ヘロイン中毒死…それでもP.S.ホフマンが愛される5つの「理由」 | 芸能&エンタメ☆トレンドNews

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 最近の欧米エンターテインメント業界を騒がせた最大の話題は、何といっても個性派で知られた米俳優フィリップ・シーモア・ホフマンさんが2日、46歳の若さで急死したことでしょう。



 欧米のエンタメ業界はそのいぶし銀のような才能の損失に大きな衝撃を受けており、多くの同業者や業界人が哀悼の意を表していますが、警察がその死因を違法薬物であるヘロインの過剰摂取とみていることから、翌3日の米ABCニュースが「墜ちたスター」と報じるなど、彼の死とヘロインとの関係やその社会的背景などが詳細に語られ始めています。



 そのABCニュースや米CNNテレビ、英BBC放送(いずれも電子版)が3日に伝えたところによると、ホフマンさんはニューヨーク・マンハッタン南部のグリニッジ・ヴィレッジにある自宅マンションのバスルームで倒れているのを、訪れた友人で脚本家のデヴィッド・バー・カッツさんが見つけ、警察に通報。その場で死亡が確認されました。2日(日曜)の午前11時15分のことでした。ホフマンさんの姿は前日の土曜の午後8時に目撃されており、これが生前最後の姿となりました。



 彼の部屋からは使用済みの注射器に加え、ヘロインが入った袋が65個、さらに同じ袋が空になった状態で5個見つかりました。おまけに当人は発見時、左腕に注射器の針が刺さった状態だったといいます。



 ちなみに見つかったヘロイン入りの袋には、トランプのハートのエースやスペードのエースの紋様が刻印されていました。これはニューヨークの路上ディーラーが扱うヘロインの有名ブランドだそうです。



 当局によると、3日に行った検死解剖の結果を待たないと死因は特定できないと説明していますが、今のところヘロインの過剰接収の疑いが濃厚なようです。3日の米CBSテレビは、彼の部屋から5種類の異なる処方薬も見つかっていると報じ、ヘロインとこれらの薬物のどれかが複合作用を起こし、ホフマンさんが死に至った可能性が高いと指摘しています。



 ホフマンさんは1967年7月23日、コピー機でおなじみ、ゼロックス社発祥の地で知られるニューヨーク州北西部ロチェスターに生まれました。父親はそのゼロックス社の重役を務め、母親は家裁の判事というお堅い家庭で育ちましたが、その両親は彼が9歳の時に離婚しています。



 実はもともと役者志望ではなく、高校時代はレスリング選手をめざしていたのですが、首のを負傷したためレスリングの道を断念し、俳優の道に。17歳の時、サマースクールで演劇を学び、巨匠マーティン・スコセッシ監督らが学んだことで知られる名門、ニューヨーク大学のティッシュ芸術学部に進み、プロをめざします。



 その甲斐あって1991年、米人気法廷ドラマ「ロー&オーダー」でレイプ犯として法廷に立つ被告役を演じ、プロの俳優としてデビュー。特異かつ、むせかえるような強烈な個性で確固たる存在感を発揮し、名脇役ぶりを発揮した「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」(92年)、米ポルノ業界が題材の青春群像劇「ブギーナイツ」(97年)、鬼才コーエン兄弟が監督した傑作コメディー「ビッグ・リボウスキ」(98年)、カルト的群像大作「マグノリア」(99年)などで確固たる地位を確立します。



 米小説家トルーマン・カポーティが題材の「カポーティ」(2005年)では主人公になり切った熱演でアカデミー賞の主演男優賞を獲得。同時にニューヨークのブロードウェーの舞台に立つなど演劇界での活動でも知られています。



 プロの俳優としてデビューした91年から亡くなるまでに51本の映画(うち「カポーティ」など自叙伝もの3本)と29本のドラマ(うちコメディードラマ21本、アニメドラマ1本)に出演。前述のようにアカデミー賞を1つ受賞したほか、アカデミー賞の助演男優賞候補に3回選ばれました。



 しかしその一方、昔から、さまざまな薬物やアルコールへの依存症で苦しんでいたことでも知られています。



 2006年、米CBSテレビの老舗報道番組「60ミニッツ」に出演した彼は、自身がかつて薬物・アルコール中毒だった過去を明かし「手に入る(薬物などといった)ものなら何でも好きだった。でも大学卒業後の22歳の時、リハビリを受けてこれらを絶った」と述懐しました。



 ところが以降、23年間中毒から脱していたのに、昨年5月、再び依存症が再発し、リハビリ施設に10日間入院したといいます。



 BBCは3日、多くのハリウッド・スターが表した彼への哀悼の意の数々を報じました。



 ロバート・デ・ニーロさんは「彼の死はとても、とても悲しい。彼は素晴らしい俳優だった。こんな出来事は起きるべきではない」とコメント。



 映画「ハンガー・ゲーム2」(2013年)で彼と共演したジェニファー・ローレンスさんは「信じられないほど凄い俳優だった。とても悲しい」と消沈。「ブギーナイツ」や「マグノリア」、「ビッグ・リボウスキ」で共演したジュリアン・ムーアさんは「並外れた才能を持ったフィリップ・シーモア・ホフマンと仕事ができたことは幸運でした。彼の死に深く悲しんでいます」と述べました。



 「スーパー・チューズデー ~正義を売った日~」(12年)で共演したジョージ・クルーニーは「言葉がない。恐ろしいことだ」と嘆き、ケビン・コスナーさんはAP通信に「彼は非常に重要に俳優で、真に偉大な俳優たちの中で自身の地位を確立した」と明言。



 同じく個性派で知られるゲイリー・オールドマンさんも英スカイ・ニュースに「俺の“一緒に働きたいリスト”に載ってた俳優だ」と悲しみ、スティーブ・マーティンさんは12年にブロードウェーで上演された名戯曲「セールスマンの死」での彼の演技を絶賛しました。



 こうした哀悼コメントや欧米での報道の数々を読むと、彼が本当に多くの人から愛されていたことがよく分かりますが、4日付CNN(電子版)はそんな彼が愛された「5つの理由」を説明しています。



 まず1つ目は「われわれのお気に入りの映画のいくつかは彼によって成立している」。CNNは「あなたが人生で最も好きな映画をリストアップすれば、その何本かには彼がいる」と説明しています。確かにそうですね。



 2つ目は「ハリウッドを代表する存在ではなかったこと」。(映画などでの)堂々とした役柄に対し、(私生活では)普通の人で、地域社会で生活するわれわれみんなと同じ存在だったといいます。



 実際、ハリウッドの豪邸に住まず、ニューヨークのアパートに住み、子供たちを公立学校に送り、家の近所をしょっちゅうぶらぶら歩き、パパラッチ対策の野球帽を被って地下鉄に乗る姿がたびたび目撃されていたそうです。



 彼のマンションの近所に住むCNNの記者は「彼の近隣住民はみんな、彼の死を友人の死のように感じている」と話しています。



 3つ目は「舞台俳優として成功をおさめたこと」。米で最も権威のある演劇とミュージカルの年間賞であるトニー賞の候補に2度選ばれているうえ、昨年の業界団体とのインタビューでは「演劇ビジネスはどこにでも存在するので、将来、ニッチ市場になるとは思わない」などと業界の将来を前向きに評価しました。



 4つ目は「どんな役柄でも存在感は大きく、風変わりで邪悪な印象を強く与えた」。偉大な人物を演じる一方、端役でも輝きを見せ、時折、誰にも好かれない癖のある人物を演じました。CNNは「彼はいつ、どのように他の俳優がスポットライトを浴びればよいかを知っていた。彼は俳優の中の俳優だった」と最大級の賛辞を贈っています。



 5つ目は「母親のことを決して忘れなかった」。常に自身の功績を母親の存在と結びつけ、感謝することを忘れなかったといいます。



 そして、こうした賛辞とともに、彼の死を機に、米国で急拡大する“ヘロイン中毒”の実態を多くの人に知らしめ、警鐘を鳴らす動きが出始めています。



 4日付フランス通信(AFP)は、メキシコでのヘロイン生産や密輸の増加に加え、アヘン系の処方鎮痛剤で薬物依存に陥った人たちが低価格のヘロインに手を出す例が増えているとの米麻薬取締局(DEA)の分析を紹介。



 そのため米国ではヘロインの常用が広まっており、過剰摂取による死者数が2006年~10年で45%も増加。メキシコ国境で押収されたヘロインの量も2008~12年で約4倍に増えたといいます。



 実はホフマンさんも、こうした処方鎮痛剤を使用したことを機に、再びヘロインに走り、命を落としたのです…。



 DEAのジョセフ・モーゼス報道官は「ヘロインは死だ。良いヘロインとか、悪いヘロインとか、そんなものは一切ない。不幸にも、そのことを皆が思い知るために、1人の才能ある俳優の命が犠牲となって奪われた」と憤慨しています。



 AFPによると、ニューヨークでは先々週、ブロンクス地区で重さ13キログラム、末端価格にして800万ドル(約8億円)相当のヘロインが当局によって押収されましたが、その中には「NFL」「iPhone」「米国政府機関閉鎖」といった、ふざけたブランド名のコカインがあったそうです。



 ホフマンさんの早過ぎる死は、決して無駄ではなかったようです。(岡田敏一)



 【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部などを経て現在、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当。ロック音楽とハリウッド映画の専門家。京都市在住。



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