「あなたは文系?理系?」――高校生になると、必ずといっていいほど出てくる質問。

大学入試もその系統に分かれるし、中学生も結構どっち系、と自分を区分けする。

 

そもそも文系と理系を分けること自体が本当に必要なのか?という根本的な問いは、意外と考えられていない。

 

まず、文系と理系を分ける歴史的背景として、日本の高校で文理選択が導入されたのは、戦後の教育制度の整備期。大学入試での専門性を高めるため、

 

文系:法律・経済・文学などの人文社会系

理系:医学・工学・理学などの自然科学系

と分けられたよう。

 

この仕組みは、「より専門的な教育を大学で受けるための準備段階」という考えに基づいている。

 

しかし現代社会では、文系・理系の線引きはどんどん曖昧になっている。

たとえば、AIやデータサイエンスは理系のようでありながら、社会課題の理解や倫理観という文系的要素も欠かせない。

 

また、マーケティングや経済学でも統計・数理分析の知識が必須になりつつある。

つまり、文系にも理系の知識が必要で、理系にも文系の発想が必要な時代になっている。

 

念のため、文系・理系と分けるメリットとデメリットを記載しておくと、

 

メリット:

専門性を高めやすい

教科数を絞ることで受験対策が効率的

自分の得意分野を深めやすい

 

デメリット:

選択が早すぎて将来の選択肢を狭める

「苦手科目を捨てる」ことが当然になる

分野横断的な学びが阻まれる

などなど。

 

特に高校1~2年の段階で人生の方向を決めるのは、まだ早いケースも多く見られる。

 

海外の事例として、欧米の教育では、大学入学前に文理を明確に分けることは少なく、「General Education(教養教育)」の中で幅広く学んだうえで、大学進学後に専攻を選ぶスタイルが一般的。

この仕組みの背景には、「人間の知的活動は本来、文理をまたぐものである」という考え方がある。

 

最近は、日本でも「文理融合」の動きが始まっている。

新大学入試(共通テスト)や高大接続改革の中で、探究活動や課題解決型学習(PBL)が重視され、「分ける教育」から「つなげる教育」へと変化している。

 

 

 

 

つまり、「文系か理系か」よりも、自分はどんな問題に興味を持ち、どんな方法で解決していきたいのかが問われる時代になってきている。

つまり文系・理系という発想で区分けして物事を考えるのではなく、自発的に物事を総合的に考えられることが求められると思われる。

 

文系と理系を分けることは、効率的に専門を学ぶうえで一定の意味はある。

しかし、社会が求めているのは「どちらか」ではなく「両方をつなげる人材」。

これからは、文理という区分にとらわれず、自分の好奇心を軸に、広く学び続ける力が重要になると思う。