さて、前回はどうしてビルバオに住むことになったのかということを書きました。
続いて今度は「どうやってジョアンと知り合ったか?」です。

ランデルのつながりでアルベルトと知り合い、一緒に仕事をするようになりました。アルベルトはすでにコーチングスクールで講師をしており、「是非アルベルトの授業を受けたい!」とお願いしました。しかし、アルベルトはレベル1の講師であり、僕はすでにバルセロナでレベル1とレベル2を取っていましたので、「基本的に授業は受けてはいけない」ということになりました。

しかもですね。普通すでに取ったライセンスをもう一回勉強し直したいなんて誰も言わないわけです・・・レベル1をやり直すことになってもアルベルトの授業を受けたかった僕は「聴講生でもなんでもいいから。授業を受けさせてほしい。迷惑はかけないから」とお願いしました。
結局その願いが通じ、戦術と技術の授業を受けることが出来ました。

スペインのコーチングスクールの面白いのは、ライセンスはスペイン協会公認のものなのですが、各県にその運営、経営は委託させています。つまり、地域(もっと言うと講師)によって授業の内容が全然違うのです。なので、バルセロナで学んだ時も大きな収穫でしたが、実際ほとんど内容を覚えていないんですよね・・・今考えるとその勉強は「テストに受かるため」だったのです。だから、テストが終わるとほとんど頭に残っていない。スペイン語のレベルが低かったことも影響していると思います。

しかし、ビルバオに住み始めた頃はもうある程度スペイン語のレベルも上がっていたので、最初にアルベルトの授業を受けた時に「あれ?内容がすごく分かるし、楽しい!」と感じました。サッカーが整理されていて衝撃を受けました。
「ビルバオではこれがレベル1(初級)なのか!」と。
実際にはやっぱりアルベルトの授業内容の質が高かったということには後から気付いたわけですが。

話は脱線していますが、いよいよ本題。

ある日「今度の戦術の授業は実技でしかもGKについてだ。かなり面白いコーチなんだけど、KAZUは正式な生徒じゃないから授業に出ていいかどうかGK担当の講師に聞いてみるよ」とアルベルト。

その後「お前と一緒でかなりのLOCO(クレイジー)だぞ(笑)」という一言にかなり惹かれましたw

そしてそのGK講師からも授業参加のOKをもらい、いざ実技へ!そのグランドで会ったのが・・・そうジョアンでした。あんな練習、考え方は今まで全く見たことがありませんでした。「なんでこんなすごい人がビルバオで、しかもゲルニカという小さな町のクラブでGKコーチをやってるの!?」
本当に驚きました。

正式な生徒ではないにも関わらず、講師のど真ん中でメモを取り続けた僕にジョアンはかなり興味を持ってくれ、実技終了後話しかけてくれました。


「お前か。アルベルトを慕ってきている変な日本人は!」と

その時の出会いからジョアンは今日本に来て仕事をすることになっているんです。本当に不思議な縁ですし、日本のためにと自分の人生を賭けて来てくれたジョアンに感謝です。そして紹介してくれたアルベルトにも。

ジョアンとは今でもあの時の実技の話になります。
「普通監督はGKについて全然興味を持とうとしない。あまりに知識がなくて見えないというのもあるかもしれない。だから自分の授業もそんな感じで聞きにくる生徒が多い。そんな中、正規の生徒でもないのに、熱心にメモを取ってるお前を見て、本当に勉強したいんだなという情熱を感じた。だからそういう人には協力したいと思ったんだ。でも、本当にお前はLOCO(クレイジー)だww」と言って笑っています。

僕は忘れません。彼が「KAZU。お前がGKの失点の原因が分からなくて、修正できなかったらどうやってチームを率いるんだ?」と言ったことを。GKのことはわからない。だから分かりたいと思ったんです。勉強しなければいけないと。

その後、ジョアンとアルベルトには3年間、講師として教えてもらいました。ランデルには直接授業を教えてもらうことはなかったのですが、いつも一緒にサッカーの話をしていました。ビルバオ時代この3人から受けた影響は計り知れませんし、今の自分の大きな幹になっています。

今、日本でジョアンから学べることは決してGKだけに留まりません。彼の考え方はフィールドの選手にも使えますし、選手との接し方、仕事の進め方(プランニング)は生きる上で非常にためになることばかりです。

そんな素晴らしい人を日本に来てもらえることになって本当に嬉しいですし、それだけに終わらず、出来る限り多くの人にジョアンの考え方を知ってもらえたらと思います。