第3回ツタヤ映画企画コンペ、4本を映画化へ

 

左より増田社長、受賞した土橋、ウエダ、針生、片岡、女優の原田の各氏
 

 第3回となるTSUTAYAの映画企画コンペティション「TSUTAYAクリエイターズ・プログラム フィルム 2017」(主催:カルチュア・エンタテインメント、TSUTAYA)の公開最終審査会が16日、恵比寿ガーデンプレイスのザ・ガーデンホールで開催され、4作品の映画化が決定した。

 第1回グランプリ作品『嘘を愛する女』(中江和仁監督、東宝配給)の1月20日劇場公開を間近に控えた中で開催ということもあり、会場は新しい映画企画に注目する業界関係者や一般観覧者でほぼ満席の盛況。一部中継での視聴を含め、約500人が見守る中での審査会となった。今回のファイナリストは、プレゼン順に湯浅典子(映画監督)、ウエダアツシ(映像制作)、土橋章宏(脚本家)、天野千尋(映画監督)、針生悠伺(映像ディレクター)、田中智章(映画監督)、片岡翔(映

 
第3回となるTSUTAYAの映画企画コンペティション「TSUTAYAクリエイターズ・プログラム フィルム 2017」(主催:カルチュア・エンタテインメント、TSUTAYA)の公開最終審査会が16日、恵比寿ガーデンプレイスのザ・ガーデンホールで開催され、4作品の映画化が決定した。

 第1回グランプリ作品『嘘を愛する女』(中江和仁監督、東宝配給)の1月20日劇場公開を間近に控えた中で開催ということもあり、会場は新しい映画企画に注目する業界関係者や一般観覧者でほぼ満席の盛況。一部中継での視聴を含め、約500人が見守る中での審査会となった。今回のファイナリストは、プレゼン順に湯浅典子(映画監督)、ウエダアツシ(映像制作)、土橋章宏(脚本家)、天野千尋(映画監督)、針生悠伺(映像ディレクター)、田中智章(映画監督)、片岡翔(映画監督)の7氏。いずれも、すでに映像業界で活躍している面々で、湯浅氏は第1回でも最終審査会に駒を進めた。

 対する審査員は、映画プロデューサーの阿部秀司小川真司久保田修齋藤優一郎中沢敏明、女優の原田美枝子、カルチュア・エンタテインメント社長の中西一雄、カルチュア・コンビニエンス・クラブ社長兼CEOの増田宗昭の各氏が務めた。前回までは、最終審査会で使用する予告編などの映像制作費は企画者の自腹だったが、今回より主催者が各20万円ずつ支給したこともあり、登壇した7名全員がハイレベルで完成度の高い映像を用意し、白熱したプレゼンが繰り広げられた。

 「稀に見る激戦だった」(久保田氏)という審査を経て、グランプリを獲得したのは、針生氏が企画した『2/1 イチブンノニ』。主人公の医師が、心臓移植を必要とする息子を救うために、そのドナーとしてクローンの息子を育てることになるが、本当は愛してはいけないクローンの息子を愛する気持ちが芽生えてしまうというSFホームドラマ。針生氏が、クローンを題材にしたSF映画『月に囚われた男』を鑑賞した後に考えついたという企画だ。どちらの息子をとるか、「命の二者択一をラストまで引っ張る原動力にする」としつつ、「バッドエンドにはしない」というこだわりも見せて、見事映画化を勝ち取った。久保田氏からはオチの部分の矛盾を鋭く指摘される場面もあったが、その後の囲み取材で「(オチは)変えるかもしれないが、良い終わり方にしたい」と映画化に向けて早くも意気込みを示した。なお、協賛するIMAGICAからも「IMAGICA賞」が贈られ、副賞としてドローンカメラがプレゼントされた。

 準グランプリは、ウエダ氏の『モータープール』と、片岡氏の『ザ・ドールハウス・ファミリー』の2作品が受賞した。『モータープール』は、主に関西で “駐車場” のことを指す “モータープール” を舞台にした人情物語。夏休みに祖母のもとを訪れた小学2年生の少年が、祖母が管理するモータープールで大阪の個性的な人々と出会い、成長していくストーリー。ウエダ氏は、大阪・新世界で道行く個性的な人々に実際にインタビューした映像をプレゼン中に上映して客席の心を掴んだ。『ザ・ドールハウス・ファミリー』は、事故で体を失った母と妹と弟が、人形やぬいぐるみになって生まれ変わるというホラー的な要素の強い作品。父親が人形屋で、幼い頃から人形に囲まれて育ったバックグラウンドを持つ片岡氏が、「自分の中にあるものを思いきりぶつけてみたい」と企画した作品。7作品の中でも特に異彩を放ち注目を集めた。

 また、急遽設けられた特別賞は、『超高速!参勤交代』の脚本家として知られる土橋氏の『水上のフライト』が受賞。走り高跳びでオリンピックを目指していた女性が、事故に遭い下半身に障害を負うことに。しかし、カヌーの楽しさに目覚め、パラリンピックで再び世界に挑戦する。実在するカヌー選手の瀬立モニカをモデルにした物語だ。土橋氏は、2020年のパラリンピックを視野に入れた作品であることに触れつつ、VRやドローン、ウェアラブルカメラなど最新機器を使って迫力の競技シーンを撮りたい考えなどをアピールし、審査員から特別賞を引き出した。

 4作品は、いずれも各5千万円以上の製作費と映画完成のための制作体制のバックアップを受ける。完成した作品は、TSUTAYAでのレンタル展開が確約されるほか、『嘘を愛する女』のように劇場公開される場合もある。

 総評の中で、阿部氏は「今回は応募数が268本と減ってしまった(第1回は474本)が、質の高さは担保できていた。ただ、製作費にしばられてこじんまりした作品が多かった」と課題を指摘。中沢氏もその意見に頷きつつ「(製作費が)5億、10億あるつもりで考えた方がいい。もうちょっと狂ってもいい」と、より斬新でスケールの大きな企画の応募に期待を寄せた。久保田氏は「オリジナルの企画でも興味を持ってもらえるためにはどうしたらいいか(考えること)が必要」と、企画段階から客の入りを意識することの重要性を説いた。また、最後に増田社長が登壇し、「1本1本、自分の生き方を考えさせられた」と最終審査に残った各企画に敬意を表した。なお、司会者からは来年も第4回を開催することが発表された。