今回はその1に引き続き、帝国の「傲慢」編です。





映画館「脅しに負けぬ」


「正恩氏暗殺」全米で上映へ



北朝鮮の犯行とされるサイバー攻撃の引き金になり、米国で公開中止が決まった米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)の映画が23日、一転して上映されることになった。「言論の自由を守ろう」と独立系の映画館などが声を上げ、上映場所は200館以上に広がった。




公開求める活動、後押し


米メディアによると、23日、最初にコメディー映画「The Interview(ジ・インタビュー)」の公開を明らかにしたのは、テキサス州とジョージア州の独立系映画館だった。


公開が決まると、テキサス州の映画館では、ネットで前売り券を購入しようとする人たちで一時サイトがつながりにくい状態に。初日の25日のネット販売分は売り切れた館もある。映画館のサイトには「見に行けないが、支持の意味を込めてチケットを買いたい」などの書き込みもされた。


映画はもともと、米国の大手映画館チェーンを中心にクリスマス休暇に合わせて25日に公開される予定だった。しかし、SPEが17日に公開中止を決めると、「表現の自由が脅かされた」「テロに屈した」などの懸念が広がった。



約250の独立系映画館でつくる協会は、映画の公開を求めて署名運動を開始。ニューヨーク市内の劇場も「言論の自由を脅しから守る」として、役者が映画の台本を朗読する会を無料で企画するなど、何らかの形で公開すべきだという声が高まっていた。


こうした動きにSPEは23日、一転して上映を認め、半日の間に同調する映画館は全米に広がった。



米CNNによると、米東部時間23日夜(日本時間24日午前)時点で、200ヶ所以上の映画館が公開を決め、最終的には300ヶ所に上る可能性もあるという。大半は当初の予定通り、25日から上映する。


米ウォールストリート・ジャーナル紙によると、北米には映画館がスクリーン数で4万4千あり、約半分を大手映画館チェーンの上位5社が占める。独立系映画館の影響力は決して大きくないが、協会は「我々は映画業界の検閲や暴力的な脅しから守る岐路にある」と表明している。


ハッカー集団は映画館へのテロ攻撃を表明したもの、米国土安全保障省はその可能性を否定している。


米メディアによると、上映が決まった映画館近辺の警察は「状況を見守っている」など、特別な警備体制をしくかはまだ不明だ。映画は、北朝鮮の金正恩第一書記をインタビューすることになった米テレビの制作者らが、米中央情報局(CIA)から暗殺を依頼される内容で、コメディー調に描かれている。


SPEは11月下旬から大規模なサイバー攻撃にさらされたが、米政府は、北朝鮮が国としてサイバー攻撃を行ったとして非難していた。(サンフランシスコ=宮地ゆう)




朝日新聞 2014年(平成26年) 12月25日 木曜日 国際 第11面(13版)




記事にもある通り、全米300ヶ所の独立系シアターにて公開のようですが、日本メディアや世間が騒ぐほどのものではないと思います。全国44000中ある映画館の中で公開は300という、40/1よりもはるかに下回るもので、建前上『表現の自由を守る』としておりますが、実際はハッキング騒動で世界での宣伝効果を狙ったしがない零細映画館のポイント稼ぎな気もします。また引用の新聞に出てきた「全米」という単語も、アメリカ各地にある小さな映画館の「点と点」の結びに過ぎません。


また公開初日で1億2000万円(100万$)に達したとされますが、『世界一の映画消費大国』からすれば別段驚くべきことではなく、むしろかなり小さいものだと考えるべきでしょう。興行収入が軽く1兆円を超える市場だけに、日本で2010年に公開された『アバター』([米]2009年)は世界一の7.605億$(米国内)を超える化物作品です。


ここに『全米映画 歴代興行収入』TOP200を並べたページがありますが、1位のアバターから200位の『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』([米]2011年)は興行収入1.767億$(米国内)の王台で、『The Interview』が米粒にも満たない作品なのかがわかります。


http://www.tsp21.com/movie/usmoviealltime.html


事実映画の内容も芳しくなく、名作と言えるには程遠い内容です。


日本経済新聞の『春秋』でも「▼金正恩・北朝鮮第1書記暗殺を扱った米のコメディー映画『ザ・インタビュー』は、残念ながら「独裁者」のような傑作ではなさそうだ。が、表現の自由は名作か駄作かを選ばない」(2014.12.26)とし、本日、朝日新聞の『天声人語』でも「映画は傑作とは言い難いようだが、『表現の自由』の下に佳作も愚作もない」(2014.12.28)とフォローに徹する始末で、お世辞にも垢抜けた内容とはいえないものでした。