夫氏が初めて筆者の自宅を訪れた日。
例によって例の如く、ある審査が筆者を待ち受けていた。
そう、お料理審査である。
暇な学生の頃は、友達を家に招いたり、持ち寄りパーティーをしたりと第三者に自作の料理を提供することもあったが、当時はもっぱら自分のためだけの料理。
さて、第三者のお口に合うものかどうか。
彼女から妻への昇格をかけた大勝負。
失敗は許されない。
失敗の許されない戦いの武器として筆者が選択したのは、アクアパッツァもどき。
サーモンの切身とあさりで作る母直伝超簡単料理である。
あとはサラダだったか、簡単な前菜を用意して出陣した。
アクアパッツァの残ったスープは、ご飯とパルミジャーノでリゾット風おじやで締める。
結果。
夫氏の反応は上々。
それどころか、甚く感動している様子。
感動するような大作は出していない。
過大評価ではないか?
夫氏「すごいね。こんなに女子力高いと思ってなかったよ!」
筆者「実は簡単なお料理なんだよー。でも、そんなに美味しそうに食べてくれるとうれしいよ。」
夫氏「部屋もきれいにしてるし!」
筆者「そうかな?ちょっと片付けたけど笑。」
夫氏「そこら辺に服が脱ぎ捨てられた部屋でコンビニ飯食べてても驚かないけど、違ったんだね!!」
ん?
はい??
筆者「・・・そんなにだらしなくてガサツに見えてた?」
夫氏「だって、東大院卒で理系専門職だよ?そんな、泣く子も黙る経歴で、女子力高いとは誰も思わないよ。外できちんとしてるからこそ、家ではガサツなのかなと想像してた笑。」
筆者は女子力が高いわけではない。
生活するに最低限必要な家事力と、多少の健康への関心があるだけ。
しかし、これが過大に評価された。
夫氏の筆者に対する期待値がとても低かったために。
われわれは期待値に届かない実現値を過剰に低く、期待値を上回る実現値を過剰に高く評価する傾向がある。
筆者は、経歴によって女子力もとい家事力の期待値を大幅に下げることによって、その期待値をプラス方向に裏切った。
図らずも、ギャップを自ら演出したのだ。
喜べばいいのか、悲しめばいいのか。
お料理審査を通過したことを思えば、喜ぶべきことかもしれない。
しかし、トウダイリケジョのイメージの悪さを嘆かずにはいられなかった。