[ 死 」
死は むかし確かにあった恋のよう
季節のない
降りつづけて止まない 雨のよう
なんの忘れ物か
忘れてしまった 忘れ物を探す音がする
雨の音がする
静謐(せいひつ)が世界の全て で
やかましかった人間も
死者となって はじめて
ほんとうの人間となる
と いうことは
泣いたり 笑ったり 怒ったりの
喜怒哀楽は
人間の業(わざ)であって
死者の遊びに過ぎない
死者の忘れ物は返ってこないのだ
それでも一日は無事に過ぎ
記憶の一列縦隊が挨拶をする
おはようございます と
「時」は いつも残忍で機嫌がいい