GEKIBAND BLOG

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劇団演奏舞台の稽古奮闘記です!

イチョウ並木に、銀杏の絨毯が出来る季節になりました。

以前は、銀杏を集める人も見かけましたが、都心だからか、あまり見かけなくなりました。
銀杏は美味しいのですが、スーパーや飲食店で、量の割に高いなと思ってしまうのは、無造作に道端にあるのを見ているからかもしれません。

聞くと、食べられるようにするまで手間がかかるんだそうです。

ちなみに、イチョウ並木は、風情があって、映画のロケーションにもぴったりだと思います。
見渡す限りの、ぬくもりを帯びた淡い黄色。
こういった風景は、映画館で観ると情緒が際立ち、登場人物の心理描写を際立たせるような気がします。

さて、今回のセリフは「り」です。
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「理由もなく風習にはならないです。」
久野那美 /作 『なにごともなかったかのように再び始まるまで』  映画を映す男 のセリフ
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ミニシアター映画館を舞台にした戯曲で、 2019年初春に演劇ユニット『階』さんで上演された作品。

映写技師が、「映画館が、座席を全部売り切らずに、わざと席を空けておく理由」を語る場面のセリフです。
その「風習」の理由とは?
ここ何十年か映画館の規模を問わず、座席が何となく空いているイメージがあったので、映写技師の語る理由は興味深かったです。

登場人物は7人で、映画の観客と映画館側が、登場します。どう上演するのかと思いきや、どうやらこの劇作家の演劇ユニットでは、本当の映画館で、その特性を利用して上演したようです。
芝居は、こういった事が出来るから面白い、とつくづく感じました。

だからこそ、どんな場所であれ、お客様に一体感を味わって頂くのも役者の仕事だと思いました。

そのためには、役を真実に近づけ、観ている側の想像力を喚起する表現をしなければなりません。

ところで個人的に、映画館のような施設の扉には、赤色が似合うと思います。
これから始まる見知らぬ物語へと いざなわれているようで、胸が高鳴るからです。


今回のテーマ「り」をきっかけに、気づいた事がありました。
 様々な方の戯曲では、「理由」を「りゆう」と読ませる他に、「わけ」と読ませるものが多いということです。
 「訳」の漢字を当てそうなものですが、確信に迫る時のセリフは、「理由」の漢字の方が、しっくり来るからかも知れません。
 戯曲家の想いが、感じられました。

 

 

劇団で上演してきた作品や劇団員の(個人的に)好きな作品の中から
忘れられないセリフを五十音順にご紹介するシリーズ!

今回は「ら」です。
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「羅生門の楼の上へ出る、幅の広い梯子の中段に、一人の男が、猫のように身をちぢめて、息を殺しながら、上の容子を窺っていた。」
芥川龍之介/作 『羅生門』
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言わずとしれた名作、『羅生門』。
中学や高校の教科書などでお読みになった方も多いのではないでしょうか。
演奏舞台でも、朗読劇としてかつて上演したことがあるそうです。

冒頭にあげたのは、下人のことを「一人の男」と客観視し、物語がさらに展開していく場面です。(諸説あります)

猫のように身をちぢめ
息を殺しながら
と、細かい身体の描写がありますが、実際にこれを芝居のなかで表現しようと思うと非常に難しいものです。

猫のように身をちぢめ‥‥、そもそも猫ってどんなふうに身をちぢめていたっけ‥?道行く野良猫を眺めてみると、なるほど確かにうまく身を縮めていますが、あれをどう体現するんでしょう。

息を殺しながら‥‥、もし「バレたら殺される」なんていう状況におちいったら自然とできるのかもしれませんが、意識してやろうと思うとこんなに難しいことはありません。

これらの難しい条件を2つクリアした上で
上の容子を伺う、というかなり難易度の高いシーン。
芥川の思い浮かべていた情景を役者として、きちんと体現するのは物凄くハイレベルなことだろうと思います。

もし次に劇団でこの作品を上演することになっても、私が下人役を演ることはまずないでしょうが‥、
本に書かれている世界観、作者の頭の中にあった情景を、きちんと表現できるような役者になりたいです。

 

鈴木です。
夏の暑さが和らぎ、ゆっくり秋を感じるこの季節が一番好きです。
花粉症も夏の暑さも冬の寒さもない。
芸術の秋、読書の秋、食欲の秋。

最高の時期です。
台風だけが難点ですが。

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「呼ばってたんしえってよォ。」
チェーホフ作/伊賀山昌三翻案 『結婚の申込』 とみえのセリフ
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チェーホフ作の『プロポーズ』を
伊賀山昌三さんが秋田の方言を用いて翻案した戯曲です。

 

とみえの幼馴染の鳶吉が、めずらしく訪ねて来て二人きりで話をしているうち、

きのこ山はどちらの家が所有していたか、どっちの家の馬が立派かということで大喧嘩になってしまいます。

挙句の果てに、気の強いとみえは鳶吉を追い返してしまうのでした。

その後、父の番助から、本当は鳶吉がとみえにプロポーズをしにやってきたということを聞き、

とみえは取り乱します。

先に教えてくれなかった父をなじり、鳶吉を呼び戻してくれと叫ぶセリフです。

何年か前に勉強させていただきましたが、
当時の舞台はとにかく動きが激しく、
踊ったり、叫んだり、死にそうに苦しんだりと、
まさに役者同士のエネルギーのぶつかり合いでした。

先代の久保田の教えで、
「役者はアスリートと同じ。常に鍛えておかなければならない。」
という言葉があります。
他者を演じることは、自分とは違う呼吸や動きをすることであり、
柔軟な身体、声、頭を普段から整えておくことが大切だということです。

役者としてはとても基本的なことですが、
続けていると、つい疎かになってしまいます。
この戯曲のセリフを思い出すたび、
私はふっと自分を見つめ直すことができます。

また、当時の舞台を思い返すと、
動きの段取りや、小道具の処理、身体の動かし方など、同時に考えることが山ほどあり、
しばらく生の舞台から離れている今では、
良くそんなことができたなと空恐ろしくさえ感じます。

お客様の前で演じることができる日が一日も早く来ることを願うばかりです。