現在13巻の発行で販売総冊数は2,500万部の大ベストセラー漫画がある。矢沢あい の「NANA」である。内容自体はとてもポピュラーな恋愛物語。しかし、ただの恋愛物語ではここまで空前のヒットを飛ばすはずがない。単純に読み物として解説するまでもないのだが、あえてここまでの人気を考察すると、いくつかのポイントが出てくる。①共鳴感まずは、特別なアニメキャラクターが出てくるわけではなく、等身大の女子高生・女子大生の物語として描かれている点。読者である10代前半から20代後半の女性の等身大の姿がそこにある。②ストーリー設定2人のNANAは、共に上京してくるという設定。夢を追い、恋をしていくという設定がいかにもあり得る。③アクシデント1巻の中でいくつかのアクシデントが毎回起こるストーリーになっているが、そのアクシデントはどれも日常であり得そうなもの。自分が経験していなくても、「友達でこういう経験をした子がいる」「そんな話を聞いたことがある」といったアクシデントが盛りこまれている。常に読者の「日常」に入り込んでいる。④プロモーション雑誌やテレビなどのメディアにうまく載せることができた「NANA」は”みんなが知っている”→”みんなが読んでいる”→”読んでないとやばい”といういつものヒットパターンに乗せることができた。ただ、ひとつわからないのは、アメリカなどでも人気が急騰しているとのこと。日本の文化や生活事情が読者に重なり共感を得ることはわかるが、国外でも受け入れられているというところに疑問が残る。それは、焦点を「音楽」と「恋愛」と「学生生活」に置いていることから万国共通の人気も出るのだろう。映画も公開され、ますます勢いにのってきそうだ。