異例の売れ行き「自衛隊防災BOOK」 

                          災害時に役立つ自衛隊のマル秘テク

 

 

 

 「自衛隊防災BOOK」(マガジンハウス/自衛隊・防衛省協力、1296円)が発売から約2か月で15万7000部を超える異例の売れ行きを見せている。地震、台風、豪雨災害時に活躍する自衛隊の「マル秘」ネタをイラストにして、分かりやすく解説した。10代~70代まで幅広い読者層に読まれているという理由を担当編集者に聞いた。

 政府のアンケート調査で、自衛隊の存在を実感する場面として常に上位にあるのが「災害派遣(救援活動や緊急の患者輸送)」だ。災害派遣は防衛出動や治安出動に並び、重要な活動として位置づけられている。

 災害時に必須のノウハウをまとめたのが「自衛隊防災BOOK」。イラストや写真、誰が読んでも分かりやすい解説が好評で、異例の売れ行きを見せている。発売から約2か月で16万部に迫る勢い。読者からのはがきも全世代から反響があった。

 「主人が自衛官で興味を持って購入しました」(主婦、30歳)

 「『目からウロコ』でした」(自治会防災会本部長、男性、67歳)

 「熊本地震を経験してから防災意識が高まりました。とても役に立つ情報がまとめてあり、良かった」(女性、33歳)

 担当したのは、マガジンハウス書籍編集部の辻岡直美さん。昨夏発売し、200万部を超える大ヒットとなった漫画「君たちはどう生きるか」の編集にも携わった。生きる意味とは何かを考えさせる児童向け教養小説の漫画化は大きな話題を呼んだが「親から子へ、先生から生徒へ伝えていく本の意味について考えさせられた」という。

 全世代で共有してほしい情報とは何かを考えていく中で、自衛隊のホームページ「ライフハックチャンネル」が目に留まった。災害に備え、身近にできることを動画で解説しており、書籍化により幅広い世代に広がっていくのではないか、と考えた。

 「自衛隊、防衛省などこれまであまり接点がなかったんですが、防災についてより深く取材をしていくと、老若男女に読んでもらえそうだな、と。私自身、東日本大震災以降、年月がたつにつれ、意識が薄れていくこともありましたし、書籍化に向けてやってみようと決めました」

 「陸・海・空」の自衛官から協力を得て情報収集し、100項目に凝縮した。自宅の家具配置の見直しから、止血法や寒さから身を守る方法まで災害時のあらゆる場面を網羅した。

 発売後の9月6日、北海道胆振(いぶり)東部地震が発生し、大規模停電が続いた。購入者からはこの本に掲載されている「ツナ缶・バターをローソク代わりにする方法」が役立ったというはがきが来た。「バター100グラムに綿やティッシュのこよりを入れ火をともすと、約4時間も燃え続ける」というもので感謝の言葉があった。

 「取材をする中で、自衛官にカバンの中を見せていただきましたが、手拭いが入っていました。ハンカチとしてはもちろん、止血もできるし、巻けばマスク代わりにもなります。『自衛官は誰でも持っていますよ』と。聞けば、聞くほどネタが出てきたという感じですね」

 地震、台風、豪雨などの災害はいつでもどこででも起こり得る。危機管理のプロ直伝のテクニックが網羅された今回の本だが、今後、バージョンアップも予定しているという。辻岡さんは「第2弾もまたできたらいいですね」と話している。