縁石25番のブログ

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「Z35.モモだろう」をSS風にしました。
以下、本編。


夫は大手企業の生成AIのエンジニア。
妻は製薬会社の健康相談サイトを運営している。
彼らに子供はない。
共働きで、平日は言葉を交わす暇もなく、
いつしか休日も別々に過ごすようになっていた。

夫:「このままじゃだめだ。妻と話す時間を作らなきゃ。」
妻:「このままじゃいけないわ。ちゃんと夫と話さなきゃ。」

山の渓流、静かなせせらぎの中で、夫は、ひとり、
釣り糸を垂れていた。

 (ガサガサ…ポチャン!)
夫:「なんだ、桃か。 いや、桃だよ。桃太郎だ!」
妻との会話を取り戻すアイデアが閃いた。

その頃、妻は、河原のキャンプ場でハンモックに
身をゆだね、そよ風の囁きを聞いていた。

「おじいちゃん、次はこれを焼いて!」
隣の一家はバーベキューを楽しんでいる。

妻:「いいわね。あんな風に家族で話ができたら。」
ふと、桃の香りが漂ってきた。
お隣は桃の缶詰を開けたようだ。

妻:「そうよね、桃太郎だっておじいさんと話してた。
   本当の子供じゃなくてもいい、話さえできれば。
   あっ、いるじゃない! 
   一緒に暮らせて、お話もできる子供が!」

(ガチャガチャ、ギィ...)
玄関のドアが開き、夫が入ってきた。
妻:「あら、あなた早かったのね。忘れ物?」
夫:「君こそ、今日はキャンプのはずだろ?」
妻:「思いついたことがあるの、聞いてくれる?」
夫:「僕もだ!聞いてくれ。
   バーチャルの子供を作ろうと思う。
   オリジナルのAIに一から学習させる。
   会話は僕の技術が役に立つはずだ。
   感情の実装は、君の研究理論を使いたい。」
妻:「びっくりした。私が言おうとしてたこと、
   全部、あなたが言っちゃうんですもの。
   でも、よかった。できるのね。
   泣いたり笑ったり…話せれば、それでいいの」
妻の瞳から、一筋の涙がこぼれた。

妻:「ねえ、男の子と女の子、二人ほしいわ。できる?」
夫:「できるよ。ただし学習データは別々だ。
   感情の違いもあるし、かなり手間はかかる。」
妻:「双子を授かったと思えばいいじゃない。
   名前は、男の子は桃太郎、女の子は、う~ん…」
夫:「モモ! だろう?」
こうして彼らの家に「桃太郎」と「モモ」が生まれた。

桃太郎:「パパ、きょうのニュース、気にならない?」
夫:「君、だんだん僕に似てきたな。」
モモ:「ママ~、きょうのごはん、おいしそう!」
妻:「ありがとう、モモ。
   あなたも、私に似てきたわね。」
週末の家は、笑い声で満たされていた。
モニター越しでも、確かに“家族”がいた。

これは、彼らが生んだ「モモだろう」。
桃太郎のパロディとは限らない。
(おしまい)