〈動画説明〉

のりこえねっと(http://www.norikoenet.org/)企画、デモクラTV(http://dmcr.tv/)
協力のもと、2014年10月25日土曜日、19時から22時まで3時間、生放送で
放送した番組のアーカイブ。

26日の福島県知事選投票日、福島から沖縄へ。
そして来春の統一地方選挙へ。
いま「ヘイト」と呼ばれる「いやな雰囲気」が広がっていると言われています。
なぜそれが「いやな雰囲気」なのか。
安倍政権と関わりがあるというのは何のことなのか。
あまり知られていないことから、基本的なことまで、総ざらいして、
わかりやすく、お伝えしていきたいと思います。


<司会>
辛淑玉 (第一部、第二部)
北原みのり (第三部、第四部)


<出演>
野間易通
石野雅之
木野トシキ
近藤昭一
鈴木耕
佐藤圭
神原元
石川大我
マエキタミヤコ
池田香代子




今回の記事は、『のりこえねっと』と『デモクラTV』の共催による安倍内閣におけるヘイトの現状を事細かに分析し、「ヘイトって何?」「ヘイトスピーチはどんなもの?」という基本的な議題からはじまって、そして安倍政権とどのような関わりがあるのかということを前半後半にわけて議論し、全部で4部構成(3時間)というたいへん大きな番組となりました。


そして今日は前半部分の1部と2部の構成(その1)から入って参りたいと思います。



まずもって、『ヘイトスピーチ』とは何かというものを改めて定義しますと、


■ヘイトスピーチ(Hate Speech)‐差別扇動表現


~人種・皮膚の色・国籍・民族など、ある属性を有する集団に対して貶めたり暴力や差別行為を扇動したりする侮辱的表現を行うこと。


そしてこれらのものは、本人の自由意思で「変更することのできない」ものであり、もしくは非常に困難な性質であって、こうした属性を差別の対象として侮辱やその扇動を行うことを「ヘイトスピーチ」と呼びます。



それはたとえば単なる「不快語」とは違って、動画中の例に「辛さんブス」という表現はヘイトスピーチには該当しません。無論こういう表現は決してしてはならないことは周知の事実ですが、ヘイトスピーチの意味は何度も提示するように、「(本人の努力では)変更しようのない属性や性質」を侮辱し差別することですから、たとえば欧米における東洋系アジア人士を揶揄する「釣り目表現」は、明確な差別意識にもとづくヘイトスピーチです。この被差別対象はもっぱら中国人や朝鮮人(韓国人)、日本人が該当します。


そしてヘイトスピーチ自体は、「差別してきた歴史」を体現するものであって、今突然現れたものではなく民族的な差別のバックボーンが根強く存在して、そうした前提のもとで行われます。


以下でもって、一般的な悪口とは違うのであり、英語の「ヘイトスピーチ(ヘイトクライム)」は「憎悪表現(憎悪犯罪)」という形で訳されて誤解を招きやすいですが、前述の「民族的な差別」による暴言やその行動がヘイトスピーチの範疇に含まれます。だから普通の犯罪や殺人事件などにも「憎悪」が含まれますが、ここでの「憎悪」とヘイトスピーチ(ヘイトクライム)からくる「憎悪」は根本的に違うのです。



ここでそれをまとめますと、



‐悪口≠ヘイトスピーチ(ヘイトクライム)


・ヘイトスピーチ(ヘイトクライム)は多数派(マジョリティ)から少数派(マイノリティ)向く差別的偏見や人種的偏見・宗教的偏見・身体および性的偏見というありとあらゆるものがあり、それは前に記した「不均衡なる関係」のもとに生まれる差別扇動行為

・好き嫌いによる悪口や喧嘩言葉は「対等な関係」のもとにある



という結論がでて、これらの定義をもとに在特会やネトウヨらの一連の行為はすべて、マイノリティ・少数者に対する『明確な差別意図』があって発揮される「憎悪」なのであり、これは「ヘイトスピーチ」(差別的扇動)や「ヘイトクライム」(差別的犯罪)に該当します。



在特会らの街宣デモを見ていると、彼らの発している言葉は単なる下品な悪口言葉とは違う、「相手の人間性を否定しまくる」という極めて醜悪なものであり、それらが彼らが発する言葉や物言い全てにつまっていて、しかもそれを「楽しそうに」行うという異常な事態に誰しもが衝撃を受けるのです。


どうやら彼らは、怒りや悔しさというよりも『人を差別することがなにより楽しい』のであり、それ自体に快楽を覚えてしまったがゆえに、それこそ日夜問わず毎週のようにあのようなおぞましいヘイトスピーチを繰り返し行い、そうした問題を抱える多くの人間があつまって差別を繰り返してきました。



そんな中、橋本大阪市長と在特会・会長の桜井(高田)誠との「面談」が行われ、賛否両論はあるものの、木野さんはあれを大いに評価してその最大のポイントは差別主義者側の論を「一切封じて」耳を貸さなかったこと、そして桜井(高田)誠を明確に『差別主義者』と断定したことにあります。私もこれには共感するものがあり、改めて差別主義者の言い分なんて聞いてはいけない、そもそも差別は思想信条問わず絶対にダメなんだと思いました。



また、そんな差別主義者である桜井(高田)誠が率いる在特会という集団は何なのか、一般の方々は「在特会」という名前だけは聞いたことがあるけど、実際のところよくわからないのが実情だと思います。そもそも『在特会』というのは正式名称『在日特権を許さない市民の会』という「極右系市民グループ」であり公称会員数は1万5000人、実際はワンクリックだけで入会可能で現実のデモには参加しない幽霊会員も多数いる砂上の楼閣に近い団体でもありますが、ニコニコ動画にも公式チャンネルを持っていて、日夜ネットで差別的デマを垂れ流す悪名高い集団です。

また彼らの主張する『在日特権』というものは、「日本に住む在日コリアンは『さまざまな優遇措置』があって、日本が大嫌いなくせにのうのうと暮らしていることが許せない」ところからはじまって設立された団体です。しかし実際のところ『在日特権』というものは、とても「特権」とは言い難いもので、それがどうやって日本人よりも優越的な権利なのか、会が出来て数年後にその言い分は破綻して、今度は「ほかの外国人よりも優越」というふうに針小棒大に話を捻じ曲げて現在に至りますが、それが植民地支配から生み出された日本が生み出した「被害者」であることから与えられた『なけなしの権利』に過ぎず、戦後から長い間まったくの「無権利状態」が続いた挙句、在日コリアンや協力する日本人の方々の血のにじむような権利拡大の産物が、『特別永住資格』なのです。


しかしながら、それも5年に一度の更新手続きが必要で、行政に一括管理されてその承認を怠れば「強制送還」という極めて暴圧な処置が下されます。


そんなものが「特権」と言い難いのは、誰がみても明らかなことです。


結果、在特会の「会の名前」自体がヘイトスピーチであり、まったくの事実無根のデマゴーグであります。


そして在特会自体が設立されたのは2007年の「第一次安倍内閣」発足の年と重なり、最初は勉強会やロビー活動が主であり、群馬県の朝鮮人戦争被害者の慰霊碑の撤去を求めたり、役所に行って圧力をかけるスタンスでしたが、2008年に入って様相は一変して、埼玉県蕨市に住んでいた在日フィリピン人のカルデロン一家の案件があったことを皮切りに、街中で酷いヘイトスピーチを繰り返すようになりました。その詳細を示していくと、『不法滞在』を理由に在日フィリピン人のカルデロン夫妻は強制送還の処分を受け、娘さんである在日フィリピン人の当時女子中学生のかたは「特別在留資格」を得るかたちで日本にとどまることになりましたが、在特会らはその娘さんが通われる中学校や自宅近くまでに押しかけて、何百人の群勢で「出て行け!」などとむごたらしい罵詈雑言で喚き散らし、ヘイトスピーチを行いました。


そしてこの在特会の言い分となった『不法滞在』(未資格滞在)というものも、非常に多くの方がマイナスなイメージを持ちがちですが、日本政府が根本的に国家としての法整備を怠り、たとえばアメリカなら10年間のスパンでその明確な在留資格を付与するという規格を設けておりますし、日本の法務省の場合はそもそものルールがまったく存在しない、たとえば在日コリアンが日本国籍を取得するにおいても、基本的なルールが存在しないから、何年にも渡る膨大な書類を提出したとしても、その時々の「裁量」で当局側の気持ちひとつで決まり、身辺や税金の納付および素行上の調査だったり、ありとあらゆる面で調べられた上で最終的な判断は役所の判断になります。


これを「国家上の安全」と称する人間もいると思いますが、先進国の間からしてもこれほどまでに無法状態での身体検査は異様であり、日本が根本的に後進的で閉鎖的な移民排斥国であることが否めない事実なのです。



本来ならば、日本で生まれ日本で育った外国人の子どもは、その国で生きる資格を与えられることが国際法的にも確立していますが、たまたまカルデロン一家の案件がニュースで大きく報じられて、ご両親は自らの出自のある国に送り返されて、残された女子中学生の方は日本語しかできなくて、日本での友達がいるという理由からこの地に残る選択をされたのですが、そこに『在日特権を許さない』と称する集団が現れて、中学校や自宅近辺で大の男どもが寄って集って酷いヘイトスピーチをする惨状に、日本の保守や右翼の層がまっさきに衝撃を受けました。

そして、そこの幾人の方が最初に『ヘイトスピーチに反対する会(へ会)』やシバキ隊、C.R.A.Cへと合流していくのです。