使用楽器(ピアノ)の話 ~ショパン国際ピアノコンクール2021より~ | ENSEMBLE ni-ke

使用楽器(ピアノ)の話 ~ショパン国際ピアノコンクール2021より~



※最初にこの記事をアップした後に改めて今回のコンクールの動画をじっくり見たので、その感想などもちょこちょこ追記しました。




今月ポーランドで開催されたショパン国際ピアノコンクールで

51年ぶりに日本人が2位に入賞したと話題になってますね。



最近は家ではめっきりクラシック音楽は聴かなくなってましたが、話題性から何気なくコンクールの動画を視聴。



まずこちらが

2位に入賞した反田恭平さんのファイナルラウンドの動画。

曲目はショパンのピアノ協奏曲第1番です。



かなりの衝撃を受けました。
ものすごい人が出てきたな、と。日本人離れした力強い演奏ですね。
なんでも、ホールで音を響かせるためにウェイトや筋力トレーニングもしていたとか。
話題性だけでなくはっきりとした実力もある方なので、今後も長くご活躍されることと思います。


そしてこちらが

日本ではあまり大々的に報道されていませんが

1位を受賞したカナダのブルース・リウさんのファイナルラウンドの動画。

曲目は反田さんと同じくピアノ協奏曲第1番。



この演奏を聴いた感じたのは、衝撃を通り越して感動でした。
音楽を聴いて感動して涙が出たのも十数年ぶりですが、まさかPC越しの動画を見て感動するとは思ってもみませんでした。

あくまで個人的な感想ではありますが、
同じ曲とは思えないくらいに音や音楽性が協奏曲第1番を弾いた他のファイナリストの方とは違っていました。
是非いつか生で演奏を聴いてみたい方です。


僕は今までのショパン国際ピアノコンクールをしっかり聴いてきたわけではありませんが、今回はコロナウイルスのロックダウンの影響もあって開催年が1年延期されたこともあり、歴代の中でもかなりレベルが高かったと話す審査員の方もいたようです。特にファイナリストの方々の中には既に国際的に活躍している方も多いそうで、中でもブルース・リウさんの演奏は個人的には既にコンクールとかそういったレベルではないと感じました。




さらに今回、自分の中でかなりの話題になっているのが、コンクールファイナリストの方々の「使用楽器」です。


いつからそうなっていたのかはピアノが専門ではない自分には分かりませんが、最近の国際的なピアノコンクールって使用するピアノを自分で選択できるんですね!(勿論コンクールにもよるらしいですが)


ファイナルラウンドで反田さんが弾いていたのは、かの有名な「スタンウェイ」。

アメリカのメーカーで、今でも世界中で愛好されていますね。
ちなみに4位に入賞した日本人の小林愛実さんが使用していたのもこのスタンウェイです。

一般的には華やかな音がすると言われていますが、自分としてもそのような印象を受けます。音の角が丸いけれど華やかで深い音がする、といった感じでしょうか。


そして1位のブルース・リウさんが使用していたのが、イタリアの「ファツィオリ(Fazioli)」というメーカー。


こちらがファツィオリのピアノの画像

ロゴが個性的で目立ちますね!
コンクールの動画でもかなり目立ってました(^_^;)


恥ずかしながら自分は今回初めてこのメーカーの名前を知りました…。クラシックから長らく離れていた弊害ですね(-_-;)
調べたところ、ファツィオリは1981年創業で、他の主要ピアノメーカーと比べるとかなり新しいメーカーのようです。

ブルース・リウさんの他にもファイナルラウンドで使用していた方が結構いたのでそちらも聴いてみましたが、新興メーカーらしく近代的な硬めの音なんだけど繊細さもあるような印象を受けました。特に低音、そして弱音の輪郭がはっきりと聴こえてくる感じで、他のピアノとは明らかに異なる特徴的な音という印象も受けました。まさに新技術、そしてピアノメーカーの新時代といった感じです。

ですのである意味王道と言えるスタンウェイの音とは受ける印象が全く違いました。
近代のメーカーということでいろいろな新しい技術も盛り込まれているようです。個人的には今回のコンクールの演奏を聴いてこのメーカーがかなり好きになりました(*^^*)


このことからも、ピアノ選びというのはコンクール出場者にとってはかなり重要になってくることが分かります。
どんなに技術のある奏者でも、異なる楽器で全く同じ音を出したり同じ演奏をすることは困難というか、ほぼ不可能です。それは鍵盤楽器でも弦楽器でも管楽器でも同様です。


ファイナリストの他の使用楽器としては、反田さんと同率2位だったアレクサンダー・ガジェヴさんが使用していたのは日本のカワイ製ピアノです。派手さはないけどプロに好まれるという印象があります。重厚な音で、熟練の方が弾かないとたちまち重い音だという印象を与えてしまいそうです。


ショパン国際ピアノコンクールでは日本が誇る世界の楽器メーカー、ヤマハのピアノも選択できるようですが、残念ながら今回のファイナリストで使用する方はいなかったようですね(>_<)


ちなみに、少し前まで世界的にスタンウェイと人気を二分していたオーストリアの老舗ピアノメーカー「ベーゼンドルファー」ですが、数年前に倒産してヤマハの子会社になってしまった影響からか、現在はコンクールの使用楽器からは外されているそうです(-_-;)
個人的にはスタンウェイよりも軽やかで、柔らかく古典的な音がするベーゼンドルファーのピアノは大好きだったんですが…残念な限りです(;_;)



こちらのサイトで各ファイナリストのお名前や演奏曲目、使用楽器の一覧が見られます。



こちらでは今回のコンクールで選択できるピアノについての解説が載っています。





普段はクラシックに関心がない方も、楽器の違いという視点からほんの少しでも興味をもっていただけると嬉しいですm(_ _)m




追記

記事の中で触れ忘れましたが、コンクールのファイナルラウンドでは、協奏曲ということでワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団が各ファイナリストの伴奏を務めています。
ていうかワルシャワ・フィルめっちゃくちゃすごい…。これにも感動&感動…(T-T)
ウィーンとかベルリンとか有名どころのオケだけが抜きん出ているわけではないですよね。当たり前だけど…。

また、ファツィオリのピアノを弾くブルース・リウさんの演奏が素晴らしかったので、他のピアノではどうなのかな?と思ってブルースさんの他の動画を検索したところ、スタンウェイでベートーベンのソナタを弾く動画がありました。
早速拝見したところ…この方の演奏はファツィオリだろうがスタンウェイだろうがほぼほぼ関係なくスゴい……(-_-;)右手と左手のバランス感覚や強弱の弾き方のセンスがもともと天才的なんですね、きっと…
もともと凄かったのがファツィオリを弾きこなしたことでさらに進化したという感じなんでしょうね(^-^;)