日銀総裁問題。福田康夫です。]


日銀総裁問題。福田康夫です。

今日は、戦後初めて、日本銀行総裁のいない日となりました。

日銀総裁の任命には、

衆議院と参議院の同意が必要ですが、

今回の総裁人事では、

民主党が第一党をとっている参議院の同意を得られませんでした。

サブプライム問題をはじめ世界の金融、経済情勢が

不透明感を増しつつある中で、

日本の中央銀行トップが不在の事態は、

国内の金融・経済への影響や、国際的な信用を考えると、

極めて厳しい状況にあることとその責任を重く受け止めています。


日銀副総裁を5年間つとめ、

経済界や市場の信認も厚い武藤敏郎さん。

国際協力銀行の副総裁、総裁として、

7年間、国際金融の世界で活躍し、人柄も実直な田波耕治さん。

いずれの方も、

金融・経済への深い識見、高い国際感覚などが求められる

日本銀行の総裁として、

大変ふさわしい人物でしたが、民主党のご理解が得られませんでした。

 

なぜ民主党が合意できる人物を提案しなかったのか」との

ご批判をいただきました。

 

私は、民主党からご提案があれば、

聞く耳は十分に持っているつもりです。

しかし、色々な方が「個人」の意見は述べられますが、

「党」の意見として総裁にふさわしいと考える人物の名前が出されたことは

一度もありません。

具体的に、誰が「民主党が合意できる人物」か、手がかりもない以上、

自分がベストだと信じる人を提案するしかない、

というのが私の結論でした。


「唯一正道を歩まん」とは、

戦前、軍部と妥協することなく軍縮を進めた濱口雄幸総理の言葉です。

ただ空白を避けるため、

当たり障りのない人物で政治的妥協を図ることはできたかもしれません。

しかし、日銀総裁という、

日本経済や国民生活に大きな影響を与えるポストだからこそ、

逆に、人物本位を貫くべきだと考えました。


「なぜ財務省出身者を選ぶのか」というご批判があることも承知しています。

しかし、出身が財務省であるという理由だけで、

最適な人材を用いることができなくなるのでしょうか。

「日本経済のために誰がよいか。」経歴などではなく、

この観点だけで適材適所で判断しました。

当然、

財務省と日本銀行は独立して意思決定を行う組織でなければなりませんが、

財政政策と金融政策がバラバラであってよいわけはありません。

特に、

現在のような経済情勢では、両者の連携も重要であると考えました。


いずれにせよ、

今回の事態は日本が政治的に重要な決断を行えないという

メッセージを国際的に発信する結果となりました。

拒否権を振りかざし、

時間切れに追い込むような態度だけでは、

国民に対する政治の責任は果たせません。


政治は結果責任を負うことはもとより、

日銀総裁を不在にしたことは私の責任ですが、

日銀やこのような政治の状態を一刻も早く立て直すことも、

私の使命であり、責任であると考えています。