筆者と夫は、婚活アプリを介して知り合った。
当時の夫のプロフィールは、情報量が少なく、写真は不鮮明。
期待はせずに、会うだけ会ってみるか。
そんな軽い気持ちで臨んだ出会いだった。
今日のように暑い休日の夕方。
待ち合わせは和光前。
少し早く着いた筆者は、三越でメイクを直していた。
夫氏から到着している旨の連絡を受け、筆者は小走りに横断歩道を渡った。
例の如く、はじめましてのご挨拶をする。
夫氏「はじめまして。」
筆者「はじめまして。暑い中お待たせしてすみません💦」
はて。
なんだか見覚えのある方である。
どこかでお会いしたことがあるだろうか。
そんな既視感を覚えた。
とはいえ、東大によくいる雰囲気。
無意識に誰かと重ねたのだろう。
初めて会う夫氏は、涼しげな白シャツにチノパン、TOMSのスリッポンという出で立ちだった。
銀座にはラフ過ぎる気もするが、暑い日にはぴったりの力の抜けたカジュアル。
自分自身もTOMSが欲しかった頃。
足元にばかり目がいってしまったことを覚えている。
その日は、おしゃれ中華をいただきつつおしゃべりに興じた。
海外旅行から帰国したばかりの夫氏の土産話を軸に、旅行の話が主だったと思う。
すっごく盛り上がった!というわけではない。
ただ穏やかな時間を過ごした。
大好きな小籠包を頬張る筆者を、楽しそうに眺めていた夫氏が印象的だった。
会話の中で、お互いの住まいが近いことが発覚。
自宅近くに場所を移してコーヒーでも、という提案に、筆者は応じた。
ところが、夫氏の案内で向かった先に、コーヒー店はない。
夫氏「あれ?おかしいな。コーヒー屋さんがあったはずなんだけど。」
仕方なく一杯だけお酒を飲むことにした。
アルコール耐性の低い夫氏は、この頃すでにほぼ機能停止状態。
夫氏からの発話はほとんどなく、筆者の話を聞いているのか聞いていないのかもわからない。
そこに座っているのがやっとに見えた。
(改めて考えると、そんな夜遅くにコーヒー店が開いているはずもない。そもそも提案時点で判断力が低下していた可能性が高い。)
それまでの筆者であれば、
二軒目誘ったのあなたですよね?
ありえないんですけど。
と切り捨てていただろう。
だが、この時は何故だか、眠気と戦いながら、必死にハイスツールに座っている夫氏が、微笑ましく映った。
筆者「お酒強くないのに無理しちゃいましたね。早く帰って休みましょう!続きはまた今度!」
そうして、はじめてのデートは幕を閉じたのであった。
しかし、我々が会ったのは、これが初めてではなかった。
筆者の覚えた既視感。
それは、気のせいなんかではなかったのだ。
交際から半年を経て、その事実が明らかになる。