交際前の夫氏は、とても淡泊であった。
食事をして当たり障りのない話をするだけ。
だからこそ、筆者は交際を申し込まれるその瞬間まで、飯友止まりだと思っていた。



ところが、交際開始の号とともに、一転したのだ。

夫氏の態度が。
いや、キャラクターが。

好意を全面に表出させるようになった。



ん?どうした?
「月が綺麗ですね」の奥ゆかしさ、どこ置いてきちゃった?



夫氏の豹変ぶりに、筆者は戸惑った。

心理的にも物理的にも急激に距離を縮められている。
そもそもドライな上に、彼氏という存在が久々の筆者。
距離感がつかめない。



三歩近づかれては、二歩下がる。



戸惑いこそあったものの、一緒に過ごす時間は心地が良かった。
基本的に週末は一緒に過ごし、タイミングが合えば平日に食事をすることもあった。

特定の人とこんなにずっと一緒にいることができるのか。

筆者は、男女問わず他人と一緒にいることが、面倒くさくなってしまう性分。
夫氏と会うことが面倒にならないのは、我ながら意外であった。



付き合い初めてまだ間もない三連休のこと。

二日にわたってお会いした、二日目の帰り道。
『明日は一人だな。何して過ごそう。作り置きかな。』などとぼんやり考える。

すると、夫氏から“明日”の提案。
“明日”とは明日のことか。
明日は一人で過ごす日ではないのか。



筆者「え!?さすがに三連休全部ってやりすぎじゃない?」

夫氏「なんで?いいじゃん。せっかく三連休なんだから。」

筆者「そんなにずっと一緒に居たら飽きちゃうよ。」

夫氏「俺は飽きないよー。」

筆者「ほら、わたしクセ強いじゃない?三日連続だと過剰摂取で胸やけしちゃうと思うの!」

夫氏「なにそれ笑」



筆者は本気でそう思っていたが、夫氏は全く意に介していないようだった。

こうして、距離感も頻度も夫氏主導で縮められ、関係性が構築されていくのであった。