職業人は、自分の仕事に対して自ら厳しい態度を持つことが求められます。

自分の仕事について、例え他の人には、その欠陥が目に付かなくても自分の目を誤魔化すことは、できないものです。また自らの心が許さないはずです。それが真の職業人の姿であります。

正しいよい仕事をしようとする心。自ら納得できるような仕事をしようとする心。そして、よい仕事をしたときに自らが満足し、満足のいかない仕事に対しては自らを許さない心。この自らを許さない心こそが職業的良心と言えます。

職業人であるからには、この良心が研ぎ澄まされていなければならないのです。

昔、武士には武士道と言うものがありました。これに対して庶民には職人道とか商人道と言ったものが発達したのです。

「道」とは職業倫理であって、それぞれの人たちの基本的な心構えや行動の有り方を示した模範であるのです。

昔の刀鍛冶、陶工などの職人は、もし自らの作品の出来栄えが気に入らないときは、それが世に出ることを憚って、その作品そのものを壊したと言います。会心の作品のみ自分の銘を打って世に出したものであるからこそ現代でもその価値が賞賛されるのでしょう。

「大量に安価に・・・」の現代であっても心構えとしては、昔の職工の様な厳しい姿勢を持っていて欲しいものです。

今から何百年前の商人道として常に嗜みのこととして教えられていた一部を見る限り現在の感覚からみても十分に味わい深いものがあるように思われるのですが。

・分別のこと(善悪の区別がつき良心的であること)

・正直にすべきこと(誠実で虚偽はないこと)

・堪忍すべきこと(辛抱強くあること)

・定式を止め意見につくべきこと(旧来の伝統を固守するだけではなく新しい方式を考えること)

・後悔いらざること(過去の失敗を反省し将来の前進を考えること)

・慢気を忌むべきこと(自惚れてはならないこと)

何百年も伝えられる職人・商人の言葉は、現代のビジネスマンに多くのヒントを生むことでしょう。

良心に誓うこと。それは一人の人間として、己の仕事・会社に己を支えてくれる同僚・知人・友人に己が生を受けたこの地球に今、自分が何を為すべきかを真剣に考え行動することです。