さよなら、カエル | Half-A-Room

さよなら、カエル

降り立った途端
すんとした気持ちになった

酷く疲れていた
ひたすら眠りたかった

帰るところは
帰るところでしかない

ここを故郷なんて呼べるんだろうか
ただ私は帰ってきたの
また帰ってきたの


「来てくれて涙ちょちょ切れそうだよ」

何方もから風が吹く
一人暮らしの部屋4つぶんの部屋
静かな部屋
静かな暮らし
当たり前みたいに
カエルの鳴き声がしていた

「何年ぶりだよ!」
と言い合って結局何年ぶりかわからない
変わらず
仕事に一生懸命な彼女と
ふわふわな私

一人ごちるように彼女がつぶやく
「きょうは仕事して、
焼肉食べて、
布団で眠れる
しあわせ」

わたしのしあわせって何だろう
彼女の浸けた梅酒を
一人で飲む
彼女が寝てしまったあと
キッチンの床に寝転んでみた
窓からつめたい風が吹き込む
ここには何でもあるような気がした

わたしはなにを
欲しがっていたんだろう

忘れてしまいそうだ

忘れてしまった


起きたらトースターのチン という音がして
良い匂いがしていた

この家は
もうすぐ引き払うらしい