文藝春秋
作家村上春樹が、初めて自分自身について真正面から綴った “メモワール”だ。(村上春樹自身ではエッセイというタイトルでは無理があり、“メモワール” のようなもの、と考えているらしい)
専業作家を開始したときから走りはじめ、フルマラソン、100キロ・マラソン、トライアスロンと今でも走り続けている。はじめは体調維持のためだったランニングが生活の一部になっていったとのこと。走ることを通じて村上春樹の心の中が見えてくる。走っているあいだは自分だけの沈黙の時間を確保でき、精神衛生上重要な意味をもつ、と言っている。 走るという行為は、肉体を鍛えるだけではなく、精神も良い状態にしてくれるのだ。自分も走り始めてからまだ7年ほどだが、心身ともにいい状態が続いていて、始めて良かったと思う。
第一章の、「誰にミック・ジャガーを笑うことができるだろう?」では、若かった自分が現在の自分の年齢を想像できなかったことについて、若き日のミック・ジャガーの言葉を引用している。
“「45歳になって『サティスファクション』を歌っているくらいなら、死んだ方がましだ」と豪語した。しかし実際には60歳過ぎた今でもまだ『サティスファクション』を歌い続けている。”
人間はそんなに簡単に根底の部分は変えられないものだし、むしろそれが自然であろう。
走りながら聴く音楽についても書かれている。ストーンズの『ベガーズ・バンケット』、クラプトンの『レプタイム』等、走るリズムに合うものを聴いている。彼の小説で音楽は重要なアイテムになっているだけに、こうゆう部分も興味深い。ちなみに、2005年時点ではiPod ではなく、MDのほうが好みで聴いていると書かれている。こんなこだわりも面白い。今でもMDで聴いて走っているのだろうか。

