今回は、腸腰筋の運動療法についてお伝えします。

腰痛や股関節の痛みに悩む方や、股関節周りの筋肉を柔らかくしても痛みが改善しない方、そして整体師・セラピストの先生に向けてのお話です。

腸腰筋は股関節を安定させる重要な筋肉

腸腰筋は股関節を安定させる重要な筋肉の一つです。

この筋肉の機能をただ柔らかくするだけでなく、出力を高めるアプローチも治療に取り入れるべきだと考えます。

腰痛の患者さんなのに、腸腰筋を意識したことないのはちょっとマズイかもしれませんよ。

 

腸腰筋(腸骨筋・大腰筋)のおさらい

腸腰筋(Iliopsoas muscle)は、下半身の重要な筋肉の一つで、主に股関節の屈曲と体幹の安定化に関与しています。

起始と停止(起止点)
腸腰筋は大腰筋(Psoas major)と腸骨筋(Iliacus)の二つの筋肉から構成されています。

1. 大腰筋(Psoas major)
起始:脊椎の腰椎部分(T12からL5)の側面、椎間板、および隣接する椎体の前面。
停止:小転子(Lesser trochanter)という股骨の突起部分に付着します。

2. 腸骨筋(Iliacus)  

起始:腸骨窩(Iliac fossa)という骨盤の内側のくぼみ部分。
停止:大腰筋と共に小転子に付着します。

これら二つの筋肉は腸骨筋と大腰筋として別々に起始しますが、股関節近くで合流し、共通の腱を形成して小転子に付着します。

神経支配
腸腰筋の神経支配は主に以下のようになっています。
 

大腰筋: 腰神経叢(Lumbar plexus)からの枝、特に腰椎の第2から第4神経根(L2-L4)によって支配されます。
腸骨筋: 腸腰神経(Iliohypogastric nerve)と腸骨下神経(Ilioinguinal nerve)によって支配されます。これらも腰神経叢の一部です。

機能
腸腰筋の主な機能は以下の通りです。

股関節の屈曲: 歩行、走行、階段の昇降など、日常生活の多くの動作に関与します。
体幹の前屈: 腸腰筋は体幹を前方に曲げるのにも役立ちます。
体幹の安定化: 腰椎と骨盤の安定に寄与し、姿勢の維持に重要です。

臨床的重要性
腸腰筋は特に運動選手や物理的な労働を行う人々にとって重要です。腸腰筋の過度の緊張や弱さは、腰痛や股関節の問題を引き起こす可能性があります。ストレッチや強化運動は、これらの筋肉の健康を維持するのに役立ちます。

腸腰筋が弱いと痛みや可動域制限の原因に

腸腰筋は股関節の前面を覆うように位置しています。この筋肉が働くと、股関節を前から後ろに押し込む力が発生します。

特に歩行時には、この筋肉が重要な役割を果たすのはイメージできると思います。

 

股関節が後ろに動くことで、足が前に振り出せます。しかし、腸腰筋が弱いと、股関節の動きが制限され、痛みの原因になり得ます。

腸腰筋の機能バク上げエクササイズ

では、腸腰筋の機能をどのように向上させるか。

簡単な運動をご紹介します。

①まず患者さんに仰向けで、45度の角度で膝を伸ばした状態で足を上げてもらいます。

この運動は、腸腰筋が主に働く60度までの範囲で行うのがポイント。

 

②次に、内くるぶしで手をタッチする動作を行い、その後外くるぶしで同様の動作を行います。これらの運動を反復し、休憩を挟みながら行うことで、腸腰筋の出力が向上します。


セルフエクササイズの場合、足で大きく「バイバイパー」する感じで行ってください。

筋肉の働く角度を理解することは、腸腰筋に限らず、全身の筋肉に応用できる知識です。この知識を持つことで、臨床や治療において新たなアイデアが生まれます。ぜひ、施術やセルフエクササイズにこの運動療法を試してみてください。

 

当然ながら、痛みが強い状態ではおこなわないでください。

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