日曜の夕方、W氏からお茶の誘い。
先日は「彼女と毎週会うとかめんどくさい」と話していた。
何か不自然に感じつつも、休日出勤の憂さ晴らしがてら新宿に向かった。
ホテルの1Fのカフェ。
筆者の方が先に着いたため、席についてW氏を待つ。
隣でも、あまり親しくなさそうな男女が、探り探りの会話をしている。
筆者と同じく婚活サイトで知り合ったのか、などとぼんやり考える。
すると、W氏が後ろから筆者の肩を叩いた。
と思うや否や「おー!何してんの?」と隣の席の男性と挨拶する。
偶然にも友達とのこと。
気まずい。
互いにそれほど親しくない女性とツーショット。
しかし、二人に気まずい様子は全くない。
そんなものか。
筆者も気を取り直し、おしゃべりに興じる。
とりとめもない日常のおしゃべり。
婚活サイトの面接においては、どうしても相互のニーズを探るような会話になる。
このようなおしゃべりは新鮮にすら感じた。
仕事の話題になった。
筆者「仕事最近忙しい?」
W氏「まぁまぁかな。他にもやってるしね。」
筆者「他って?」
W氏「うーん、日用品のプロモーションみたいなの。副収入のためにね。」
何か不穏なものを感じ、追及してみた。
筆者「ふーん、全然想像つかないなぁ。」
W氏「うんとね、ア○ウェイってやつ。市販されてない日用品をウェブ上で宣伝したり、プロモーションの手伝いするんだよ。知ってる?」
知ってるもなにも、かの有名なマルチ商法ではないか。
W氏は副収入を得るためにやっているという。
同世代の友達も増えておもしろいと。
さっき隣にいた友達もア○ウェイで知り合ったのだ、と。
W氏「今度説明してあげるよ、どんな仕組みか。でも、今度ね。」
筆者はすべてを理解した。
W氏は筆者をマルチ商法に勧誘するために近づいたのだ。
そして、先ほど隣にいたW氏の友人も同様だろう。
女性二人、すなわちカモが2匹並んだ状態。
なんと滑稽な光景だろうか。
二人が偶然の遭遇にも驚かなかったのは、おそらくその場所が勧誘の場として定着しているから。
W氏のトークが軽妙なのは、勧誘で鍛錬しているから。
初回面接が餃子だったのは、勧誘にコストをかけないため。
彼女と週1回会うのも面倒な人間が1週間とあけずに連絡してきたのは、勧誘を円滑に進めるため。
友達を含めた4人で会うことを提案したのは、仲間にカモを差し出すため。
不自然に感じていた一つ一つの事象が一つにつながり、腑に落ちた瞬間だった。
ア○ウェイの名が出てから、筆者の表情は強ばったままだったはずである。
それに気づいてか、気づかずか、解散の流れになった。
席を立つ直前、W氏はア○ウェイ商品と思しきサプリを飲んでいた。
別れ際。
W氏「次、いつにする?」
筆者「うーん、来週は出張あったりして忙しいんだよね。」
W氏「いつ帰ってくるの?金曜日は?」
筆者「飲み会あるかも。」
W氏「土曜日は?」
筆者「なんか予定合った気がする。」
なかなかくじけない。
適当に断るつもりで、仮の約束をして別れた。
勧誘。
婚活サイトのリスクの一つである。
そんなものを筆者が引くはずはないと、高をくくっていた。
今回の失態は、筆者の危機意識が低かったことに起因するかもしれない。
しかし、見抜くのが難しいというのもまた事実である。
皆さまもお気を付け下さい。
それにしても、筆者をカモにするとは大した度胸だ。
即刻、通報。
W氏はペアーズを強制退会させられていた。