さて、次は台湾の旧型客車の旅。

2010(平成22: 民国99)年11月22日(月)の続き

次の列車の改札開始を待ち、乗り込んだのは

普快車355次

普快車355次

普快車(非冷房普通列車)」355次。枋寮14時28分発の台東行普通客車列車だ。実はこの当時台鐵の普快車は既に数えるほど。ダイヤ改正の度に冷房付の区間車への置き換えが進み、現在では台湾でも貴重な存在なのだ。ちなみに南廻線は特急の自強号・キョ光号がほとんどで普快車はこれを含めて2往復のみ。

手動ドア

先頭と最後部を撮影し、さぁ車内へ……なんと手動ドア、だが特に驚くことは無い。台鐵は自強号を含め手動ドアがまだまだ多いのだ。だから動き出した列車からの飛び降りも後を絶たず、それもあってか自動ドア付車両への更新を進めているとか。その一環でこの普通客車も冷房・自動ドア付の通勤電車やディーゼルカーへの置き換えが進んでおり、今や風前の灯。そのため当初の予定を出発1週間前に変更してこの普快車355次に乗ることにしたのだ。

普快車車内

日本製客車の車内、枋寮発車時点で乗客はちらほら。しかもほとんどは用務客ではなく「鐡路迷」(中国語で「鉄道ファン」)だったりする。その中でとあるグループは3両編成の最後部にあるインド製客車に陣取った。その客車だけは両開き自動ドアのオールロングシートと言う珍車(?)だったりする。

 

屏東から台東への山中

枋野信号所

まずは野菜畑を抜け、緑濃い山間を抜けると枋野信号所。ここは最初から信号所として作られたようだが中には廃止に追い込まれた駅も3ヵ所あるとか。地元の期待を受けて開業した南廻線だが過疎地ゆえに苦戦しているのかもしれない。この先しばらくの間、駅周辺に人家はあまり見えなかったし。

この信号所の先でトンネルへ。台湾南部の山地を貫く南廻線は長大トンネルが多いが、この普快車は非冷房なので当然窓を開けている。それが醍醐味でもあるがトンネル内では見事なまでの「轟音」の嵐で耳が痛く……(- -;)

太平洋

山間地を抜けてしばらくすると、右手に太平洋が見えてきた。2時間近く前に枋寮漁港でも海を見ているが、やはり外洋は雰囲気が違う。

太麻里渓

太麻里渓

太麻里車站が近づいた時に渡った河口。だが何やら雰囲気が……。そう言えばこの辺りは今年(2010年)夏に大洪水が発生したと聞いている。その爪痕なのだろうか? いずれにせよ単なる河口とは思えない雰囲気が漂っていた。

この後は太平洋沿いに北上、知本温泉や原住民(※) 文化公園の横を過ぎて16時20分に台東へ。ちなみに最後部の鐡路迷集団は、ある駅では窓を開けて隣の線路の保線車両を必死に撮影し、金崙では台東発の普快車354次との行き違いを、終点の台東ではやはり何かを撮影したり他の人にグループ写真を撮ってもらったり。なかなか「濃い」集団だったなぁ。
(※) 台湾では「原住民(族)」は政府公式用語です。

その台東車站がこちら。

台東車站

なかなか立派な駅舎だが、実は数年前まで「台東新站」だった。南廻線開通前は台東市街に駅があったが開通に合わせて分岐点たるここに新駅として開業し、後に市街地への路線が廃止されたので名実共に台東車站となったわけ。

 

さて、台東車站から今夜の宿がある市街地までのバスの時刻表を調べると、ある男性が英語で
「17時に市街地行の無料バスが出るよ。」
と教えてくれた。

台湾好行シャトルバス

これがその無料バス。英語でシャトルバスと書いてあるが、どうやら列車やバスでやってくる観光客や用務客向けに台東県の観光当局が走らせているバスの模様。

先ほどの男性に女性客が加わり、計3名で台東車站を出発。市街地に入ってから右左折を繰り返し、どこへ連れて行くのか分からなくなってきた。何しろ路線図がないのでガイドブックと地図との照合が上手くいかず郵便局や電話局などの建物を目安に現在地を割り出す始末。その内に女性客が何やら運転手に尋ねる程だが、その直後にバス停に着いたのは皮肉かな?
みんなが降りたので一緒に降りるが、そこは「水菓街」と言うバス停。ガイドブックを片手に再度現在地を割り出し、ようやく今夜の宿にたどり着いた。

その宿の名は「馨園商務旅館」(ハッピーイン)(※)
(※) その後、この宿は廃業しました。

台東ハッピーイン

ネットの掲示板で「設備は古いが清潔」と勧められ、中国語(※) を読み解いてネット予約した宿だ。ちなみに決め手は「バスターミナルの直上」なのとランドリーがあること。特に後者は荷物、特に衣類を減らすための重要なポイントだが、なんと洗濯機のみで乾燥機が無い!! この時期一晩で洗濯物が乾くわけがなく、結局今夜の洗濯は諦めることに。
(※) 厳密には、繁体字(旧漢字)の漢文読み。大陸の簡体字(簡略文字)よりはるかに読みやすいがゆえの技。

気を取り直して夕食のため市街地へ。とは言え特に情報を持ち合わせているわけでもなく、地図を頼りに適当に歩いてみることに。

夜の台東市街

人口11万ほどの台東の市街地はご覧の通り煌びやか。色鮮やかな看板が多いのもあるが市街地を歩く人も割といる。我が国の様に郊外型店舗に客を取られすっかり寂れた「シャッター通り」とは大違いだ。

偶然見つけた「老東台」で、名物料理を食べることに。

老東台

米台目

それが「米台目」。米でできた冷麦よりやや太い麺で、鰹ダシが効いてうまい!! 実はこの店にたどり着くまで市街地を1時間ほど歩きまわってすっかり空腹になっていたが、それを抜きにしてもうまい!!

台湾ビール

猪皮

胃が落ち着いて食欲が出てきたので台湾ビールと「猪皮」を追加。中国語で「猪」は「豚」を意味するのでおそらく豚の皮の料理なのだろうが、プルプルしていて「コラーゲンたっぷり」料理だった、と思う。
この店は人気店らしく客も入れ替わり来店、店内には台湾の新聞や情報誌の記事が随所に張り出されていた。

大満足で店を出た後で、今日は一度も米を食べていないことを思い出した。

斗六嘴大王

そこで近くの「斗六嘴大王」で魯肉飯(台湾名物の肉そぼろ飯)を食べることに。やはり日本人なら一日一回は米飯を食べたいものだ。

魯肉飯

魯肉飯は台湾各地で食べられるがこれまでハズレに出会ったことは無い。この店もその一つでご飯も肉そぼろも美味しかったが、その上には細(?)切りのたくわんが。実は漬物が全くダメなのでこれには参ってしまった。中国語で「いらない」は「不要」、漬物は「香菜」(シャンツァイ)だったはずだから「漬物抜きで」は「不要香菜」でいいのかな?
この後はセブンイレブンで朝食用に菓子パンを購入、ホテルでシャワーを浴びてネットをチェック。明日があるから早寝せねば。

 

明日は朝6時15分発のバスで台東駅に行かなければならない。だからこのホテルを選んだのだが、ちゃんと起きられるかどうか……。