無言のまま食べ終えて、ひと息ついた時携帯電話が鳴った。
「仕事戻らないといけないから、ここはこれで支払っておいてくれる?」と無造作に1万円札をテーブルに置き
「行く当てがないなら、しばらくここに居て。仕事終わりに寄ってみるから」
君は黙って私を見つめるだけで、そこから何の感情も読み取ることはできなかった。
もし、これで戻った時に居なければそれまでの事と思い仕事に戻った。

思った以上に仕事がはかどらず時計の日時が日をまたいでいた。
もう、居ないかもしれない。
そう思いながらも居る事に期待している私がいる。

昼に座っていたテーブルに目をやると君は居た。
店員に待ち合わせなのでと一言告げて君の前に静かに座った。
窓の外を眺めていた瞳をゆっくりとこちらに戻し、顔を上げながら笑顔を見せてくれた。
今まで見たこともないような笑顔に、言葉を失った私の隣に滑り込み耳元で
「きてくれたんだね、ありがとう」
とささやく。