リクルートで学んだ10の教え | 忘れたくないこと(ENOLOG)

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【ご報告】

1月末に10年勤めたリクルートを退職しました。

在職中は、本当に多くの方と出逢い、泣き、笑い、
10年前にリクルートに転職したときに
期待していた以上の非常に濃い10年間となりました。

一緒にお仕事をさせていただいた皆様、
本当に、本当にありがとうございました。

退職エントリーを読むのは、個人的に好きだったのですが、
いざ自分が書くとなると何を書くものか非常に悩んでしまいました。

結論、諸先輩方から何を学んだかを書くのが、
僕にとっても総決算になり、諸先輩方への感謝にもなり、
もしかしたら、リクルートにこれから入る人にも、
ほんの少しは参考になるかもしれないということで、

ベタベタですが、
「リクルートで学んだ10の教え」を書きたいと思います。

ちょっと長くなってしまいましたが、
お時間あるときにでも、ご笑覧いただけますと幸いです。

注:筆がすべって、ものすごく、ものすごく長くなりました!
ごめんなさい!ごめんなさい!


1:戦略より戦闘。考えるために行動する

僕がこの10年で経験させていただいたことは、
ほぼ新しい事業をどう立ち上げるかという仕事でした。

そして、うまくいくときと、うまくいかない時で、
一番差が出たのがこれでした。

仮説をつくるのも、業界の勉強するのも楽しいので、
内部で議論ばっかりしてるとわりと失敗して、
数少ない上手くいったことは、
すべて議論を保留してまず行動したことに起因していたなと。

考えることに意味がないっていうより、
事業の立ち上げ時は、情報は基本的に全然足りないから、
情報を集め考えるために、まず行動しろっていう意味だったと思います。

まず売ってこいと。

2:『それは何を公平にする戦いなんだ?』

新しい事業の話をするときに、一番驚いたのは、
事業の筋の良さや、ビジネスの本質を議論するときに、
産業にとって意義の議論を重視することです。

そういう組織風土が、
機会損失させている面も多分にあるかもしれませんが、

(たとえば初期にいくらでも話があったのに、
ソシャゲに入れなかったのはケイパビリティの面では、
痛手だと思います。)

僕はリクルートのそういった風土が好きでした。

行動して、考えた情報を、社会の価値でとらえなおす。

意外なほど青臭いことを、
いい歳したおじさんが話してるのは、嫌いじゃありませんでした。

3:右手にロマン、左手にソロバン、こころにジョーダン

10年前入社する時に読んだ、くらたまなぶさんの言葉ですが、
実際、各所に残っているスタンスだと思います。

『道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である』 二宮尊徳


4:カスタマーの人生を愛す。

世界一の編集長と長く仕事をさせていただき一番学んだことです。

リクルートは一般的に営業=供給側が強く
生活者を見ていないという批判も時々見ますが、
カスタマーマーケティングが秀でて上手い人が
時々いるので、歴史としては、
カスタマーマーケティングも強い会社なのかなと思います。

よく語られる「イタコ化」するくらい
多くのカスタマーに会うのはもちろんなのですが、
本当にすごい人は、「カスタマーの人生を愛してる」んだなと思いました。

インタビューで恋バナまでしてるのははじめてみました。

個人の人生の悩みや逡巡にまで、
深く、深く共感する姿勢は「愛」だと思いました。

5:伝えることは戦いである。

『知ることは力である。伝えることは戦いである。』 フランシスベーコン

リクルートの中には時々
「伝えること」だけをミッションとする仕事がありました。

メディアの経営陣で決めた
事業のビジョンや戦略をどうやって組織の隅々まで伝え、腹落ちさせるか。

『おれの仕事の8割は、キックオフだ』
と断言する経営者もいました。


どうすればチームで泣けるか?


仕事に誇りをもてるか?


事業の社会的な価値を
常に伝えるコミュニケーションに投資すること。


「リクナビは、おれが創ったというやつは五十人以上いる」

これは、僕がもともといた広告業界では
「アレオレ詐欺」と揶揄される現象ですが、

リクルートでは、その事業の勲章でした。

それだけ、多くの人が自分ごととして仕事してきた証拠であると。


全て広告で出来ている在りし日の
『情報誌』というビジネスモデルのすごさは、

「自分がこのクライアントから受注したから、
あの情報を読者に届けることができた」と

営業が、クライアントが
メディアを一緒に創っている構造にこそあります。

クライアントが
『読者のために8P出稿します!』
というメディアの構造の妙。

(マス広告が出自の僕はかなりびっくりしました。
そしてもちろん今、この構造はつくることはかなり難しいですが。)


6:量が質を創る

これは色んなシーンで実感しました。

身近なところでいえば、
1万時間の法則のような
個人のスキルとしての仕事量が、結局、質をつくると。

リクルートの中の人は、
仕事の報酬は仕事ということに実感がある人が多いのではないでしょうか?

20代の時にかけた労働時間は決して裏切らない。
(今はこんなことを言うと怒られるのかな。)

事業でも、

かなり無理やりでも、
まずは量をおさえることを優先するシーンがかなり多くて、
個人的には、品質にこだわるべきと思ったことも多かったのですが、
これは、だいたい僕の考え方が間違っていたように思います。

ビジネスの種類によるのだと思いますが、
リクルートがやっている領域は、
多くは突き詰めると「シェア」のビジネスであり、
No1にならないと死ぬということを経験的に知っているからだと思います。

量が物事を動かし、質すら伴っていく(こともある)というのは、
リクルート経験前には考えもしなかった学びでした。

(ただ、「質をあげにいくフェーズ」は
意思決定が難しくなるので、ここは落とし穴だと学びました。)


7:変化は常に正しい

世の中で起こることは、それ自体が正しいので、
それは120%受け入れて、先に進むかしかない。

ほぼ↓で語られてましたね。

世界は落下している


8:フィードバック!フィードバック!フィードバック!

組織風土の一番の要は何かなって考えると、
徹底的なフィードバック文化にあると思いました。

すごく些細な物事を決めるときでもアンケートをとる。
360度評価とかそういう組織的なものもありますが、
非公式の飲み会でも、あらゆる場所で、
年間に何度も、濃く、「おまえはここがダメ。ここがイイ。」と語られる。

やめる直前、最初の10年の江副さんの文章を
いっぱい読ませていただく機会がありましたが、

実は創業事業の『企業への招待』の1回目の納品時点から、
アンケートをとっていて、
専門家に設問設計まで依頼しているというこだわっていました。

とにかくアンケートが多い会社だと思います。

そういえば、退職挨拶メールで、
自分の仕事ぶりのアンケートをつけてきた人もいましたww


9:見えないバトンを勝手に受け取る

5があるからでしょうか。

リクルートはすごく社内の歴史を
解説した情報が充実しています。

僕はそういった類の本が好きでかなり読みました。

自社のサービスの歴史好きな人多いように思います。

やっぱり歴史を知ると、事業のこと、会社のこと好きになります。

(そういえば、失敗の歴史はあんまり残っていないですね。)

10:自ら機会を創り、機会によって自らを変えよ


あまりにも有名な言葉ですが、前提としてあるのは、
常に成長し続ける、変化し続けるという意志、というか価値観です。

入社した時は、
積極的に変化して、成長し続けたいという価値観を
僕が持つとは思っていませんでした。

振り返ると、良くも悪くも、
すべての異動を自分で決めてこれたことは、
幸運だったと思います。

(正確には一度だけ尊敬する
先輩に決めていただいた異動がありました。
そこで大きく成長できたと思っていますが、
まさに、自ら立候補すべき異動でした。)

変化し続けるために、自ら機会を創らなければいけない

という価値観を持てたことが、この10年で一番の学びだと思っています。


かなり長くなってしまいました!
ここまで読んでくださった方ありがとうございます。

この10年間お仕事ご一緒させていただいた皆様、
本当に、本当にありがとうございました!!

本当に充実した10年でした。



で何するの??


さて、榎本ですが起業します!

起業すべきでない理由は、
本当にいっぱいあげることができて、

(そもそも35歳で、0歳の赤ちゃんがいるまともな大人の選択ではない)

かなり逡巡していましたが、

『諦める理由を探しているうちは、諦めるのは卑怯でないか(『宮本から君へ』)』

というのと、何より、

『幸運にも、挑戦できる環境にいるのに、挑戦しない人生でいいのか』、

ということで、

不確かな未来へ舵を切ることにしました。

この挑戦を快く応援してくれた妻には本当に感謝しています!


さて、事業のテーマは、

「消費者ジャーナリズムで産業構造を変える!」

です。

詳しくはまたご報告させてください!!
(このテーマにピンとくる方いればぜひ飲みましょう!)

35歳で0歳の赤ちゃんがいて、
売上もユーザーもゼロからの挑戦ということで、
かなりドキドキしていますが、頑張ります!!!

今後とも、ご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願いします。

榎本純