脳の記憶には「短期記憶」と「長期記憶」の2種類があることは以前も書いた。
それぞれに合ったやり方で勉強すると、覚える量もスピードも驚くほど変わる。
今回は「短期記憶」と「長期記憶」の方法について触れる。
まずはそれぞれの内容について
■短期記憶
★数秒〜数十秒しかもたない
★すぐ消える
★脳のメモ帳のようなもの
★情報の「一時置き場」
アメリカの心理学者ジョージ・ミラーの研究では、短期記憶は 「7±2個」しか保持できない とされている。(スマホの電話番号が4桁ずつ区切られているのもこれが理由)
つまり、短期記憶は“忘れるのが普通”。
■長期記憶(長く残る知識・技能)
★数日〜一生保持
★本当に身についた記憶
★勉強・受験に必要なのはこちら
ただし、短期記憶 → 長期記憶 へ移るには「脳に刺激を与える方法」 が必要。
短期記憶は“仮置き”なので、「一時的に頭に入れる技術」 を使うと効率が上がる。
① チャンク化(まとまりにして覚える)
ミラーの「7±2の法則」を応用した方法。
例:
194519451945 → ×
1945 / 1945 / 1945 → ○
英単語でも
at / the / beginning / of / the / story
をat the beginning/of the storyと「意味の塊にする」だけで覚えやすくなる。
② 音読・口に出す
短期記憶は視覚よりも音声刺激のほうが保持が強い と言われている。
★英単語を声に出す
★教科書をリズムで読む
★短い公式を口で反復
などが効果的。
③ 図や図式で視覚化する
ワーキングメモリは「視空間」と「言語」が協力して働く。
図にするだけで記憶保持が数倍上がることが研究でわかっている。
例えば、歴史の流れを図式化する、文法を表で整理するなどが非常に効果的。
次に、長期記憶に変えるためには、
脳を「これは必要な情報だ」と勘違いさせる必要がある。
そのための方法は科学的に明らかになっており、特に “テスト効果(想起練習)” と “間隔反復” は絶大。
① テスト効果(想起練習)
アメリカの心理学者ローディガーらの研究で、“人は覚えるときではなく 思い出すとき に記憶が強化される”ことが証明されている。
つまり、まとめる・ノートに書く・眺めるより、「思い出そうとする」ほうが記憶は100倍強くなるということ。
▼実践例
★英単語を見ずに思い出す
★一度解いた問題を2日後に再度テスト
★教科書を閉じて自分で説明してみる(セルフティーチング)
「思い出す練習」が長期記憶の最強の方法。
② 間隔反復(スパイラル学習)
エビングハウスの忘却曲線で有名なように、人は“復習の間隔”を空けたほうが記憶が強まる。
▼効果的なタイミングの例
当日中に復習→1日後に復習→3日後→1週間後→2週間後
復習の間隔を広げていくことで、脳は「これは重要情報だ」と判断し長期記憶に固定する。
③ いろいろな形式でインプットする
脳は“多様な刺激”を好む。
★視覚(図・色)
★聴覚(声に出す)
★運動(書く)
★感情(面白い例・語呂)
インプットの種類が多いほど、記憶の“保存場所”が増えるため、思い出しやすくなる。
④ 自分で説明する(セルフティーチング)
研究では、「自分で説明する」=理解がもっとも深まる行為とされている。
★英語の文法を自分で説明する
★数学の解き方を口で言う
★歴史のストーリーを語る
可能であればこれが中学生には最強の勉強法。
短期記憶と長期記憶は働き方が全く違う。
その特性を理解すれば、勉強は驚くほど効率的になる。
学校では教えてくれない「記憶の使い方」。
中学生のうちに知っているだけで、高校入試・大学受験、そして社会人になってからも
大きな武器になる。
今日の勉強から、「思い出す → 間隔を空ける → また思い出す」この流れを作りたい。
記憶は、“脳の仕組みを知っている人”から伸びていく。
