「お泊まりしないで帰るかもだけど」
余りに唐突に外された梯子に、さすがの私も目を疑った。
好きなの選ばせてくれるって言ったじゃない!
楽しみにしていたのに、どうして今更?
そんなコトできるのって聞いたのに、うん。って言ったじゃない!
数日前から工面してきたアリバイはどうなるの?
叫び出したい気持ちなのに、哀しい哉。
"聞き分けのいい女"もとい"都合のいい女"をこんなときにも発揮して。
「大丈夫。。そろそろ、出勤時間だね。」と
咄嗟に返事してしまった。
思考停止。。。
何のための今日なのかと分からなくなって呆然。。
彼の出社時刻が過ぎたことを確認して、はたと我に返る。
「無理しなくていいよ、また今度にしよう。」
可もなく不可もなくの追撃をして溜息。
普通の逢瀬なんて要らない。
まるごと彼を独占できないなら、もう今日は逢いたくない。
ぽろぽろ涙が頬を伝う。
何をこんなに拘っているんだろう―――。
自分でも分からないけれど、
どうしても今夜は一緒に居たかった。
たった一夜でもいい、彼を独占してみたかった。
「会いたいよー。」
通知を知らせるLINEを開くと、彼からは大変吞気なご要望。
ばか、ばか、ばか。
そうやって、また今日も私を振り回すんだ。
「分かった。」
ぐすぐす鼻を鳴らしながら返信した。
いつも通りの短い逢瀬でも我慢しなくちゃ。不倫なんだから。
本当の莫迦は自分なの、ちゃんと知ってる。