)とも重なって、これ自体、世間における一人一人の小さき声が無視に無視をされ、ある種そうした絶望から逃避する上で匿名ネット民によって構築された「冷笑主義」、そうしたなけなしの歪んだニヒリズム的感覚による「暴走行為」の恍惚感が、世知辛い社会と連動してどんどんと頽廃の一途を辿っております。


今回の本題としては、歴史作家の伊藤浩士先生のブログで知った湯川氏個人への疑問から始まります。

湯川遥菜氏の資金源と湯川氏の死によって噴き出してきた議論。 』記事の参考引用にて、殺害された湯川氏自身は、生前にミリタリーショップの経営失敗により多額の負債を抱えており、父親に弁済してもらうような状態だったとされています。

設立した民間軍事会社は夢想のようなもので、契約が成って売り上げが出るような状態でなかったことも明らかです。湯川氏の会社のブログを見ると、社員募集の広告は出ていましたが具体的な内容がなく、社員を実際に雇用していたとは思えず、社員のいない軍事会社には誰も発注はしません。会社の売り上げはゼロだったでしょう。なのに会社の経営や外国への渡航費だったり、かかる多額の費用を一体誰が支払っていたのか。。。

第一、多額の負債を抱えている人が会社設立の資本金をどうやって捻出したのか、さらに何度もシリアに行き、頼まれて医薬品なども持って行ったようですが、その費用がどこから出たのか、全く不明としかいいようがありません。


事実そのような行為を重ねているうちに湯川氏はイスラム国に拘束され、続けて後藤氏も去年の10月頃には人質となって家族宛に10~20億円のお金を要求されました。そして今回の安倍氏のシーシ大統領(エジプト)やネタニヤフ首相(イスラエル)との『対イスラム国』支援の3000億円の資金提供が引き金となり、人質のうち湯川氏が殺されるという最悪の事態となりました。

しかしながら、 極右勢力のブログには、「イスラム」国のみならず、全てのイスラム信者を蔑み憎み、中国や韓国と並ぶ日本の敵と決めつける議論が溢れ、憲法が悪いから邦人が人質になっても日本軍が助けに行くこともできない、9条信者は憲法を書いたものを持って「イスラム」国に行き、人質を取り返して来い、などといった一方的な非難が次々と書き込まれています。

手前らの陣営である、安倍氏自身の不手際のせいでこうなったにも関わらず、極めて傲慢かつ厚顔無恥なその対応は万死に値します。無論これらの安倍氏擁護の風潮は至るところで見られ、青山繁晴を筆頭としたチーム世耕やネトウヨなど集団が、常に世論を捏造しながらテロを口実とした『集団的自衛権』行使に躍起なようです。

他にも政府系機関のシンクタンクの研究員もそうです。

『中東調査会 上席研究員』の 高岡豊氏や、『日本エネルギー経済研究所・常務理事・中東研究センター長』の 田中浩一郎氏、『公益財団法人公共政策調査会第1研究室長』の板橋功氏などは、荻上チキさんのラジオ番組出演の際に、口を揃えて「人質事件はいずれ起こる必然だった」「安倍首相の中東訪問で人質事件が起きたと言う人がいるが、それは間違いだ」と述べる始末です。

こういう「公益」とか「エネルギー経済」という政府と繋がりが深い『研究所』の人々は、異口同音に安倍氏を擁護する風潮が高いです。また彼らの性質としては、こういう現場の状況を知らず安全なところでの「座学主義者」の意見は、争点をぼかし「データ」による論述などを提示して達者な口述を使って多くの人々を騙そうと躍起ですが、いかんせん政府擁護一辺倒なのだから当てにはなりません。

1月26日の政府発表(安倍氏構想)では、戦後70年目において『村山談話』を否定し、こまごましいという理由に「植民地支配と侵略」を削除、そして28日においては「後方支援」を称してアメリカ軍の対テロ戦争の空爆を手伝い、テロリズム陣営から「日本は明確な敵」とされてなし崩し的に状況が悪化すれば、今度はそれを口実に邦人救出や警護の際は、自衛隊を持ち出して武力も辞さない構えに持ち込もうとしています。


〈参考資料〉