日本では、学校も企業も役所も「4月からスタート」というのが当たり前。

しかし海外に目を向けると、9月・1月・7月など、多様なスタート時期が存在する。

 

なぜ日本は4月なのか。

 

★日本の新年度が4月になった理由

最も大きな理由は、明治時代の国家財政の都合。

 

明治政府は、国の予算を「4月に始まり、翌年3月に終わる」という形で管理していた。

 

理由は、当時の最も大きな税収源である「地租(=土地の税金)」の納付が旧暦の1〜2月に集中していたため、税収が揃うタイミングに合わせて財政年度を4月開始にしたという背景がある。

 

その後、学校制度、官庁、地方自治体、企業など、すべてが国家財政と歩調を合わせる形で4月開始になった。

 

そして明治19年(1886年)に制定された「学校令」により、学校の学年も4月〜翌年3月になったと言われている。

 

つまり学校の4月スタートは「歴史が長いから」ではなく、明治政府の財政サイクルに合わせた制度的な理由が本質。

 

★世界では何月スタートが多いのか

 

ここでは「学校年度(学年)」を基準に国別の例を紹介する。

【9月スタートの国(世界の多数派)】

アメリカ

カナダ

イギリス

フランス

ドイツ

ロシア

イタリア

スペイン

トルコ

サウジアラビア(近年は8月末〜9月開始へ移行)

 

世界では“9月スタートが一般的”。

 

農閑期の終わり、夏が一つの区切りという文化も背景にある。

 

【1月スタートの国】

オーストラリア

ニュージーランド

南アフリカ

ブラジル

アルゼンチン

シンガポール

 

南半球の国は季節が逆のため、夏休み明け=新年度という形が自然。

 

【4月スタートの国】

日本

インド(州によって違うが4〜6月開始が多い)

バングラデシュ(4月開始、ベンガル暦の影響)

パキスタン(一部地域)

ネパール(4月中旬)

 

日本以外では、南アジアの一部に4月年度が見られる程度で、世界的には少数派。

 

★4月スタートのメリット

① 日本の季節サイクルに合っている

桜の開花、新しい生活の始まり。

季節的に「スタート感」があり、文化として完全に根づいている。

 

② 社会全体の動きが揃う

学校、企業、官庁などすべてが4月スタートのため、採用や入学・異動が同期しやすく、

社会が一体となって動きやすいという利点がある。

 

■ 4月スタートのデメリット

① 国際基準とズレるため、海外との接続が面倒

海外留学・交換留学は9月スタートが一般的。

そのため、半年ズレてしまう、長い待ち期間ができる、新卒採用ルールが特殊など、グローバルとの接続で不利が生まれやすいと言われる。

 

② 気候的に引っ越し・異動が大変

4月の移動シーズンは、引っ越し料金が高い、転勤・異動で生活が不安定、花粉シーズンでつらいなどという問題がある。

 

③ 入試・締め切りが“年末年始の忙しさ”と重なる

4月が年度のスタートということは、年度末=3月、年度切り替え準備=2〜3月に集中する。

入試、合格発表、異動準備、会計処理、卒業行事などが一気に重なり、教師も家庭も非常に忙しい時期になる。

 

実は2020年のコロナ禍の際、“9月入学への移行”が政府・自治体で議論された。

理由は、休校の影響で学習が遅れた、世界基準に合わせやすい、海外進学の壁が減るといった点だったが、制度が広範囲すぎて混乱が大きい、保育園〜大学、企業、人事まで全部変わる、経済力の差が強く表れるリスクがあるという問題から、最終的に見送られている。

 

日本の年度がなぜ4月なのかを知ることで、普段何気なく迎えていた“新年度”の背景が、少し違って見えてくるかもしれない。