間違えましたmamushiです!


(以下は全てオタクによる怪文書です。また決して広告案件ではありません。)

『初音ミク「マジカルミライ 2021」』開催決定おめでとうございます!!
さて何故突然こんな事を宣ったかというと、私mamushiは昨年末『初音ミク「マジカルミライ 2020」in TOKYO』に行っていたのでありました。
企画展がどんな感じかは知っていたし、ライブも動画では見たことがありました。
あれでしょ、ステージ上にミクがリアルタイムで映写されるんだよね。バンドは生なんだよな、同期大変そうだなー。
まあ正直にいって舐めていた訳です。微力ながら関わった事のある界隈というのもあるし。
でもいま僕は忘れないうちに何か残さないとと思って筆をとっています。
そしておそらくネット上で何遍も語り尽くされたであろう文章が生まれようとしている……

いまや説明不要なくらい有名なので詳細は省きますが、初音ミクとは音声合成ソフトウェア「VOCALOID」シリーズのボーカル音源、またはそのパッケージキャラクターです。
2007年に発売されるとネット上で一大ムーブメントとなり、ユーザー達によってキャラクターとしての人格が形成されました。
「マジカルミライ」はそんな初音ミクとその関連キャラクターの3DCGによるライブ+企画展によるイベントです。
そして僕はそのライブで不覚にも感動してしまった。なんならちょっと泣いた。やばい、傍から見なくても完全に過激なオタクじゃん。


(ライブ会場内撮影禁止だったので企画展の写真でお送りします。)

いや、本当に面白かったんだって。
僕は前回の記事で「ライブとは体験の共有であり、現代では生ライブは価値を失いつつある」と言いました。
マジカルミライはその課題をクリアできていたかと言うと、微妙なラインではありますが……
まだまだ未来を楽観視しても良いかもしれないと思わせてくれました。

まず「3DCGによって、現実のステージ上にミクがリアルタイム投影される」という体験が圧倒的に生ライブの奇跡性を担保しています。
いやいや、それだったら人間のライブ〜動画配信の関係性と変わらないじゃないか。生の人間だってライブ会場でしか見られないぞ。
しかし初音ミクはネット上に偏在している人格であり、現実の局所に存在できる人間とは訳が違います。彼女は無限に等しい数のコンテンツの中に居る方が普段の状態であり、ライブの為に「バーチャルな存在を現実のいまここに召喚している」という逆転が起こっています。
これがすごい。
実際に観てみないと説明しづらいのですが(そしてこの説明しづらさこそが生で観る価値そのものなのですが)、この召喚された3DはPCやスマホの画面を通して観測してしまっては、意味を持たないのです。
二次元の世界にしか居ないはずの存在が、いま、三次元の世界に現れているのが奇跡なのであって、液晶の上の二次元で再生された時点でいつものMVと変わらなくなってしまいます。
体験したければ行くしかない。


(ライブと円盤のイラストを手掛けられたのは藤ちょこ先生です。かわいい。)

そしてこれはいわゆる"老害"の戯言ですが……
「初音ミクというキャラクター」によるライブである点。
当初、ミク(とVOCALOID達)は新しい技術への衝撃と共に迎えられました。そこには新技術に対する未来への希望のようなものも多分に含まれていたと思います。キャラクターそのものをフィーチャーした楽曲も多く、動画にはこぞって彼ら彼女らのイラストがつけられました。

時代が下るにつれ、同様のソフト群も数多く作られ「ボカロ」はひとつの音楽ジャンルになりました。楽曲はキャラクターから切り離され自由になり、MVに必ずしもシンガーを登場させる必要はなくなりました。
クリエイターはボカロPとは呼ばれなくなり、メジャーシーンへと進出する人も出てきます。バブルは終わり、本来の作曲ツールとしての役割に回帰していったと言えるでしょう。

補足:事実、システムを提供しているYAMAHAは最新の「VOCALOID5」において、特定のキャラクター性を排除したボーカルサンプル生成ソフトへと舵を切っています。
初音ミクのライセンスを持つクリプトンはこれに対し、独自開発のエンジンを使用する「初音ミクNT」を発表しました。初音ミクはボーカロイドの立役者でありながら、VOCALOIDではなくなりました。


そんな現状でキャラクターをメインに据えたライブを行う訳です。
しかもセットリストには初音ミク本人が歌う為の曲が必ず入ってきます。
これは異常です。
かつてを懐古するオタク達が、終わりゆくミクの幻を崇める「集団ごっこ遊び」をしていると言っても過言ではありません(事実ミクは現実世界には存在していない!)。
しかしそこでは、かつての僕に衝撃を与えたときの初音ミクが持っていたモノ、そして成人した僕が忘れていたモノ――すなわち「バーチャルな主体の萌芽」と「未来への予感」――が、現実に吸収されまいと、手を取り合って抵抗していました。


(メインビジュアルの立体化展示。かわいい。)

僕は初音ミクが好きです。
間違いなく僕の青春時代はインターネットと同人音楽で彩られていました。
それは思春期の例にもれず自己形成に悩んでいた当時の僕にとって、救いの手を差し伸べる天使のように見えました。
これから先、ミクというコンテンツがさらなる進化を遂げるのか、それとも次へとバトンを渡し力尽きるのか、僭越ながら、見届けたいと思っています。