煙草の火を消して大事そうに灰皿へ入れ、リュックに戻す仕草があまりに流暢でみとれてしまった。
先を歩く君の後ろを慌てて追いかけ、なるべく平静を装い横に並んだ。
「服、びしょ濡れだけどお店大丈夫かな?」
「そうだな、まずは着替えを調達しますか。あー洋服代は貸しね。」
「私、働いてないから返せないよ。」
「返すのはいつでもいいよ。とにかく急ごう、お腹空いて死にそう。」
新しい服に着替えファミレスで向かい合い君を見ている。運ばれてきた水に手を伸ばす。やはり流れるような美しい所作に引き込まれる。私が見つめているのをわかって演じているような動作だ。
「君は何処からやってきたんだい?」ありふれた質問だなと内心思いながら聞いてみた。
「さあ?私もわからないの」教えないよという感じで私の目をみて意地悪な口調で答える。