以下記事転載
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http://mainichi.jp/senkyo/articles/20160410/ddm/003/010/113000c

クローズアップ2016
衆院補選、12日告示 解散占う重い2議席 与党「ドミノ倒し」警戒

毎日新聞2016年4月10日 東京朝刊

 夏の参院選の前哨戦となる衆院のダブル補選が12日、告示される。京都3区で「不戦敗」を選んだ与党は北海道5区の勝利に全力を挙げる。新党結成後、初の国政選挙に臨む民進党は、連勝で党勢の低迷に歯止めをかけようと躍起だ。選挙結果は衆参同日選を視野に入れる安倍晋三首相の解散戦略とも関わるだけに、小選挙区「295分の2」の政治的意味は重い。24日に投開票される。

 今月上旬、衆院北海道5区補選に関する報道機関の情勢調査が永田町で話題になった。データは、自民党公認の和田義明氏が初めて池田真紀氏に追い越されたことを示していた。「サンプルの採り方が偏っていたようだ」(自民党関係者)という否定情報も流れ、与党が神経質になっていることをうかがわせた。



 北海道5区補選は町村信孝前衆院議長の死去に伴うもの。和田氏は町村氏の娘婿で、当初「弔い合戦」は有利とみられていた。ところが、閣僚や自民党議員の不祥事、失言などが相次ぎ、風向きは変わりつつある。同党幹部は「安倍政権のおごりと緩みに対する批判が強い」と語り、谷垣禎一幹事長も7日の記者会見で「一進一退。気を抜けない状況が続いている」と強調した。

 衆院で291議席(大島理森議長を含む)を持つ自民党にとって、仮に補選で敗れても国会運営上の支障は生じない。しかし、過去には補選がしばしば重要な意味を持ってきた。2008年4月の衆院山口2区補選では、評判の悪かった後期高齢者医療制度が争点になり、自民党候補が民主党候補に敗北。政権は失速し、福田康夫首相(当時)は同年9月に退陣した。

 しかも、今回は衆院の解散時期を巡る首相の判断とも絡む。北海道5区で勝てば首相は引き続きフリーハンドを維持できるが、負けた場合は複雑だ。「同日選見送り」が順当な見方だが、参院自民党幹部が「5区で負けたら、参院選の『1人区』(改選数1)もドミノ倒しのように負ける」と語るように、参院側を中心に、与党に有利とされる同日選待望論が広がる可能性がある。

 首相は昨年末、地域政党「新党大地」の鈴木宗男代表に北海道5区への支援を要請した。野党を分断して勝利し、参院選で野党が結集しにくくする狙いだったが、和田氏陣営には、長く民主党と選挙協力してきた大地へのわだかまりが残る。ある閣僚経験者は8日、「大地との連携効果はプラスマイナスゼロだ」と漏らした。

 「本当に厳しい。どちらが勝ってもおかしくない」。新篠津村で9日に行われた事務所開きで、和田氏は約50人の支持者に訴えた。自民党は選挙区内の企業、団体の引き締めに乗り出した。首相は告示後に選挙区に入る予定だ。

 一方、池田氏は9日、江別市などで民進党の長妻昭代表代行とともに街頭演説し、「国民の一人一人を大切にする政治にしたい。1人の福祉が平和につながる」と訴えた。「保育園落ちた」の匿名ブログをきっかけに子育てや介護の問題に関心が高まっており、陣営幹部は「福祉政策の充実という主張が共感を得られている」と手応えを語る。

 野党にとって補選は、参院選での選挙協力の試金石になる。民進、共産、社民、生活4党の幹事長・書記局長は7日、東京都内で会談し、合同で補選の対策会議を開くことを決めた。

 ただ、党内に保守系議員を抱える民進党には、共産党と接近し過ぎることへの警戒感がある。安全保障関連法の廃止では足並みをそろえたものの、基本政策の隔たりは大きい。岡田克也代表は告示日には現地入りせず、選挙期間中も、他党党首と一緒の街頭演説はしない方針だ。

 北海道5区の千歳、恵庭両市には自衛隊の基地や駐屯地があり、野党4党の主張がどこまで浸透するかが焦点の一つ。池田氏は10日、千歳市で、安保法制に反対する学生たちの団体「SEALDs(シールズ)」の中心メンバー、奥田愛基(あき)さんらと集会を開き、関連法の問題点を訴えて支持を広げようとしている。【高橋恵子、酒井祥宏】

本選にらみ民共不和も
 民進党の岡田克也代表は9日、京都府長岡京市の会合で「7月に衆参ダブル選挙があるかもしれない。そこにつなげていく大事な選挙だ」と泉健太氏への支援を訴えた。自主投票の方針を決めた共産党議員の姿はその場にはなかった。

 共産党は京都3区で候補者擁立を見送った。しかし、民進、共産両党は京都で長年、激しい選挙戦を繰り広げてきた経緯があり、「共闘」のハードルは高い。民主党(当時)京都府連は3月、「共産とは一線を画す」「いずれの選挙でも共闘はしない」という活動方針を採択した。

 これに対し、共産党は補選の告示が迫った5日、党府委員会が急きょ記者会見し、次期衆院選で府内の全6小選挙区に候補者を立てると発表した。「衆院選での積極擁立」という党本部の方針を踏まえた対応で、民進党をけん制する意図は明らかだ。

 参院選での選挙協力を衆院選にも広げるかどうかを巡って、民共両党は中央で駆け引きを続けている。有権者に政権選択を問う衆院選で両党が手を組む難しさが、京都3区補選で早くも証明された形だ。

 民進党同様、初の国政選挙に挑むおおさか維新の会は、党職員だった森夏枝氏を立て、地盤の大阪以外への党勢拡大を図る。候補者を擁立しない自民党に代わって「民共」批判を展開。安倍晋三首相が憲法改正を実現するためおおさかとの連携に前向きなこともあって、同党幹部は補選で首相官邸からの支援にひそかに期待する。日本のこころを大切にする党は小野由紀子氏を擁立し、「自民党が候補を出さない中、安心して支持してほしい」(中野正志幹事長)と与党支持層の取り込みを狙う。

 宮崎謙介氏の女性問題による衆院議員辞職が補選を招いただけに、自民党は今回、逆風が収まるのを待つ構えだ。党府連は「衆参同日選の観測が強まっている。本選挙で候補を出せばいい」(幹部)とみて、京都3区内の地方議員らに4日、「他党の候補を応援しないように」と文書で指示した。【朝日弘行、野口由紀】


予想される顔ぶれ
 ◆北海道5区

和田義明 44 自新=[公][こ]

池田真紀 43 無新=[民][共][生][社]

 ◆京都3区(京都市伏見区、向日市、長岡京市など)

泉健太 41 民現=[社]

森夏枝 34 維新

小野由紀子 37 こ新=[改]

大八木光子 31 諸新

郡昭浩 55 無新

田淵正文 57 無新

 ※毎日新聞調べ(敬称略)。衆院の勢力順。同じ場合は氏名の50音順

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