兄の背中
僕には2歳年上の兄がいます。
父の仕事の関係で海外の小学校に通うことになった僕たちは、
日本語の通じない孤独な環境の中で自然と友達のような関係になり、いつも一緒に遊んでいました。
当時、海外に住んでいた僕たち兄弟にとって、一番の遊びは、ゲームボーイ。持ち運びのできるゲーム端末です。
ある日、あまりにも長時間遊びすぎる僕たちを見かねて、父はゲームボーイを僕たちから取り上げ、会社にもっていこうとしました。
父が鞄にゲームボーイを入れるのを見た僕は、父の隙をみて、そのゲームボーイを鞄から取り出しました。
そんな事をされたと父は気付かずそのまま会社に出勤していきました。
僕は得意げにゲームボーイを兄に見せ、一緒に遊びました。
そして、その日の夜、父が帰ってきました。
非常に厳しい父でしたので、僕は父が帰ってくる時間が近づくと、恐くなってきました。
やはり、烈火のごとく怒っていた父は、僕たち二人を呼びつけ、目の前にたたせました。
“なんで、お父さんが怒っているかわかるな?どっちがやったんだ!”
・・・・・・言えば、殴られるのは目に見えてます。僕は恐くなり、震えていました。
そうすると、信じられないことが起こりました。
兄が一歩前にでて、
“ごめんなさい、僕がやりました。”と言ったのです。
そして、父に何発か殴られました。
僕は、それでも自分がやったと言えなかった。
兄は、僕が幼い頃友達と喧嘩して泣かされた時も、いつでも、僕をかばってくれたような気がします。
そんな兄も中学、高校と進むにつれ、一緒に遊ぶこともなくなってきました。
お互い思春期で、理不尽に兄に殴られた事もありました。
でも、僕は小学校の時のあの事件以来、今に至るまで、本当の意味で兄に頭があがりません。
父も、今思い返せば、あの時僕がやったとわかっていたのだと思います。