ボ「今日はこちらの廃墟で漫才やらせていただきます」

 

ツ「失礼だろ。立派なホールで、お客さんもたくさん来てくれて、ありがたいですね」

 

ボ「え?見えるの?」

 

ツ「なにが?」

 

ボ「お客さんが。お前も見える子ちゃんなのか」

 

ツ「お客さんを幽霊あつかいするなよ。みなさんご存命ですよ。」

 

ボ「ちゃんとチケット買ってくれるなんて、律儀な幽霊だと思ってました」

 

ツ「幽霊じゃないからね。ちゃんとチケット買ってくれますよ」

 

ボ「こんなね、幽霊漫才師を見に」

 

ツ「幽霊部員みたいに言うなよ。出番ほとんどないけど」

 

ボ「悲しくて、ここで地縛霊になっちゃうぞ!」

 

ツ「やめなさいよ。これから売れるかもしれないでしょ」

 

ボ「無理だよ。俺なんて、霊感ある人にしか見えないんだから」

 

ツ「何を言い出した?」

 

ボ「今日、劇場に入るときに挨拶されなかったし」

 

ツ「それはお前が影薄いからだよ」

 

ボ「劇場に来るまでの間もファンから1人も声かけられなかったし」

 

ツ「それは俺らの知名度が低いからだよ。って言わせんなよ」

 

ボ「楽屋の場所聞いたら、機材運ぶように頼まれたし」

 

ツ「スタッフだと思われたな。オーラなさすぎるんだよ。」

 

ボ「だから、俺、もう幽霊になったんだと思って」

 

ツ「大丈夫。ちゃんと見えてるし、こうやって触れられるから」

 

ボ「見えない何かに腕を掴まれた!」

 

ツ「お前が俺を見えてないのかよ」