「おはよう」
返事など返らぬ部屋の中
少年は今日も一人、真っ暗な部屋の中で目を覚ます。
窓の外は黒のまま
カーテンを開けても閉めても変わらない
少年は今日も一人、
ストーブに火をつけパンを齧る。
「雨も無い、星も無い、太陽さえも昇らないこの世界で
僕はこれからどれくらいこの時間を過ごして行くのだろう。」
まるで心臓の代わりに硬くて黒い石のようなものが左胸辺りを転がってる気分で
それでもパンの味は分かるし
水やスープも喉を通る
ただ、ボンヤリとする時間が長くなるだけ。
今日も終わらない夜に沈んで行くのかと
白紙のノートを見つめていたその時
「しと…しと…」
と、屋根に何か水滴がぶつかるような音がした
少年がいつしか聞いたことのあるような、ないような
記憶が辿り着かないその音が、やっぱり屋根を叩いている
「しと…しと…しと…」
意味もなく閉めきったカーテンを開けると、それは雪のような、星のような
ただただ柔らかい、白光が舞っていました
その向こうには、見たことも無いような大きな光
真ん丸く輝く大きな灯り
「こんなことってあるんだ!」
少年はたまらず飛び出した
震える足で駆け出した
しとしと鳴る音の導く方へ
見たことも無い希望の光へ
しかしどれほど時間をかけて走れど
灯りは少しも近づかないばかりか
だんだん白光も舞うのをやめて
やがて辺りは真っ暗闇
「何でだよ!こんなバカな話ってないよ!」
いくら怒って叫んでも
声は広がり小さくなるだけ
辿った道すら見えなくて
少年はほんの少し泣いたけれど
やがてすっくと立ち上がり
見えない闇のその先を睨み付けた
「僕が選んだ希望の光だ、駆け出したことを後悔なんてしない。」
少年の胸の重みはとうに消え
僅かに痛むそれさえも抱きしめた
「さぁ、行くぞ。」
少年はまた、見えない一歩を暗闇に突き刺した。