東急不、九段会館を建て替え 城郭風は保存

城郭風の建築様式を残しながら高層ビルを建てる(イメージ)

城郭風の建築様式を残しながら高層ビルを建てる(イメージ)

 

東急不動産は九段会館(東京・千代田)を地上17階建ての高層ビルに建て替える。特徴である城郭風の建築様式を一部残しつつ、高さ約75メートルの複合ビルを新築する。2022年7月に完成し、22年度中に開業する予定だ。東日本大震災による天井の崩落事故で廃業して以来、約10年ぶりの開業となる。
 
財務省関東財務局が9月に実施した入札で、東急不が九段会館の土地・建物を落札した。東急不が既存建物を買い取り、広さ約8700平方メートルの土地は定期借地権方式で国から70年間借りる。契約期間は18年3月から2088年2月まで。金額は18年3月の契約締結後に公表する。

 保存部分を含めた建物の延べ床面積は約6万8000平方メートル。このうち保存部分の建物は店舗や宴会場、カンファレンスセンターやシェアオフィスとして利用する。新築する高層ビルは店舗やオフィスとして使う。

 九段会館は近代的な鉄筋コンクリートのビルに、日本の伝統的な瓦屋根をかぶせた「帝冠様式」と呼ぶ和洋折衷の建築様式が特徴だ。千代田区の景観まちづくり重要物件に指定されている。東急不は帝冠様式の建物北東側を保存しながら、地上17階・地下3階の建物を新築する。建築費は300億円程度とみられる。

 

戦前に予備役の訓練などに使う「軍人会館」として建設され、戦後は連合国軍総司令部(GHQ)が接収。接収解除後は国が日本遺族会に無償貸与し、ホテルや結婚式場、貸しホールとして運営してきた。

 ただ11年の震災による天井崩落で死亡事故が発生。日本遺族会は九段会館の廃業と、土地・建物の国への返還を決めた。関東財務局は16年9月に土地・建物の処理方針を決定。一部を保存しつつ、敷地を借りて高度利用する事業者を入札で決めることにした。

 建て替え後も国は新築ビルの低層階の一部を購入し、日本遺族会に無償で貸す。遺族の福祉目的の事業などに利用される計画だ。建物南西の堀側には遊歩道を設け、一般に開放する。内堀通りと遊歩道を行き来できるようにし、地域のにぎわいを創出する。